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映画「山椒大夫」(1954)を見る。森鴎外原作、溝口健二監督の代表作の1本。

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山椒大夫」(1954)を見る。言わずと知れた森鴎外原作で、溝口健二監督の代表作の1本。ベネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞。

平安時代末、人買いに騙され母と引き離されてしまった安寿(あんじゅ)と厨子王(ずしおう)丸の兄妹が、山椒大夫(さんしょうだゆう)の下で奴隷として働かされる姿を描いた重厚な感動作。

ジャン=リュック・ゴダール監督が「気狂いピエロ」でラストシーンを引用するなど多くの映画監督に影響を与えた作品。

 

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【ストーリー】
人攫いの罠にかかり、母親と離れ離れとなった厨子王と安寿の兄妹は、豪族・山椒大夫の許に売られて奴隷となる。
それから十年、二人は依然として奴隷の境遇だったが、ある日、新しく買われた奴隷が口ずさむ唄に、自分たちの名前が呼ばれているのを耳にする。
由来を尋ねると、子供を攫われた自分たちの母親の呼び声であることがわかり、二人は遂に脱走を決意するのだった。

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安寿と厨子王”の悲劇の話は、誰でも一度や二度は聞いたことがある話。

溝口健二監督が、レギュラー・スタッフといっていい撮影・宮川一夫、音楽・早坂文雄のほか、建築考証に日本古建築専攻の藤原義一、衣裳考証に「西鶴一代女」その他に協力した上野芳生が加わり、モノクロで深みのある映像を作り上げている。

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出演は、さらわれて行く母親に田中絹代、その息子・厨子王丸に花柳喜章娘・安寿に香川京子、「荘園」の主であリ右大臣の”山椒大夫”に進藤英太郎が扮している。ほかに「にごりえ」の三津田健、「にっぽん製」の菅井一郎、「心臓破りの丘」の清水将夫などが出演。

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高貴な身分の安寿と厨子王が、人さらいの罠にかかり、小さな舟に乗せられて、親と離れ離れになり、奴隷のように働かされる。二人を買って、右大臣所有の「荘園」で働かせていた役人の名前が、題名の「山椒大夫」。

平安時代から伝わる伝承がベース。高貴な身分の者が「奴隷」にさせられてしまい、そこから逃げ出して、地位が高くなった厨子王が、奴隷制度を廃止する。しかし「荘園」だけは、国が公認した私有地で、国司というその地域を司る役人でさえも、その経営に口出しできなかったとされている。

映画では、山椒大夫が、金で労働者を手に入れ、酷使していても、まわりの役人も手出しできなかったという設定となっている。

父と安寿は亡くなってしまい、さらわれた後、遊女になり、視力を失った母と厨子王が再会するシーンは大きな見せ場となって感動を呼ぶ。

「残菊物語」「雨月物語」「赤線地帯」などとに並ぶ溝口健二の最高傑作の一つだ。

【スタッフ】
監督:溝口健二
原作:森鴎外
脚本:八尋不二、依田義賢
撮影:宮川一夫

配給: 大映

124分、モノクロ

 

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