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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「十二人の怒れる男」(1957)密室劇の傑作。

 
法廷劇の傑作といわれる「十二人の怒れる男」(1957)は、陪審員の間で有罪・無罪を議論する感動のドラマだった。伯仲した議論に、やがて大きな感動が・・・。

映画は、ほとんどの場面が、陪審員の部屋のみで撮影された。それだけに緊迫感が出ていた。

すばらしさは、俳優の演技に尽きる。
ヘンリー・フォンダのすばらしさ。リー・J・コッブ、マーチン・バルサムらの性格俳優が、これまた圧倒的な存在感を示した。

ニューヨークのある法廷に、殺人容疑の少年の裁判の陪審員として召集されたのは、
12人の男たち。
 
まず最初の投票で、11人が少年の犯罪を有罪と認めた。これで結審と見られたが、1人の陪審員ヘンリー・フォンダ)が疑問を持ったのである。彼は、議論と説得を重ねながら、残り11人の陪審員たちを説得してゆき、最後には全員一致で判決を無罪に導くのだった・・・。

今、日本でも導入されるという陪審員制度だが、この映画では、感動的に裁判の成り行きを描いたディスカッション・ドラマとなった。登場人物は、まったく利害関係はなく、名前も知らないし、人間関係はない。それだけに白熱した議論が感動的だ。

CBSテレビは、レジナルド・ローズの原作を、フランクリン・J・シャフナーの演出、フランチョット・トーン主演でテレビ・ドラマ化して高い評価を獲得した。ユナイテッド・アーティスツ社は、このドラマに興味を示し、映画化を決め、ヘンリー・フォンダに出演をオファーした。テレビ版の試写を見たヘンリー・フォンダは、感激し、主演だけでなくプロデューサーまでも引き受けて映画製作の資金を調達したのだった。

監督には、これがデビュー作となったシドニー・ルメットが抜擢された。
さて、陪審員選び。ヘンリー・フォンダ(8番陪審員)と対立する11人の陪審員たちを選考するにあたって、シドニー・ルメットヘンリー・フォンダが全員、直接オーディションを行ったという。

「波止場」(1954)のリー・J・コッブ(3番陪審員)以外は、マーティン・バルサム(1番陪審員)やエド・ベグリー(10番陪審員)といったテレビやブロードウェイで活躍していた演技派の性格俳優たちが集められた。また、狭い陪審員室は閉鎖的な空間を作りだし、その結果、俳優たちの 息の詰まるような緊張感を盛り上げる事にも成功した。

この映画の成功したひとつの要素は、監督のルメットが、編集の際に、時間配列を解体する映像テクニックは一切使わず、映画の上映時間と物語の進行時間を一致させたことだといわれる。そのため、真にリアリズム溢れる映画となったようだ。

映画はニューヨーク・マンハッタンで撮影され、撮影期間はわずか17日間。制作費も予算を1000ドルも下回る30万3000ドルで完成。興行的には成功しなかったが、第30回アカデミー賞では作品、監督、脚色賞の3部門でノミネートされた(賞は無冠)。ベルリン映画祭では、最優秀作品賞を獲得。

この映画は、テレビでも十分に堪能できた。過去3回は見た記憶がある。
お金をかけなくても、感動作品ができるという見本のような作品だと思った。

 映画の一シーンはこちら:
 http://www.youtube.com/watch?v=wYAuzs-AxXA&mode=related&search=

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