宝塚歌劇団出身でドラマ「岸辺のアルバム」などで知られる女優・八千草薫が24日に死去していたことが28日、分かった。88歳だった。
八千草薫の突然の訃報には驚いた。年齢を重ねても、変わらぬかわいらしさがあった。日本の現役女優では、最高齢の中の一人だが、90歳代になっても元気でテレビ、映画に出演していて欲しいと思っていたので、残念。
1947年に宝塚歌劇団に入団。美貌の娘役トップスターとして活躍し、1957年に退団。1955年に映画「乱菊物語」で監督と主演女優として出会った、19歳年上の谷口千吉監督と退団直後に結婚した。当初は結婚後は家庭に入るつもりだったが、谷口監督は「女優も続けなさい」と後押しした。
テレビドラマでのおっとりとした良妻賢母役が好評で、多くの作品に出演。ドラマ「岸辺のアルバム」「わたしの可愛いひと」、映画「雪国」「ハチ公物語」「ゆずり葉の頃」、舞台「二十四の瞳」「細雪」などに主演。
清純派から優しいお母さん役まで幅広く演じた。山登りが趣味で、谷口監督とともに日本の山々を登ったが、2007年に死別した。1997年に紫綬褒章、2003年に旭日小綬章を受章した。
記事によると、八千草薫は2017年12月に人間ドックで膵臓がんと分かり、翌2018年1月に7時間に及ぶ摘出手術を受けた。その後は抗がん剤治療などを受けて順調に回復、同年8・9月には舞台「黄昏」に主演し、ドラマ収録にも参加した。
しかし、2019年1月に熱が出たため、病院で検査を受けたところ肝臓にがんが見つかった。そのため、4月スタートのテレビ朝日系ドラマ「やすらぎの刻(とき)~道」にヒロインしの役で出演を予定していたが、降板。風吹ジュンに代わった。
八千草薫は親交のある倉本聡の脚本ということもあって、仕事の続行を希望したが、医師の説得で降板を了承。ただ前作「やすらぎの郷」で演じた九条摂子役として前半部分で出演しており、摂子役としてがん公表から3日後に極秘で撮影に参加し、撮り終えていた。また、復帰にも前向きで、所属事務所の公式サイトに「体調を整えまして、より一層楽しんでいただける作品に参加できるように帰ってまいります」とつづっていた。
「男はつらいよ」
「不毛地帯」
映画では「男はつらいよ 寅次郎夢枕」(1972)のマドンナ役、「不毛地帯」(1976)の主人公・壱岐正(仲代達矢)の妻役、「ディア・ドクター」(2009)などが印象に残る。
ご冥福を祈ります。