「ドント・ルック・アップ」(原題:Don't Look Up、2021)を見る(Netflix)。彗星が地球に衝突すると警告する2人の天文学者とそれを扱うメディアの姿をSFブラックコメディで描く。原題は「空は見るな!」の意味で、彗星がやってくるという天文学者の意見を否定する大統領の言葉。
「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(2015)「バイス」(2019)のアダム・マッケイが脚本・共同製作・監督を務め、レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、メリル・ストリープ、ケイト・ブランシェットなど豪華アカデミー賞スターが出演。今年のアカデミー賞レースでも話題の1作。
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天文学者ランドール・ミンディ博士(レオナルド・ディカプリオ)と教え子の院生ケイト(ジェニファー・ローレンス)が地球に向かう巨大彗星を発見する。
衝突は6ヶ月と14日後に、人類はもちろん、地球上の生物がすべて死滅してしまうほどのインパクトだと知った2人は、ホワイトハウスに慌てて進言する。
しかし、支持率を気にした大統領(メリル・ストリープ)から返って来た言葉は「静観し、精査する」とまったく取り合ってくれない。
憤った2人は今度はメディアに駆け込み、人気TVショーに出演。ここでも視聴率重視のTVでの関心事は、人気ポップスター(アリアナ・グランデ)の恋愛事情などゴシップやSNSフェイクニュースばかりだった。
2人が地球が危機にあると広く国民に訴えようとするが、思わず感情的になってしまったケイトは、SNSで嘲笑を浴びることになる。
科学に基づいた警告よりも目の前の支持率や娯楽を優先してしまう世間の反応や、女性が感情をあらわにした部分だけを切り取って「ヒステリック」だと揶揄するというSNSの反応。
大統領は彗星に核をぶつけて軌道を変えようというプロジェクトを(もちろん支持率のために)決断。ところが、実行の直前で地球に向かってくる彗星に30兆ドル相当のレアアースが存在していることを知った大企業の大富豪から「待った」がかかる。地球に衝突する直前に爆破して彗星を分割し、貴重な資源を入手しようというのだ。
こうして、事態は思わぬ方向に転がり始める…。
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メリル・ストリープ演じる大統領の執務室には、ビル・クリントンやロナルド・レーガンなど元大統領の写真があった。
大統領の補佐官は大統領の息子ジェイソンで、大統領が彗星にようやく関心を示したのは、自身のスキャンダルをマスコミの目からそらすためという皮肉。
彗星の軌道を変更させるために打ち上げられたスペースシャトルだったが、彗星にレアメタルがあることから、スペースシャトルを帰還させてしまうというとんでもない事態に。地球の運命やいかに…という展開。
【ネタバレ】大統領や実業家など一部は、冷凍カプセルに乗って脱出。2万数千年後にある惑星(地球)に不時着。
全員が全裸で降りると、そこには美しい生き物がいて、原始化したシーン。脳内がお花畑の権力者が、無知ゆえに得体の知れないものに、むやみに近づき最期を迎えるという皮肉。
大統領はくちばしのある鳥に食いちぎられてしまう。SFファンタジックな結末だが、彗星を気象変動になぞらえていると言われており、ギャグやブラックが笑えないというのも事実のようだ。
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