「ファーザー」(原題:The Father、2020)は第93回アカデミー賞で脚色賞と主演男優賞(アンソニー・ホプキンス)を獲得。Netflixが配信を開始したので見た。監督はフローリアン・ゼレール、本作はゼレールが2012年に発表した戯曲「Le Père 父」であり、映画監督デビュー作でもある。
批評家から絶賛され、特にホプキンスの演技に対して惜しみない賞賛が送られているというが、認知症を発症したホプキンスの演技は、これ以上ないなりきりそのもの。
認知症を抱える家族の苦悩などをシリアスに描いている。共演は「女王陛下のお気に入り」のオリヴィア・コールマンなど
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アン(オリヴィア・コールマン)は80歳になった父親、アンソニー(アンソニー・ホプキンス)に認知症の兆候が見え始めたのを心配していた。
アンソニーにヘルパーを付けようとしたアンだったが、気難しいアンソニーは難癖を付けてはヘルパーを追い出す始末だった。
しかし、アンソニーの病状は悪化の一途を辿り、記憶が失われていくだけではなく、自らが置かれた状況すら把握できなくなっていった。
困惑するばかりのアンソニーは苛立ちを募らせ、アンに当たることもあった。アンはそんな父親を懸命に支えていたが、気力と体力は消耗するばかりであった。
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父アンソニーを演じたアンソニー・ホプキンスが圧巻。薄れていく記憶だけでなく、ダンスを踊ったり、突然猜疑心を現したりする中で、現実と夢や妄想が入り乱れるので、あれあれとやや戸惑うが、画面には引き込まれる。
娘アンは、パリに行くと行ったり、父のもとに留まると言ったり、両方のシーンが登場し、主人公のアンソニーと同様に観る側も翻弄される。
ちなみに主人公の名前が俳優と同じアンソニーで、医師が、アンソニーに「生年月日は?」と聞くシーンで1937年12月31日と答えているが、これもアンソニー・ホプキンスの生年月日だ。
ホプキンスは「羊たちの沈黙」に続く二度目のアカデミー主演男優賞を受賞し、同部門における最年長受賞者となった。
映画初出演となった「冬のライオン」(1968)では、ピーター・オトゥールやキャサリン・ヘプバーンと共に堂々たる演技を見せ、鮮烈なデビューを果たした。「羊たちの沈黙」で演じたハンニバル・レクター博士役が強烈だが、「エレファントマン」「日の名残り」「ニクソン」「2人のローマ教皇」などが印象に残る。
フロリアン・ゼレール監督作「ファーザー」の続編「ザ・サン」にも出演している。この映画では、ヒュー・ジャックマン、ローラ・ダーン、ヴァネッサ・カービーといった豪華キャストが出演で話題になりそうだ。