「エデンの東」は、およそ40年近く前にテレビで見たが、記憶していたのは、2階建ての倉庫から、キャル(ジェームス・ディーン)が、大きな四角い氷の塊を表に投げ出すシーンなど。印象としては、双子の兄弟で、兄ばかりが父親から認められて、弟の自分(キャル)は、理解されず、疎んじられていたという程度だった。
しかし、今回2度目の観賞で、ただ意固地になっているだけの若者と思っていたキャルが、優等生のような兄よりも人間的で、悩みを抱え、最後には、確執のあった父親と理解しあうことができたというのが感動的だった。
名作過ぎて、というためらいも多少あったが、再見して良かったと思った。
原作は、旧約聖書に取材したジョン・スタインベックの長篇小説。監督は、「波止場」でアカデミー賞を受賞したエリア・カザン。
「エデンの東」というタイトルは、旧約聖書の創世記におけるカインとアベルの確執、カインのエデンの東への逃亡の物語を題材にしていることによる。父親からの愛を切望する息子の葛藤、反発、和解などを描いた作品。
ジェームス・ディーンをよく見ると、若い時のアラン・ドロンに雰囲気が似ていると思ってしまった(笑)。
ところが、あるとき、アブラがアーロンとの遊園地での待ち合わせ時間よりも30分以上早く来ていたために、そばにいたキャルと、時間つぶしに、ボール投げの遊戯をしたり、観覧車に乗ったりする。観覧車で、キャルと話をしているうちに、自然に口づけを交わしてしまう。あとで、アブラは、キャルにそのことは忘れるようにと伝え、アーロンとの将来を誓うのだが・・・。
「エデンの東」のラスト10分は、これまでに見た映画の中でも、最も感動的なシーンだった。この映画のアブラという女性を演じるジュリー・ハリスが、これほど魅力的で、すばらしい役柄だったのを、初めて理解できた。兄弟のうちの兄と結婚を決めていて、弟は変人で、怖いというように考えていたが、兄が優等生タイプだったが、ほころびが見え始め、戦争の志願兵になって出征していくことになり、一方で弟を知るうちに、だんだん惹かれていくところが自然体でいい。
ヨーロッパの戦争の足音が迫っていた時期が背景。双子の父親のアダムは、兄のほうをかわいがり、弟には冷たく接していた。それは、兄は従順で、正義感にあふれていたが、弟は、反抗的で、気難しく、家族を棄てた妻に似ていたということがあったからである。
兄弟は、母は死んだと聞かされていたが、キャルは、いつしか酒場を経営するケートという女性が母親に違いないと思い、酒場に忍び込み、ケートと話をしようとするが、用心棒から追い出され、保安官のサムからケートは実の母であることをはっきりと聞かされた。ケートがアダムを見捨てたあと、アダムはすっかり気力がなくなってしまった経緯も知ったのだった。
キャルは、農業を営む父がレタスで失敗し、大損したお金を、豆の先物取引で埋め合わせをして、父親を助けようとする。資金を、母親から調達し、儲けを出し、父親の誕生日祝いに、父が損した分と同じ額のお金をプレゼントするが、これが父親の反発を生む結果となった。一方、アーロンは、父へのプレゼントとして、自分とアブラの婚約を伝えたところ、父は大いに喜んだが、キャルの贈りものは受けとろうともしなかった。それどころか戦争で暴利を得るとは怪しからぬと、激しく叱りつけた。
絶望したキャルを優しくなぐさめたのはアブラだった。アーロンまでが罵しるのを聞いて、キャルは憤満を爆発させた。キャルは、母親が生きていることをアーロンに伝え、ケートの酒場へつれて行き、母親の秘密を暴露した。
アーロンはショックをうけて人が変わったようになり、酔いしれて、そのまま軍隊に志願して列車にのりこんでしまった。停車場へかけつけたアダムは、信頼していた息子の変わりはてた姿を見て、驚きのあまり卒倒し、半身不随になって明日をも知れぬ命となってしまう。
アブラは、病床のアダムに、自分が言える立場にないが、なんとしてもキャルを許すよう哀願した。アダムはそれを聞き入れ、苦しい息の下からキャルに看病をたのんだ。キャルはやはり父が自分を愛していたと知って、ようやく絶望から救われた。
ラストシーンでは、アブラの素晴らしさが光った。「キャルは、これまで、自分は必要ない人間と思いこんでいる。こうしてほしいということをキャルに言ってほしい」とアダムに、切々と訴える姿。その言葉を理解する父・アダム。
アブラは、これでもう話し合いが最後になるかもしれないという時に、最後にアダムと話をしてほしいとキャルに伝えると、キャルは、病床に伏したアダムの元にもう一度。
そこで、アダムは「付き添いの看護婦は気に入らない。外してくれ」とキャルに頼む。「僕もあの看護婦は気に入らない」とキャル。その後、アダムは、小声で、キャルの耳元でつぶやく。
アブラも気になっていたので「なんと言っていたの?」と聞くと「看病はキャルだけでいい」と言っていたというのであった。親子のわだかまりが解けた瞬間だった。見事なエンディングだった。
音楽は、映画音楽のスタンダードになるほどの名曲。
ジェームス・バイロン・ディーン(James Byron Dean、1931年2月8日 - 1955年9月30日)が正式な名前で、車の事故で24歳で亡くなった。端役で何本か出演したのち「エデンの東」で主演し、アカデミー賞にノミネートされた。その後「理由なき反抗」「ジャイアンツ」に出演した。主要映画としては3本だが、いずれも名作で、ジェームス・ディーンは、伝説の俳優となった。(映画評論家の小森和子は、ジェームス・ディーンを息子のように愛し、毎年、命日にはアメリカの墓参りをしたというのは有名。小森のおばちゃまも、自身の華麗なる遍歴の本を出版したりしたが、テレビの解説や、雑誌の記事はよく見ていましたね。)
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