「欲望という名の電車」などのエリア・カザン監督の「革命児サパタ」(原題:Viva Zapata!、1952)を見た。メキシコ革命に活躍した英雄エミリアーノ・サパタの半生記を描いている。アカデミー賞ではアンソニー・クインが助演男優賞を受賞。有名な作品だったが、最近レンタル店で見かけたので見ることにした。モノクロだが、カメラがいい。
世界的な大プロデューサー、ダリル・F・ザナック製作による作品。
「怒りの葡萄」のジョン・スタインベックが脚本を書き下ろし「「紳士協定」(1947)「欲望という名の電車」(1951)のエリア・カザンが監督した。音楽は「欲望という名の電車」のアレックス・ノースが担当。
主演は「欲望という名の電車」のマーロン・ブランド、「征服への道」のジーン・ピータースで、以下「血と砂(1941)」のアンソニー・クイン、「探偵物語」のジョセフ・ワイズマン、「セールスマンの死」のミルドレッド・ダンノックらが助演。
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ディアス大統領の30年以上に及ぶ圧政に苦しんでいたメキシコ農民代表の一群のなかにエミリアーノ・サパタ(マーロン・ブランド)という青年がいた。サパタは、土地を奪われ、家も焼かれた」と訴えるが、ディアス大統領は、「裁判を起こせばいい」と型通りの答えを言うが、サパタは「裁判で農民が勝った試しはない」となおも食い下がる。
大統領が「お前の名前は」と聞いてきたので「エミリアーノ・サパタ」と答えるサパタ。
サパタは、農民を率いて軍と戦うのだが、学問がない負い目があった。
交渉相手は、学歴のある法律家や学者などがいたが「字が読めない」ことから「彼らの前では、馬も銃も無意味だ」と思っていた。妻となったホセファーに、本を持ってきて教えてくれと頼み、聖書を読み始める。
サパタは、将軍にまで登っていくが、あるときに農民が陳情に来て、意見を言う若者に名前は?と聞き、スペルを書こうとした時に、あることが脳裏をかすめる。自分が今していることは、かつて農民を苦しめたあのディアス大統領と同じではないかという苦悩だった・・・。
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かねてよりサパタを亡きものにしようとしていたフェルナンドは、サパタの留守中にサパタ討伐軍を起こし、卑怯にもある屋敷の中庭にサパタをおびき出し、建物の屋根一面に銃を構えていた伏兵の一斉射撃によるシーンは迫力があった。
フェルナンドらは、サパタの死体を町に見せしめのために晒したのだが、これを見た農民たちは、「これはサパタではない。サパタは生きて山の中にいる。苦難の時には助けに来てくれるはずだ」と信じるのだった。
原題のViva Zapata!というのは、暴君のディアスが亡命した、という知らせが駆け巡った時に、「戦争は終わった」と歓声を上げて農民たちが発した言葉「ビバ・サパタ!」によるもの。
マーロン・ブランドがメキシコ人になりきって、最初に登場したときは、浅黒く、目が泳いでいるようなブランドらしからぬルックスに思えたが、将軍になると、ヒゲを蓄え、後の老けメイクだが「ゴッドファーザー」のような風格も見せている。マーロン・ブランドの演技力が伝わる映画でもあった。アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたが、受賞には至らなかった。3年後のカザン監督の「波止場」(1954)では同賞を受賞している。
アンソニー・クインが、サパタの兄を演じているが、酒好きで、人間臭さを出していた。サパタが将軍になって権利としてもらえる土地・建物などを「闘ったのはそのためでなく農民のためだ」として受け取るのを拒否したことに、貰った方がいいと反論するが聞き入れられなかった。