「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」(2008)を見る。監督はデビュー作の「アメリカン・ビューティ」(1999)でいきなりアカデミー賞監督賞を受賞したサム・メンデス。最近では「1917 命をかけた伝令」(2019)が記憶に新しい。
「タイタニック」(1997)のレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットが夫婦役で再共演を果たした。「タイタニック」に出演していたキャシー・ベイツも共演している。「タイタニック」のような悲恋や恋愛ものを想像すると肩透かしを食らう、夫婦間の激しいののしり合いなど、現実の結婚生活の厳しい現実を描いている。
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舞台は1955年のアメリカ。30歳になる元陸軍兵のフランク・ウィーラー(レオナルド・ディカプリオ)とエイプリル(ケイト・ウインスレット)は結婚して、すでに2人の子供にも恵まれ幸せに暮らしていた。
ニューヨーク郊外のコネチカット州にある「レボリューショナリー・ロード」と呼ばれる通りに面した庭付きの一軒家に住み、都会の大企業へは電車通勤、週末はリゾートへの小旅行だ。
そんな生活は、いってみれば戦後のアメリカが黄金期を謳歌していた時代の体現者といえるものだ。
だが、2人はそんな暮らしにどこか閉塞感を抱いていた。絵に描いたような「幸福な家族」の崩壊は間近に迫っていた。
エイプリルは俳優志望だったが才能に恵まれなかった。フランクと結婚して2児を儲け、主婦業に専念しようとしていた。
一方、フランクは、かつて父親が働いていた会社で、生き甲斐を見いだせずにいた。フランクは30歳の誕生日に、職場の秘書のモーリーン(ゾーイ・カザン)に自分が平凡な人生を歩んでいることへの不満を漏らし、浮気をする。帰宅すると、待ち受けていた家族が彼の誕生日を祝う。
ある日、エイプリルは、結婚当初にフランクが憧れていたパリでの生活が、フランクの人生を意味あるものにすると考えた。
自分が諦めた人生の生き甲斐を、夫に追求してもらうべく、そこに生き甲斐を見出そうとした。
フランクもエイプリルの計画に賛同し、両者は、この点で意見の一致を見た。しかし、不運にも、エイプリルは妊娠してしまい、計画は御破算になった。
フランクに自分の人生をやり直させようとしたエイプリルにとって、計画通りに事が運ばないことは、自分の人生の終わりを意味していた。
出世という平凡な幸運に引き寄せられるフランクの子供を産み育てることにも意味を見出せなかった。
何か別の生き方・価値観を模索するエイプリルと、そうではないフランクとの間には、決定的な溝があった。
エイプリルには、自らの手で堕胎する道しか残っていなかった。エイプリルは出血多量で死亡し、フランクは2児を連れて「レボリューショナリー・ロード」を去り、ニューヨークに居を移した。
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近隣に住んでいて、白いコンパクトだがいい家があると紹介してくれたヘレン・ギヴィングス夫人(キャシー・ベイツ)の息子が、精神的に病んでいるのだが、あるときウィーラー家にやってきて、一家の問題点をぶしつけにも指摘するところが凄い。フランクにしてみれば「大きなお世話だ。偉そうにいうな」だが、ある意味、本質をついてくるところがあって怖い。
いいたい放題の精神を患っているマイケル・ウィーラーに対して怒りを爆発。
この映画は、ディカプリオとウインスレットの激しいののしり合いがすさまじい。ディカプリオなどの表情は、怒り狂いエキセントリックになったジャック・ニコルソンと二重写しとなる(笑)。
原作は、1950年代末のアメリカの郊外生活を題材としたリチャード・イェーツの1961年出版の小説「家族の終わりに」。夫婦関係が形ばかりで、現実には愛がないのではないかと話題になったという。
ディカプリオとケイト・ウインスレットの夫婦のバトルがすさまじいが、実際にアメリカでは、1960年代、70年代夫婦の半分は離婚したという。
似たような夫婦バトルはマイケル・ダグラスとキャスリーン・ターナーの「ローズ家の戦争」(1989)があり、手元にあるモノを投げ合うすさまじさで、まさに”戦争”だった(笑)。
この映画のラストはゾっとさせられる。
ウィーラー夫婦に一軒家を紹介したギヴィングス夫妻が、ウィーラー一家の後に越してきた家族にまたおせっかいを焼いているのだ。ギヴィングス夫人が夫に「今度の家族はウィーラーとは違うかもしれない」と語っているのだが、聞いている夫の表情が全く動かない。息をしていないのだ。
■主な出演者:
フランク・ウィーラー:レオナルド・ディカプリオ(サラリーマン)
エイプリル・ウィーラー:ケイト・ウィンスレット(フランクの妻)
ヘレン・ギヴィングス夫人:キャシー・ベイツ(ウィーラーに戸建てを紹介)
ジョン・ギヴィングス:マイケル・シャノン(ヘレンの夫)
ミリー・キャンベル:キャスリン・ハーン
シェップ・キャンベル:デヴィッド・ハーバー
ジェニファー・ウィーラー :ライアン・シンプキンス(フランクの娘)
マイケル・ウィーラー :タイ・シンプキンス(フランクの息子)
ジャック・オードウェイ:ディラン・ベイカー
バート・ポラック:ジェイ・O・サンダース
ハワード・ギヴィングス:リチャード・イーストン(ヘレンの息子)
モーリーン・グラブ :ゾーイ・カザン(フランクの秘書)