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映画「PERFECT DAYS」(日・独合作)を朝一番で見る。役所広司の名演(カンヌ映画祭主演男優賞受賞)。

 

映画「PERFECT DAYS」(日独合作)を朝一番(8:05)で見た(MOVIXさいたま)。監督は「パリ、テキサス」「ベルリン・天使の詩」「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」などのヴィム・ヴェンダース

合作だが扱いは日本映画で、アカデミー賞では、88カ国の代表作品の中から国際長編映画賞のショートリスト15作品に選出された。

カンヌ国際映画祭で、日本人としては2番目となる最優秀男優賞を役所広司が獲得した作品(「誰も知らない」柳楽優弥以来19年ぶり)。

ことしの東京国際映画祭でオープニング上映作品でもあった(クロージング作品は「ゴジラ‐1.0」)。東京映画祭は、今年の映画をある意味代表するような2本を最初と最後で上映していたことになる。

この映画素晴らしすぎて、余韻が残っている。映画に「動」と「静」の映画があるとすれば、まさに後者。単調なように見える生活の一端を繰り返し見ることになるので、ストーリーを求める観客には退屈に思われるかもしれない。(余談だが、劇場で上映中に、席を立って、しばらくしてコーヒーを買って戻ってきた客もいた。笑)。

ことし観た映画のMyTOP3とします(笑)

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トイレ清掃員の日常を、日本独特と言われる「木漏れ日」や東京スカイツリーを常に背景にしながら、毎日ルーティーンの仕事をこなす清掃員を役所広司が絶妙に演じている(演じるというよりも、そのもの。笑)。

主人公の平山(役所広司)の、朝起きてからの行動が実にリアル。趣味は、文庫本などの読書と、寺などで断って手に入れた植木の水やり、車で聴く洋楽(カセットテープ)など。

背景に流れる音楽がすばらしいが、有名な洋楽の1曲(懐かしい!ネタバレになるので伏せます。と言いながら楽曲のリストを下に掲載)が前半ですぐに流れるが、その曲を、日本の大物女性歌手が日本語で歌うシーンも登場する。しびれるしかない。

平山の車にたまたま助手席に座ることになる姪や、職場の後輩の彼女ら若い世代には、カセットの差し込み方もわからないというのが時代を感じさせる。電話もガラケー、カメラもフイルム式、家ではラジカセ…。

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東京スカイツリーが背景に見える下町の古い2階建てアパートの一室で目覚めると、口ひげを蓄えた中年の男、平山(役所広司)は、自ら寝ていた布団をたたみ、部屋の隅に片付ける。歯を磨き、髭を整え、育てている植物にスプレーで水をやり、仕事用のつなぎに着替える。

いつも玄関わきの同じ場所に置いてある携帯(ガラケー)、財布、車のキーと小銭をつかみ部屋を出ると、アパートのすぐ前にある自動販売機で缶コーヒーを購入し、駐車してある軽自動車に乗り込む。平山の仕事は、公衆トイレの清掃員だ。

まだ朝は早い。清掃道具を積み込んだ車のハンドルを握りながら、男は古いカセットテープを取り出し、車内に音楽を流す。

曲は昔のヒット曲、アニマルズの「朝日のあたる家」だ。連絡用の携帯はガラケーで、いつもフィルムカメラを持参している。

仕事先のトイレ掃除は、プロそのもので、便座の裏はもちろん、見えにくいところは手鏡を使って丁寧に拭いていく。昼休み時には、コンビニで買ったサンドイッチを食べ、木漏れ日をフイルムカメラ(オリンパス製)でフイルムに収めて、行きつけの写真現像所に持っていき、合わせて紙焼きになった写真を受け取る。

写真を選別して、ボックスに入れるが、アパートの押し入れの中には、写真が年月ごとのボックスに収められている。仕事と同様、几帳面さが表れている。

 

