「リトル・ダンサー」(Billy Elliot) 予告編
タイトルだけは知っていて気になっていた作品「リトル・ダンサー」(2001年日本公開)を見た。似たようなタイトルの「ダンサーインザダーク」(2000)も未見、見なくては・・・。
「リトル・ダンサー」は、公開されたときに、イギリスで超ロングランヒットとなり、カンヌ国際映画祭監督週間クロージング作品として上映され、“無名の少年が一夜にしてスターに!”と絶賛された作品という。2002年日本アカデミー賞の外国映画賞を受賞している。映画を見て納得。
監督は演劇界で活躍するスティーヴン・ダルドリー。
母親を前年に亡くし、父(ゲアリー・ルイス)も兄のトニー(ジェイミー・ドラヴェン)も炭坑労働者のビリー(ジェイミー・ベル)は、ボクシング教室に通っているが、試合に負けてばかりの11歳。
そんな時、偶然目にしたウィルキンソン夫人(ジュリー・ウォルターズ)のバレエ教室に強く惹かれ、女の子たちに混じって練習するうちに夢中になっていく。
ウィルキンソン先生はどんどん上達するビリーに自分が果たせなかった夢を重ね合わせ、熱心に彼を教える。しかし、家族の金をバレエに使っていたことがバレてしまい、父は激怒。ビリーは悔しさをぶつけるように、一人で踊っていた。
自分の息子が、ボクシングではなくバレーを習っていたことを知った父親が激怒するが、あるとき、ビリーの親友のマイケル(ステュアート・ウェルズ)の前で踊るビリーの姿を見て、息子の素晴らしい才能に初めて気づいた父親は、ビリーをロンドンの名門、ロイヤル・バレエ学校に入学させる費用を稼ぐため、スト破りを決意する。
それは仲間たちへの裏切り行為であった。スト破りの労働者を乗せたバスの中に父を見つけたトニーが、バスを追いかけて必死に止め、父は泣き崩れる。その事情を知った仲間たちがカンパしてくれ、ビリーは学校に行くことができた。
バレエ・ダンサー志願の少年の成長を描いた感動作で、にくいラストシーンはグッと迫るものがある。男は、サッカー、ボクシング、レスリングなどをすべきで、バレエなどとんでもないという父親だったが、ロンドンの名門のバレエ学校の試験に同行し、その結果が後日郵便で届くのだが、郵便の封は切らずにビリーに渡し、そわそわしながら待つところなどがいい。
自室で封を切り、文面を読むビリー。
ビリーの表情。合格なのか、不合格なのか・・・。
気が気でない父、兄、あばあさんが様子を見に来る。
ビリーは一言「受かった」。
そのあとのシーンが、傑作。
タップを踏みながら走る父親が、知り合いたちに「受かった。受かりやがった!」
というのが、最高の喜びの表現だった。
バレー教師役のジュリー・ウォルターズといっても、はてなと思ったが「マンマ・ミーア!」で、メリル・ストりープの親友の一人を演じていた。「リトル・ダンサー」では、ビリーから「負け犬」といわれたが、常にタバコをふかしながら、 小さな女の子供たちにバレーを教えていて、ビリーにも興味があるならと生徒の仲間に入れ、練習料
50ペンスを取って教えているうちに、その才能を見出す。合格したことをビリーは、教師のウィルキンソン夫人に知らせに行き、感謝の言葉を述べるが「スタートに立ったところだ」と激励される。
親子(父と子)の会話の中にも見どころが多い。
あれだけ反対していた父親が、息子が本気で取組み才能があることがわかると、収入のために、スト破りに参加、長男の息子からも「なぜスト破りに」とバスを追いかけられるが、「ビリーの夢をかなえさせてやりたいんだ。自分たちには、炭鉱の仕事しかなく将来はないが、ビリーには未来がある」と。
ビリーが「学校がいやになったら戻っていいか」というと、父親は「ダメだ。もう家は貸しに出している」。
父親とビリーが一緒に歩いていると、ビリーが、タップダンスをしながら歩いているのを見て「普通に歩けないのか?」というのがおかしい。
バレエ学校で、審査・面接する学校の職員たちの表情もいい。
ビリーを教えていたウィルキンソン夫人から、ビリーの家庭の事情、父親の反対なども聞かされていたので、ビリーがテストを受けるときに、「これが(例の)ビリーか」という声が小声で聞かれた。
テストのビリーの踊りは緊張して、うまくいったとは思えなかったが、帰ろうとするビリーに審査員の一人が「バレエを踊っているときはどんな気分?」と聞くと、ビリーはしばらく考え「何もかも忘れて、電気のようになり、うれしくなる」と答えるのだが、そのあたりも評価に影響したようだ。
10数年後、バレエ・ダンサーとして名を成したビリーの公演会場に駆けつける白髪となった父と兄。またそこには、ビリーの友人マイケルもいた。
おもな受賞:
・主演男優賞(ジェイミー・ベル)
・英国作品賞
・子役賞(ジェイミー・ベル)
名作、再発掘の1本で、「名作への進路」は、正解だったようだ。
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