昭和25年夏、北九州一円でエスカレートしたヤクザの抗争を民主的に解決しようと開かれたヤクザ組織の野球大会を描く。野球といっても、”任侠野球”と言われ、危険球なども連続して投げるといった具合。
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昭和25年、拡声器から流れるのは笠置シズ子の歌うヒット曲、東京ブギウギ。
パチンコ屋や即席屋台などでは、チンピラ・ヤクザが、自分の腹巻に、店の商品などを詰め込んでいた。そこに進駐軍のMP(Military Police= 軍警察)のトラックがやって来る。ヤクザ組織の組長のような人間が、現金の札束をMPに渡す。闇商売に目をつむってもらおうという賄賂だった。
そんな中、北九州一円ではヤクザ組織の抗争がエスカレートして、まさに一触即発の状態だった。特に小倉では昔かたぎの岡源組と新興ヤクザの橋伝組がしのぎを削っていた。
この事態に小倉警察署長の岩崎(藤岡琢也)は、ヤクザ抗争を民主的に解決するために野球大会を提案した。岡源組、斬り込み隊長の加助(菅原文太)は野球など子供の“タマ遊び”だとして、話に乗らず、割烹「川太郎」で飲んだくれていた。
加助は店のおかみ、お仙(宮下順子)にゾッコンだった。岡源組(岡谷源蔵組長:嵐寛寿郎)のシマを狙う橋伝組(橋本伝次郎組長:金子信雄)は、一気に決着をつけようと、札束にものをいわせ、全国から野球上手な渡世人を集めた。
一方、岡源組はドシロウトばかり、わずかに戦争で片足を失った五味(フランキー堺)を監督に迎えただけだった。ジョーカーズとの一回戦、あわや敗退かという時、途中から出場した加助の劇的な長打で逆転した。
橋伝組は、岩国に手を延ばして銀次を寝返えらせてしまった。
このことが加助の怒りを一層あおり、岡源組は一人一殺の殺人野球に活路を求めスパイクを尖らせ、バットに鉛を埋めた。
双方の応援団も盛り上がり、岡源組には小倉の芸者衆が、赤いけだしをまくってカンカン踊り、橋伝組には地元のストリッパーのラインダンスとボルテージは最高頂に達した。
サイレンの音とともに試合は始まった。次々と負傷する両軍選手、審判も例外ではない。二転、三転する血みどろの試合展開。6対3で迎えた9回裏、岡源組の攻撃、2死満塁で加助がバッターボックスに入った、そして加助の打った打球は・・・。
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ドラマ「ルーズヴェルト・ゲーム」は、企業間の戦いと野球部の闘いを並行して描いたが、「ダイナマイトどんどん」はヤクザ間の抗争への世間の風当たりを和らげるために野球で勝負をつけようというものだったが、乱闘騒ぎが起こってしまう。
8連続三振を記録する投手・芦刈の作蔵(田中邦衛:写真)の独特の投球フォームは、バッターに背中を向けて、小バカにしたような態度から繰り出すストライクが笑わせる。ただ、無類の酒好きで、焼酎をやかんいっぱいに入れてあるのを差し出され、飲みすぎてベロベロになって自滅してしまう。
野球チーム名は、「橋伝カンニバルズ」と「岡源ダイナマイツ」とかなり過激。
中心者が「ダイナマイト!」と叫ぶとチーム・メンバーは、足踏みをして「どんどん」と掛け声を掛けるところからタイトルとなった。
やや下ネタになるが、戦後のパンパン(アメリカ軍人相手の娼婦の俗語)で野球をやっていたところへ、ヤクザがやってきて、「女が野球なんかできるのか」というと「バットとボールはお得意さんよ」。加助(菅原文太)が、「野球なんか、ガキの遊びだ」と言って、野球に加わろうとしないで飲んだくれていると。女郎の一人から「渡世人のくせして、野球ができんと?それでも○○タマぶら下げてんのか」だった。
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岡本喜八監督のコメディタッチの任侠・野球映画。
昭和20年代半ばの風俗、時代背景などが再現されて興味深い。
出演:
宮下順子:お仙
北大路欣也:橘銀次
嵐寛寿郎:岡谷源蔵
金子信雄:橋本伝次郎
岸田森:花巻修
中谷一郎:香取祐一
フランキー堺:五味徳右衛門
小島秀哉:留吉
石橋正次:吹原
丹古母鬼馬二:鬼熊
福崎和宏:一六
下馬二五七:百武
鳥巣哲生:牧瀬
兼松隆:陣内
志賀勝:南里
吉中正一:辻
田中邦衛:芦刈の作蔵
赤穂善計:合田
尼子狂児:津上
妹尾琢磨:血桜
鴨てんし:相馬
二瓶正也:犬飼
伊吹新太郎:真崎
大木正司:猿渡
藤岡琢也:岩崎警察署長
大前均:中谷巡査部長
草野大悟:藤崎
長谷川弘:小林部長
伊佐山ひろ子:きん子
桜町弘子:千代竜
小林真美:君春
立枝歩:のり子
岡本麗:特飲街の女郎
ジャック・デービス:米軍司令官
岡部耕太:賭博屋
監督:岡本喜八
音楽:佐藤勝
製作:大映
配給:東映
映画:142分
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