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★エンタメ巨大帝国”ディズニー”CEOの本を読んでみた。感動。

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ことし4月に発刊された「ディズニーCEOが実践する10の原則」(早川書房、本体2,100円+税)を読んだ。アメリカの3大ネットワークの一つ、ABCテレビに24歳で雑用係として入社した男が、エンターテイメント業界の”ディズニー王国”のCEOに上り詰めるまでが「第1部」で、後半の「第2部」では、トップとして、いかに成長のかじ取りをしてきたかが、ドラマチックに描かれ、まるで映像ドラマを見ているような感動に打ちのめされた。

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著者はディズニーCEO兼会長のロバート・アイガーその人で、回顧録というよりも、自身の経験してきたことを時系列に紹介して、経営者やチームでの進め方などの参考のために書き下ろしたという。一見すると、ビジネス書だが、映画界、特にハリウッドのスタジオの買収劇などがスリリングで面白かった。

ロバート・アイガーは2019年秋にディズニーのすべての役職から引退する予定だったが、ある事情で、会長職は2021年末まで、CEO職は今年1月で退任した。「ある事情」というのは、アメリカのメディア王ルパート・マードックから「21世紀フォックス」(旧20世紀フォックス)を買収するためにはアイガーがディズニーに残っていることが条件だったからだ。

ロバート・アイガーがCEOに就任してからの手腕は、半端ではない。10項目の中の一つである「誠実であること」や「好奇心を持つこと」「勇気を持つこと」などが実践されている。

アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズが「ピクサー」を起こして大成功。スティーブ・アイガーの前任のCEOで、ディズニー第二の創業者ともいわれたマイケル・アイズナーとスティーブ・ジョブズの確執があって関係は最悪だった。そんななか、アイガーは、気難しいとされるジョブズの懐に飛び込み、ディズニーのなかにピクサーが入ることでのメリット、デメリットを包み隠さず熱心に何度も何度も協議を重ねた。ジョブズは、大きな白板に、デメリットを思いつく限り並べたが、ジョブズは、実はがんに冒されていた状態だった。ジョブズは妻以外には伝えていなかったが、無二の親友となっていたアイガーには伝えたのだ。

株主優先のアメリカで、株主を説得できるのか、ピクサーで手腕を発揮しているクリエイターの不安をどうするのかなどの難題を辛抱強く一つ一つ解決して行くプロセスも面白い。

ピクサーを買収して、ディズニーアニメは復調。

その後は、あの「スター・ウォーズ」の生みの親ジョージ・ルーカスの「ルーカス・フィルム」の買収交渉だ。ルーカスにしてみれば、自分のわが子のようなスター・ウォーズを他の会社に売却するなどとんでもない、と思うところだったが、ルーカス・フィルムの遺産を引き継ぐナンバー・ツーがいなかったので、ディズニーが「スター・ウォーズ」の遺産を継承すると確約したのだ。

ピクサー」の成功を見ていたジョージ・ルーカスから数か月後に電話があり「ピクサー」のようにしてほしいと承諾があった。

ディズニー傘下で生まれたSWの第1作が「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」だった。ルーカスは、この作品自体は評価しなかったようだ。ただ、興行的には大成功を収め、その後もシリーズが製作されている。

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上:スティーブ・ジョブズと。下:ジョージ・ルーカスと。

ピクサー」「ルーカス」と買収に成功したディズニーが次に候補に挙げたのは、なんと「マーベル」だった。「アイアンマン」シリーズで大ヒットを飛ばし、アメコミのキャラクターの中から様々なヒーローを映画化できる「マーベル」の説得には、苦難が伴った。「ファミリ向けー映画」のイメージが損なわれる、など株主の反発もあったし、「マーベル」の所有者が、イスラエル系のアメリカ人であり、その交渉が一筋縄ではいかなかった。

アイガーは「マーベル」買収は、これまでにないリスクもあることを承知していたが、株主を説得し、必ず成功に導くと約束した。買収後、世に送り出したのが「ブラック・パンサー」だった。黒人が主役で、これまでには考えられない作品だったが、これが空前の大ヒットとなったのである。

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「ブラック・パンサー」主演(チャドウィック・ボーズマン)と。

アイガーは、その後、ついに「20世紀フォックス」(現21世紀フォックス)をメディア王マードックから買収することに成功した。

動画配信では、Netflixが加入者数でトップだが「HULU」の大株主であり、独自の「ディズニー・プラス」による配信サービスを開始した。少し前に、「ツイッター」の買収も考えたという。ツイッターの場合は、誹謗中傷などもあり、ディズニーの社風にマッチしないと却下されたという。

裏話だが、2019年秋にディズニーを引退すると決めていたのは「ディズニー後」の身の振り方に関係していたようだ。「20世紀フォックス」の買収条件もあるが、実は、アメリカ大統領選の民主党の候補の一人に挙がっていたようだ。ルパート・マードックの家に話があると呼ばれてアイガーが行くと、マードックは開口一番「大統領選には出るのか?」だった。

アイガーは、やはり「そうきたか」と思ったというが、本心は隠し「ないですね。」だった。妻のウィローの反対もあると付け加えた。妻に話したところ「どうぞ、出るならご勝手に。出るときは、ほかの奥さんとどうぞ」だった。(ただし、これは半分冗談で、アイガーが本気なら、ついていくような意思表示だったようだ)

 

・・・

アメリカの映画産業は1950年代にテレビの登場で、大きく落ち込んだ。観客動員数では1946年9,000万人、1950年4,000万人、1970年1,700万人と5分の1に縮小。映画=衰退産業だった。各スタジオは生き残りに四苦八苦。ウォルト・ディズニーももっとも苦しい時代。ハリウッドは「俺たちに明日はない」「イージー・ライダー」「スター・ウォーズ」などTVに走り切っていない若者をターゲットにし、新しい市場を開拓。

Disneyは1980年、大手のなかでは極めて小さいポジションだった。しかし、そのDisneyが現在ではなぜ最大手になることができたのか。ロバート・アイガーの本を読むと、奇跡のようなストーリーがちりばめられていた。

ディズニー・カンパニーは、2018年Forbs誌の「ベストワン」企業に選ばれた。

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【ディズニーの主な事業】

(1)「コンテンツ」

①「映画」・・・ウォルト・ディズニー・アニメーション、ディズニー・スタジオ、ピクサー、マーベル、ルーカスフィルム20世紀フォックス、フォックス2000、フォックス・サーチライト。

②「テレビ」・・・ABC、ABCニュース、地方局、ディズニーチャンネル、フリーフォーム、FX、ナショナル・ジオグラフィック

③スポーツ・チャンネル(ESPN)

(2)「テクノロジー

アプリ、ユーザーインターフェース、データ管理、販売、配信ほか。

(3)その他物理的エンタメとグッズ。

キャラクター・グッズ、ディズニーストア、クルーズ、リゾート、ライセンス契約、6つのテーマパーク。

■資産総額:1,940億ドル(約20兆円)

■従業員数:223,000人(2019年)

 

参考:「中田敦彦YouTube 大学」①②で概要を見られる。

 

www.youtube.com