「何という行き方!」(原題:What a Way to Go!,1964)を見た。
グウェン・デイヴィスの「いつも上天気」が原作。J・リー・トンプソン(「後の「ナバロンの要塞」など)の演出によるブラックが効いたロマンチック・コメディ。シャーリーマクレーンが30歳の絶頂期の作品。スタイル抜群、お色気たっぷりの”新妻”(5回結婚する)を演じる。
音楽はネルソン・リドル。出演は「あなただけ今晩は」のシャーリー・マクレーン、「ハッド」のポール・ニューマン、「帰らざる河」のロバート・ミッチャム、「テキサスの四人」のディーン・マーティン、「雨に唄えば」のジーン・ケリー、「青い眼の蝶々さん」のボブ・カミングス、「バイ・バイ・バーディ」のディック・ヴァン・ダイクなど。
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ピンク一色の豪邸.周りの壁もピンクだらけ。階段から執事とみられる数人の男たちが、ピンクの縁どりをした棺を広間に運んでくる。すると棺が回りだす。”何という始まり方!”。
税務署の窓口を訪れるルイザは、税金を徴収する係の担当者に寄付を申し出る。担当者が、日付を確認すると「4月1日」で、エイプリルフールの冗談だろうと追い返そうとする。寄付をしたいという小切手に書かれていた数字は、2億1,100万ドル(当時の換算で760億円)であり、小切手が本物であることが分かり、担当者は卒倒してしまう。
ルイザは勧められて精神科医と会う。そして、物語は始まる。
ルイザは「お金は悪魔」というのを叩き込まれてきたので、お金に縛られない生活を望んでいた。夫婦水入らずの簡素な結婚生活が理想とし、物ぐさで仙人のようなエドガー(ディック・V・ダイク)と結婚した。
ある日、ルイザの母のお気に入りだった大金持レナード(ディーン・マーティン)が夫婦を訪ねた。レナードの冗談から、大いに刺激されたエドガーが馬車馬のように働きはじめ、果ては大金持ちになった。商売仇のレナードは破産、エドガーは金の奴隷になり果て、心臓麻痺で死んでしまった。
レナードはプレイボーイで、ルイザに近づいてきた。自分を追いかけてこない唯一の女性だったからだという。ルイザは、レナードの周りには多くの女の影がちらつく光景を想像し断る。すると、レナードの髪はショックから真っ白になってしまう。
エドガーの残した莫大な遺産を手に、ルイザはパリに行った。そこでタクシーの運転手をしている貧乏画家のラリー(ポール・ニューマン)と知りあい、やがて結婚。ラリーは、現代アートの表現には機械が必要ということで、慈愛に動くアームがついた複数のロボット機械で大きな壁に絵を描いていた。レコードで音楽(「メンデルスゾーンの曲」や「運命」)をかけると、ロボットのアームが曲に合わせて絵を描いていくのだ。ところが彼も傑作を生みはじめた矢先、またもや莫大な遺産をルイザに残して死んでしまった。
再び未亡人になったルイザは、帰国することにしたが、最終便の飛行機に乗り遅れてしまう。それを知ったロッド(ロバート・ミッチャム)という男の自家用豪華飛行機に同乗した。なんとロッドが操縦し、ルイザは助手席に座った。そして、今度はロッドと結婚した。
今度は幸わせだった。そしてルイザのいう簡素な生活のため牧場経営にきりかえた。ところが、ある日、夫が牛に蹴られ、またまた莫大な遺産を残して死んでしまった。
またも未亡人になったルイザは、車でニューヨークに行く途中、ある郊外の安料理店に出演する人気のない道化師ピンキー・ベンソン(ジーン・ケリー)と酒場で会い、結婚した。2人は楽しい日を送った。ある夜、急いでいたため道化師のピンキーは化粧をせずに舞台に立ち、それが大ウケにうけ、やがて一躍人気歌手になったが、ある劇場で、殺到したファンの群れに踏み潰され、またもや遺産をルイザに残して死んでしまう。
…とルイザが精神科医に想い出話を話していると、精神医が「私と結婚してくれ」と言い出す。しかしルイザは「NO」を告げる。そんな時、ビルの小使いにおちぶれていたレナードが目の前に現れた。レナードの、簡潔さに喜びを持つ姿をみて、ルイザは共鳴し、2人は結婚した。農場を経営し、4人の子供も出来て幸せな生活を送ることになった(MovieWalkerを一部修正加筆)。
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4人の夫と死別するたびに遺産が膨れ上がっていく主人公ルイザが、お金でなく真の幸せを見つけるまでの姿をブラック・コメディタッチで描いている。
ルイザの名前が結婚するたびに長くなっていくおかしさ。ジーン・ケリーのお家芸のタップダンスは見所。シャーリー・マクレーンと踊るシーンなどはまるでミュージカル映画。その道化師ピンキー・ベンソン(ジーン・ケリー)は人気者となり、名声を高めて5時間半のコメディ映画の主演をすることになる。「ファンが望んでいるので1分でもカットすると火をつける」と制作者たちに釘を刺す。次の映画は7時間半の映画で、主演と監督をする」という。共演はマーロン(・ブランド)とケーリー(・グラント)などというと「落ち目の3人だ」というのがおかしい。シーザーの役を演じることになると「これは(リチャード)バートンが希望していた役だ」という声が聞こえた。
映画のラストで、農場から石油が湧き出てきたときは、ルイザは一瞬困った表情をする。またしても財産が増えてしまうと心配したのだ。しかし、これは別の男たちの石油パイプラインに穴があいたために石油が漏れたとわかって、ルイザはホッと安心するのだ。子供4人と夫とようやく望み通りの生活を手に入れたルイザ。
それにしても、シャーリー・マクレーンはスタイルが良く、セクシーなシーンが多かった。小さいバスタブで戯れたり、大きなワイングラスを型どったオブジェの上がベッドになっていたり、「検閲」の文字が登場してエロティックなシーンを隠したり、ユーモアたっぷり、皮肉もたっぷりのコメディだった。
シャーリー・マクレーンの映画の個人的なベスト10(①②③以外は順不同):
①「スイート・チャリティ」(1968)
②「あなただけ今晩は」(原題:Irma la Douce,1963)
③「アパートの鍵貸します」(原題:The Apartment,1960)
④「愛と追憶の日々」(原題:Terms of Endearment、1983)
⑤「噂の二人」(原題:The Children's Hour,1961)
⑥「ハリーの災難」(原題:The Trouble With Harry,1955)
⑦「真昼の死闘」(原題:Two Mules for Sister Sara,1970)
⑧「愛と喝采の日々」(原題:The Turning Point,1977)
⑨「何という行き方!」(原題:What a Way to Go!、1964)