「脱出」(原題:To Have and Have Not、1944)を見た。
この映画で、新人とはとても思えないローレン・バコールが「私に用があったら、口笛を吹いて」という名セリフがある映画を、いまごろ見るとは・・・!とguchさんに言われそうだ。何しろguchさんは、日本の某ホテルで本物のローレン・バコールと会話を交わしているのだから!(笑)。
原作は、アーネスト・ヘミングウェイの小説「持つと持たぬと」(1937年)。ハワード・ホークス監督作品で、主演は、ハンフリー・ボガートと、この映画がデビュー作となったローレン・バコール。ボガートとバコールはこの映画がきっかけで、翌年1945年結婚。ボガート46歳、バコール21歳で、今でいう25歳の年の差婚。「脱出」では、低音でハスキーボイスのローレン・バコールだが、20歳そこそことは思えない大人の雰囲気があり驚かされる。
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ハワード・ホークス監督(1896年5月30日 -1977年12月26日)とアーネスト・へミングウエイ(1899年7月21日 - 1961年7月2日)は年齢も近く親交があったようで、ホークスは、へミングウエイに「原作は一番出来が悪いが、映画では最高にしてみせる」と語ったという。
映画の舞台となるのは「カサブランカ」と同様、第2次世界大戦初期、ドイツがフランスを後略していた頃のフランス植民地。
ローレン・バコールはこの映画の撮影当時、とても20歳とは思えないほどクールで大人びている。男勝りで気が強そうで、日本人はどちらかというと苦手のタイプかも知れない。キュートで可愛い方がいい(笑)。
ただこの映画では、マリーという謎めいた女性を演じるローレン・バコールがなかなかかっこいいのだ。酒場では歌も歌う。
ホテルでは、ハリー・モーガン(ボガート)の向かいの部屋に宿泊しているが、タバコの火を借りにモーガンに近づき、モーガンのハートを捉えたと思い込む。積極的で、自分からモーガンにキスをして、2回目の時には「前よりはいいわ。ただし、ヒゲが痛いわ」だった。「(ヒゲを剃ったあとで、近いうちに)またもう一度ね」。
この酒飲みの船乗り・エディは、モーガンの相棒で、酔っ払って寝ているところを、バケツの水をかけられても「すっきりした」とケロっとしているような人間だ。
常に酒の瓶が手元にないと落ち着かないような人間で、「死んだハチに刺されたことがあるか」といった同じ質問を何度もする。別な人間といる時に、エディが話をしようとすると、決まってモーガンが、”あの話(ハチの話)”はするなよ、と静止するのがおかしい。
マリー(バコール)が、ホテルのドアを開けて、振り返っていう。
「私に用事があるときは、口笛を吹いてね。口笛吹ける?
くちびるを突き出して、吹くのよ」
・・・と言い残して去っていく。
しばらくして、モーガンがマリーにあった時には、「口笛の練習をしておくよ」というのもシャレている。
レジスタンスの仲間でないのにモーガンが、脱出の協力をすることに対して、レジスタンスの幹部の一人が、モーガンがお金の事できっちりしていたので信用できると判断するくだりがある。「数多くの裏切りは金絡みだが、君には無縁のようだ。(そのことだけで信用できる)」というものだった。
ということで、セリフの面白さも散りばめられていて見所となっている。
「カサブランカ」のセリフの中には、歯の浮くようなセリフもあるが、名作映画は名セリフが多く含まれているということか。
この映画は必ずしも評価は高くないようだが、それなりに面白かった。
☆☆☆
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