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一日の掃除を終えると夕方にはアパートに戻る。自転車に乗り換えて銭湯へゆき、いつもの地下の居酒屋でいつものメニューを頼み、そして寝落ちするまで本を読む。そしてまた近所のおばさんの竹ぼうきの音で目をさます。男の人生は木のようだった。いつも同じ場所にいて動かない。

毎日が同じルーティーンのように見えるが、平山にとっては日常のほんの些細な事、銭湯や飲み屋、バーなど他人との関わりは何一つ同じではなく新鮮なのだった。

ラストシーンの平山の車を運転する表情は複雑に変化し、凄みもある。その意味するところとは…。

ヴェンダース監督が選曲したという楽曲は以下の通り。

主人公・平山がどのようにして清掃をすることになったのか、過去に何かしらあったのか、などはほとんど語られていない。妹が登場して、妹の娘が家出をして平山のもとに何日か滞在するが、父親との確執があるのか、認知症気味だと妹から言われても、そうかという程度。

平山は、外に出る度に、空を見上げるが、ささやかであっても、新しい事が起きる期待感をもちながら、毎日を過ごしている。

そして、毎日、同じルーティンで過ごしている。同じ映像を三度、四度と観客に見せつける。同じルーティンであっても、ささやかな出来事が更に愛しく感じ、平山の精神バランスの均衡を保っているようにも見える。

【主な登場人物】
■平山:役所広司…他人との関わりを避けているようで無口で几帳面。古いアパートに住み、仕事は清掃員。趣味は読書(幸田文の「木」、パトリシア・ハイスミスなど)、植木の手入れ、写真(フイルムで木々を撮影)、音楽(洋楽)。本棚は文庫本と、音楽カセットで埋め尽くされている。時々、白黒で不安な夢を見る。

■タカシ:柄本時生…平山のトイレ掃除の後輩仲間。かなりチャラくテキトーな人間。彼女の気を引こうと懸命だが、先立つもの(お金)がなく、平山の古いカセットを売って稼ぎたい腹。突然、仕事を辞めると言い出す。
■ニコ:中野有紗…平山の妹の娘。母親との関係が良くない様子。家出するなら叔父のところと決めていたという。ハキハキした現代っ子
■アヤ:アオイヤマダガールズバーで働くタカシの金髪のガールフレンド。平山の洋楽の一部のカセットに興味を持ち、持ち去ってしまうがその後返却。車でもう一度聴く。
■ケイコ:麻生祐未…平山の妹。ニコの母。お抱えの運転手がいて高級車(レクサス)を利用していることから上流階級のマダムの雰囲気。しばらくぶりに兄に会い「本当に掃除をしているのね。悪い意味でなく」というが、住む世界が違うといった目で見ている。

■バーのママ:石川さゆり…小さなバーのママ。バツ1で独身。平山は、6年も店に通っている。他の常連客は、ママと平山が親しそうなので嫉妬している様子。

■友山:三浦友和…居酒屋の女将の元夫。7年前に離婚。病気を患っていて、最後と思い元妻に会いに来る。平山に会い、自分がいなくなった後、女将をよろしく、と頼むが、平山は「そんなんじゃないです」と繰り返し否定するが…。

■街を徘徊する老人:田中泯…不思議なホームレス風の老人で派手な身なりで街を徘徊している。

■タカシの後任、佐藤:安藤玉枝…タカシの辞めた後派遣されてきた清掃員。

■居酒屋の店主:甲本雅裕…浅草駅の出口に近い地下連絡通路にある居酒屋。平山が来ると、決まったセリフとポーズで迎える。

■古本屋の店主:犬山イヌコ:平山の行きつけの古本屋で、平山が購入する本(パトリシア・ハイスミスの本など)について、いちいち独り言のように説明する。

■居酒屋の客:モロ師岡:平山が行きつけの店の常連客。

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ことしの1本を決めるとすればこの作品かもしれない。

 

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