fpdの映画スクラップ貼

「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「ガタカ」(原題:GATTACA、1997)を見る。異色のSFサスペンス。

f:id:fpd:20210811215448j:plain

ガタカ」(原題:GATTACA、1997)を見る。遺伝子至上主義の近未来が舞台で「欠陥品」の烙印を押されながらも、宇宙飛行士になる夢に向かって努力し続ける青年の姿を追ったSFドラマ。

SFとはいえほかのSF映画とはかなり異なる趣がある。夢をかなえるために手を組んだ相棒との切ない友情、命がけの「身分詐称」を描くサスペンス、エリートを宿命づけられた弟との確執、本当の自分を隠した女性との恋愛などを描く。出演は20代後半のイーサン・ホークユマ・サーマンジュード・ロウとベテラン俳優のアーネスト・ボーグナインアラン・アーキンなど。

f:id:fpd:20210811215611j:plain

・・・

映画の冒頭で「神が曲げたものを誰が直し得よう?」(伝道の書)「自然は人間の挑戦を望んでいる」(ウィラード・ゲイリン)という2つの言葉が浮かび上がる。

その後、ビンセント(イーサン・ホーク)が身体中の毛を丁寧にそり、垢を落とし、それらを焼却処分する姿が描かれる。ビンセントは続いて尿が入ったパックを身体に装着し、指紋を付け替え、血液を忍ばせ、勤務先へと向かう。

出生数秒後に推定寿命が判明し、DNA操作で生まれた「適正者」が優遇される近未来が宇宙局「カダカ」の世界。

自然出産で生まれた主人公ビンセントは息をした瞬間から「不適正者」と診断され、ビンセントの人生はマイナス状態からスタートを切ることになる。しかし、この「マイナス」が「ゼロ」や「プラス」に変わることはない。

ノートPCでの作業を終えたビンセントは、キーボードの隙間をエアダスターで丁寧に掃除して自分の痕跡を消し去り、代わりに適正者であり協力者のジェロームジュード・ロウ)の毛の破片を散らす。

尿検査もすり抜け、あと1週間に迫った念願の土星ミッションを想い、空を見上げる。これが彼の「ジェロームとして」の日常だ。

f:id:fpd:20210811215531j:plain

・・・

産まれる前の遺伝子操作を行うことにより優秀な人間「適正者」が造れる近未来。この世界では遺伝子操作を受けていない「神の子」は勉強、スポーツ、ビジネスあらゆる面で、適正者より劣ると判断され、就職などで差別を受けていた。

「神の子」であるビンセントは、宇宙飛行士の夢を叶えるために「適正者」に成りすまし、宇宙局ガタカに就職する。宇宙局で働く中で、偽者とバレないように必死に努力し、宇宙に旅立つことを目指すのだが・・・。

・・・

ガタカの世界では「適正者」のみが活動できる世界。ここでは人間は生まれたときに、寿命・将来かかる病気についてまで遺伝子分析により解析される。
そこで、遺伝子検査をし、劣勢遺伝子を排除して「適正者」の赤ちゃんを人工的に生み出す方法が一般化していた。  

主人公ビンセント・フリーマンは「不適正者」。寿命は30年と言われていた。彼の幼いころからの夢は宇宙飛行士となって宇宙に行くことである。
しかし、不適正者にはそのチャンスは皆無だったが、ある日、ビンセントは、適正者のサンプルを用いて就職時の検査をごまかして、適正者として働く道があることを知り、ブローカーに接触する。
赴いた先には車いすの青年ジェローム・ユージーン・モローがいた。彼は世界トップクラスの水泳選手でありながら自殺未遂により下半身不随になってしまったのだ。そこで、自分のサンプルを提供するかわりに、自分の生活を保障してほしいというのだった。

f:id:fpd:20210811215904j:plain

・・・

ヴィンセントは不適正者で、心臓が弱く、寿命は30年。
彼には弟との水泳競争も、宇宙飛行士への夢も、挑戦する前にあきらめる要素がたくさんあった。心臓の弱さがあり、適正者と同じ運動やトレーニングをしたら心臓は持たないかもしれない。
無理をして不適正者が死んだとしても、社会は冷たい反応をするっだけ。不適正者のくせに、無理なことをするからだ、なんて愚かなやつだといった具合。
一方、ジェロームも下半身不随となった今では、不適正者のビンセントと同じ立場にある。もはや「適正者」としての仕事に就くことはかなわないどころか、車いすが手放せない不自由な生活を送っている。

ジェロームは、自分の人生を失敗したものと感じていたが、ビンセントなら自分に代わって人生をやり直してくれるかもしれないと確信するようになっていた。
ビンセントが宇宙飛行士として飛びたち、ジェロームの死体が残っていてはビンセントの正体がバレると考え、自身の死体が残らないよう焼却炉に入って、焼身自殺をしたのだった。切ないラストシーンだった。

全体の画面の色調が、海の水面なども含めて緑っぽい。車椅子姿のジェロームヒッチコック監督の「裏窓」を彷彿とさせる。

ビンセントは、両親や弟からも、小さい時から「お前には無理だ」と言われ続けてきた。

小学校を追い出され、大人になってからもあらゆる面接で落とされ、清掃員としてしか憧れの職場に足を踏み入れられなかった。もはや「差別は科学の領域」だ。それでも、夢があるから耐えられる、生きてゆけると、ジェロームとして生きていく姿が胸を打つ。

ビンセントの正体がばれそうになるところなどはサスペンスタッチでハラハラさせられた。本物のジェロームの住居に確認しに行くシーンでは、ジェローム(本人)が車椅子から降りて、階段を這いながら2階に登っていくシーンなどはスリリングだ。

f:id:fpd:20210811215926j:plain