「フォルトゥナの瞳」(2019)を見る。監督は「ソラニン」「僕等がいた」などの三木孝浩。原作は「永遠の0」「海賊と呼ばれた男」の百田尚樹。
主演は神木隆之介と有村架純。タイトルの「フォルトゥナ」は、ローマ神話に伝えられる運命の女神、フォルトゥーナ(Fortuna)に由来する。英語の「Fortune(運)」の語源とされる。
「運命が見える男と“死の運命”に導かれる女性が織りなす、心震えるラブストーリー」というのがこの映画の謳い文句だが、死の運命の人々を救おうとすると、自分自身が死ぬという運命になるという、いわばトレードオフの関係に悩まされる主人公の苦悩などを描いている。
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他人の死が見えてしまうという不思議な力を持ってしまった青年、木山慎一郎(神木隆之介)は、幼少期に飛行機事故で家族を失い、友人も恋人もなく仕事にのみ生きてきた。
しかし、慎一郎が「死を目前にした人間が透けて見える能力」=「フォルトゥナの瞳」を持っていることに気づいてしまったことから、生活が一変。なぜこのような力を持ってしまったのかを自問自答する苦悩の日々が続く。
そんな日々の中で慎一郎は、ガラケーを修理しようと携帯ショップを訪れると、そこで、桐生葵(きりゅうあおい、有村架純)という女性に出会い、互いに惹かれあい、2人は幸せな日々を過ごす。慎一郎の孤独な人生に彩りを与えてくれた葵という存在。しかし、葵の身体が突然透け始めてしまう。
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冒頭、20年前の長野県の飛行機事故(明らかに1985年の日航ジャンボ機墜落事故)で、4,5歳くらいの少年がかろうじて生き残る。破片の下で助けを求める痛々しそうな少女が見える。この少年が、のちに出会った葵に飛行機事故で両親を亡くした」というと、葵は「わかる。私もそこにいたから」と、助けを求めていた少女こそ葵だった。
人間は一日に9,000回も選択をしながら生きているという。慎一郎は、物事を決められないと思い込んで生きてきたが、葵に「ガラケーを使いたいというのも、立派な選択ですよ」と言われ「フォルトゥナの瞳」で、究極の選択を迫られた時に慎一郎が選択した結論とは・・・。
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手など体の一部が透けて見えると、その人物は、そのままでは必ず何らかの理由で死に至るということを知ってしまった慎一郎だが、慎一郎が診察を受けた主治医(北村有起哉)も「フォルトゥナの瞳」の能力を持っていた!
主治医の考えは、他人の人生に関わるなだった。しかし、慎一郎の取った行動は、自身が犠牲になっても、葵やほかの人たちを助けたいという選択を取った。
主な登場人物:
■木山慎一郎(神木隆之介)
事故で家族を失って以降、仕事ひと筋に生きてきた青年。ある日、死ぬ直前の人間が透けて見える「フォルトゥナの瞳」を手に入れてしまう。自動車整備会社の社員。社長夫妻が親代わりのように目をかけている。
■桐生葵(有村架純)
初めて慎一郎が愛した女性。「フォルトゥナの瞳」を手に入れたことで苦しむ慎一郎の心の支えとなる。携帯ショップの店員。
■金田大輝(志尊淳)
慎一郎が勤務する「GARAGE ENDO」に勤める青年。仕事はできるが、社長に気に入られている慎一郎を快く思っていない。
■宇津井和幸(ウィッシュのほうのDAIGO)
「GARAGE ENDO」の常連客。高級車フェラーリを乗り回す。修理工を見下す横柄な態度の男で、居眠り運転事故で亡くなる。
■植松真理子(松井愛莉)
かつて「GARAGE ENDO」に勤めていた慎一郎の同僚。慎一郎に好意を抱いていたが、慎一郎が煮え切らないので、別の男とあてつけにドライブしたりして、その後は風俗で働いているといううわさ。
■黒川武雄(北村有起哉)
慎一郎の主治医。「フォルトゥナの瞳」を手に入れてしまった慎一郎に助言をする。自身も「フォルトゥナの瞳」の力を持つが、一切関わらないと決めている。
■遠藤美津子(斉藤由貴)
自動車修理会社の社長・遠藤哲也の妻。慎一郎を陰ながら見守る。
■遠藤哲也(時任三郎)
慎一郎と金田が勤務する「GARAGE ENDO」の社長。仕事ひと筋に生きようとする慎一郎を気遣う。2号店を立ち上げ、慎一郎を店長にする。
原作者の百田尚樹はいかつい風貌で、ときどき問題発言で話題になり硬派の印象だが、今回は意外にもラブストーリー。
慎一郎が、カフェで葵に対して、ほかの客にも聞こえるような声で「僕と付き合ってください」というと、まわりの客は一瞬成り行きに注目。葵は、場を移すため、そそくさと表に出る。追いかけた慎一郎が「さっきは恥ずかしい思いをさせてごめんなさい」と謝ると、葵は満面の笑みを浮かべて振り返り「さっきの答えは、ハイです」と告げるのだった。
先の運命や寿命が見えてしまうという力も善し悪し(宝くじが的中するというのは別だが。笑)。
幼稚園児が、来るイベントに参加するために乗る電車で事故に遭うとわかった慎一郎が、幼稚園に電話をすると、園では、不審者扱いされ、警察に追われることになる。
ところが、現実に園児たちを乗せた列車が、ある事故に巻き込まれる寸前に、慎一郎が体を張って食い止めるのだった。
慎一郎は人の運命を変えてしまった代償で死んでしまう。その後、葵もフォルトナの瞳を持っており、慎一郎が人の運命を変えて死なないように自ら電車に乗ったことが明らかになるのだった。