「人生はシネマティック!」(原題:Their Finest、2016)をそのタイトルに惹かれて見た。
主演は「アンコール!!」や「007 慰めの報酬」でボンドガールを演じたジェマ・アータートン、「ハンガーゲーム」シリーズのサム・クラフリン、「マリーゴールド・ホテル」などのビル・ナイのほか、ジェレミー・アイアンズも言われないと気づかないほどだが出演。原作は、リサ・エヴァンスが2009年に発表した小説「Their Finest Hour and a Half」。
クリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」で脱出劇が描かれていたが、「人生はシネマティック!」では、ダンケルクで兵士を救出した姉妹の実話の映画化に情熱を傾ける人々が描かれる。戦意高揚というプロパガンダ映画というよりも、疲弊した国民に勇気を与えようとした映画づくりを描いている。
旧式の手動式タイプライターを叩く小気味いい音、さらにさすが紅茶の国、大変な時も紅茶を飲んで一息つくといった英国人気質などの雰囲気もでている。
1940年、第二次世界大戦下のロンドン。
しかしベテラン俳優のわがままや、政府や軍部からの横やりなどにより脚本は二転三転。それでも困難を乗り越え撮影も大詰めを迎えた頃、カトリンたちに最大級のトラブルが起こる。
朝まで100万発が必要だと言われ、やるしかないと女性たちが奮起する戦意高揚映画。情報省映画局の特別顧問バークリーは、劇場で観客の様子を観察していたが、受けは今ひとつ。お偉方からも苦言を呈されてしまう。
「国が元気になる映画を作ってくれないと困る。大切なのは”信憑性”と”楽観”だ」と言われ「ネタを探します」と答えるバークリー。
そんな時、コピーライターの秘書をしているカトリンが情報省映画部を訪れていたときに、徴兵されたライターの代わりに書いた広告コピーがバックリーの目に留まり、彼女が新作映画の脚本家としてスカウトされたのだった。
映画部は「ダンケルクの闘い」を次の映画の題材にしようと考えていた。
追い詰められた英仏兵を助けた民間人の中に双子の姉妹がいたという新聞記事を見た映画部はカトリンを取材に行かせる。
出かけてみると、双子は彼女がマスコミ関係者でないのを確かめて、部屋にあげてくれた。彼女たちは、実際は途中でエンジンが停まり、ダンケルクにはいけず、先行の船に溢れかえるように乗っていた兵士たちを乗せただけだと語る。
新聞が大げさに書いたので父が怒っているとも語る。
しかし、彼女たちはその時のエピソードを楽しそうに語るのだった。兵士のカバンに犬が入っていてびっくりしたこと。フランス兵がお礼のキスをしてきたことなど。
よそ者が嫌いな父が戻ってくるのではないかとそわそわしながら、双子はカトリンに、映画部から来たのならロバート・ドーナットに会ったか?と楽しげに聞いてきた。会っていないと応えると、ヒッチコックの「三十九夜」(原題:The 39 Steps、1935)に出演したドーナットのブロマイドをみせてくれた。映画の話しになると生き生きしだす二人だった。
自分だけなら友人の家に泊めてもらって絵を描くことも出来るというエリス。
収入が少ないのが理由とわかっているので、カトリンは「私が稼ぐわ」と言い、脚本の仕事をなんとしても成功させようと決心する。
カトリンは企画会議で、双子の姉妹が語ったエピソードを紹介する。”信憑性”と”楽観”のある企画だと評価され、映画化することが決まる。
脚本の修正を迫るムーア(右)
姉妹が乗る船「ナンシー号」のエンジンが故障したというエピソードが、英国が誇る技術力の威信を傷つけるから脚本を直せというのだ。
英国海域さえ出ていない。事実と違うというのだ。
最初は女性の台詞だけを書いてもらうとカトリンに言っていたバックリーだったが、カトリンはバックリーが思った以上の実力があることに気付く。
カトリンの方もバックリーに対して、最初は高圧的だと感じていたが、精力的な仕事ぶりを見て、だんだんシンパシーを感じ始めていった・・・。
・・・
この映画の魅力は、映画製作の裏側についての進行状況や、セリフのやりとりの面白さが描かれていくこと。映画の冒頭で、映画製作会社の幹部の女性が「脚本1頁は、映像1分、フイルム80ヤード(約73メートル:1ヤード=91.4センチ)よ。監督がトイレの紙みたいに使わなければ」という。
脚本に関しては「これが映画だ。現実から退屈な部分を削る。事実と真実は違う。何よりもストーリーが優先」。映画のストーリーの骨格について、黒板の上で「スタート」と「結末」を決めて、その間に「犬」「ダンケルク」「船のエンスト」「叔父の死」とあとは隙間を埋めるだけ、といった会話が交わされる。
船のスクリューに何かが挟まったシーンで、人が海中に潜ろうとするときに「エロール・フリンみたいに立ち向かって!」と檄が飛ぶ。映画ファンには馴染みのあるエロール・フリンは、1933年にオーストラリア映画で映画デビュー。1930年代、40年代と、活劇映画で勇敢に正義をもって悪に立ち向かうキャラクターを演じ人気を集めた。
カトリンが映画館に完成した映画「ナンシー号の奇跡」を観に行くと、感動して涙を流している人々の姿があった。隣の帰還兵は、「2回見ると笑える」といい、右隣の女性はもう5回も観たと言い「私たちの映画よね!」と興奮を隠せない。何度も観ている人たちがいるということ。帰還兵はカトリンの職業を尋ねた。カトリンは空襲監視員よ、と答えた。
モデルとなった双子の姉妹たちも映画の出来栄えに喜んでくれ日々励んでいるという。カトリンは再びタイプライターの前に座る。フィルが声をかけてきた。「ハッピーエンドにね!」「わかっているわ」。カトリンは微笑むとタイプライターを矢のような速さで打ち始めた。
映画製作を題材にした映画と言えば、「雨に唄えば」(1952)「映画に愛をこめて アメリカの夜」(1973)、ゴダールの「軽蔑」(1963)、脚本家を描いた作品ではビリー・ワイルダーの「サンセット大通り」(1950)、最近では「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」(2015)などがある。「人生はシネマティック!」もこれら名作に負けないほどの作品に仕上がっている。
原題は、バックリーの劇中にもあった言葉「人生の一時間半を捧げるのに最もふさわしい作品」から来ている。
主な出演者:
ジェマ・アータートン - カトリン・コール (主人公:コピーライター秘書から脚本家へ)
サム・クラフリン - トム・バックリー (英国情報省映画局特別顧問)
ビル・ナイ- アンブローズ・ヒリアード/フランク
ジャック・ヒューストン - エリス・コール (カトリンの夫:空襲監視員)
エレン・マックロリー - ソフィー・スミス
ポール・リッター - レイモンド・パーフィット (英国情報省映画部の幹部)
エディ・マーサン - サミー・スミス
レイチェル・スターリング - フィル・ムーア (英国情報省)
リチャード・E・グラント - ロジャー・スウェイン
ヘンリー・グッドマン - ガブリエル・ベイカー
クローディア・ジェシー - ドリス/リリー
ステファニー・ハイアム - アンジェラ/ローズ
ナターリア・リュミナ - ミュリエル、エリスの友人。
ジェレミー・アイアンズ - 軍の幹部
ジェイク・レイシー - カール・ランドベック/ブラニガン
脚本に焦点を当てている映画作りのため、セリフもシャレている。
ラストに見せる映画が持つ救済力にもうならせられる。
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