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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「配達されない三通の手紙」(1979)再見。

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配達されない三通の手紙」(1979)を再見した。一度見ているが内容は忘れていた。エラリー・クイーン推理小説災厄の町」(Calamity Town)を野村芳太郎監督が映画化、新藤兼人が脚本を執筆。監督/野村芳太郎・音楽/芥川也寸志・カメラ/川又昂は「砂の器」(1974)の黄金コンビ。

原作の舞台・アメリカを山口県萩市に移し替え、地方の上流家庭の美しい3人姉妹の葛藤から恐ろしい殺人事件が起こるという設定に変更。映画業界では、翻訳物は成功しないといわれていたが、新藤と野村は「そのジンクスを破ってみせる」と話したという。山口県萩市の名家を舞台として展開される「犯人捜し」のスリルとサスペンスが見所。”配達されない”三通の手紙とは…?

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物語は、次女・紀子(栗原小巻)の婚約者・藤村敏行(片岡孝夫)が、結婚式を前に蒸発して3年たったある日、突然もどってきた場面からはじまる。

同じ頃、アメリカの大学生、ボブ・フジモト(蟇目)は日本文化研究のため、シカゴから東京経由で祖母の生まれ故郷・山口県萩(はぎ)へやってきた。ボブと末娘・恵子(神崎愛)は友人で、ボブは彼女の家に居候することになった。恵子は、父がきめた許婚・峰岸(渡瀬恒彦)がいるが、結婚にはまだ興味がない。

恵子の父は、長門銀行の頭取・唐沢光政(佐分利信)で、萩の名家の出身。裕福な銀行家には、妻のすみ江(乙羽信子)と恵子を含む三人の娘がいた。ボブは離れの部屋に案内されたが、そこは立派な一軒家で「どうしてだれも住んでいない」と恵子に聞いた。

そのワケは、3年前、紀子の結婚相手・藤村敏行(片岡孝夫/現・片岡仁左衛門)が式が迫った直前に突然蒸発したということだった。 父が新居も銀行員のポストも用意したが、もともと、父には不本意な相手だった。末娘である恵子は好奇心旺盛であるが、健康的で姉思いの娘で、神経質な姉・紀子をいつも気遣っていた。

ある日、突然、藤村敏行(片岡孝夫)が帰ってきて、長女の姉・麗子(小川真 由美)の店から電話をかけてきた。話し合った紀子と敏行の二人は改めて結婚式をするという。

当然、父は怒り狂ったが、紀子の懸命な懇願に負け結婚を許した。ただし2つの条件を出した。それは、①唐沢家の敷地内に紀子ら夫婦のために新築していた家に住むこと、②敏行が長門銀行に勤めること、だった。2人の結婚を認め、盛大な結婚式まで催した。長女の麗子は、8年前に男と駆け落ち状態で家を出ていて、その一年後に捨てられて、バーを経営しているが、いまだに勘当状態で、出入り禁止。

新婚旅行先から、姉や妹たちに送られて来た絵葉書はふたりが幸せの絶頂にあることを思わせるものであった。敏行にはどこか秘密めいたところがあり、気弱な面もあったが、おおらかなこの家の母・すみ江は、紀子の夫となってからも彼にやさしく接した。

ある日、敏行の妹と名乗る智子(松坂慶子)が訪ねてきた。 「こんな妹さんがいるなんて知らなかったわ。どうして結婚式に呼ばなかったの」と母・は聞いた。いろいろ事情もありましてと答える敏行だったが…。 

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智子(松坂慶子)が唐沢家に現れてから、様々な騒動が勃発する。自由奔放で、ズケズケとしたものいいをする、名家には似つかわしくない、いわばトラブルメーカーのような存在だった。

次女・紀子(栗原小巻)が、空いた部屋を片付け本箱の移動など整理をしていると、ある本の間から宛名が「妹へ」と書かれた3通の手紙がでてきた。その手紙を読んだ紀子は、青ざめるのだった。それを遠くから見ていた恵子(神崎愛)とボブは、ただならぬ状況を察する。「あの手紙を探さなくては…」。惠子とボブが探偵となって、紀子の部屋を捜索する。そして、ついに手紙を発見するのだが、その手紙の中身は驚愕の内容だった・・・。

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3年前に婚約者のもとを去ったのはなぜか。これが最大の謎。

書籍の間に挟まっていた「三通の手紙」は何のために、誰が書いたのか。敏行と妹と名乗る智子の関係は。複数のナゾが徐々に明かされていく…。

松坂慶子は、前年(1978年)の「事件」で清純派から脱皮し注目され「配達されない三通の手紙」では、後ろ姿で全裸を見せる体当たり演技をみせ、トップ女優に躍り出た。同年放送のテレビドラマ水中花」に主演し、妖艶なバニーガール姿を披露。自身が歌唱したシングル曲・主題歌の「愛の水中花」も大ヒットした。

その後、代表作となる「蒲田行進曲」「火宅の人」などに出演した。

 そういえば1980年ごろ「好きな女優は?」と聞かれたfpdは、「松坂慶子」と答えていたような(爆)(←誰も聞いていない)。

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唐沢家の夕食に加わる智子(松坂慶子)は、ビヤホールに勤めていたことがあり「ビールなんて水のようなもの」と言うほどの酒飲み。唐沢家の当主である光政(佐分利信)は「水のようなものか」と苦笑いする。お嬢様育ちの紀子(栗原小巻)などとは対照的な奔放さだ。この紀子は、自分の夫・敏行(片岡孝夫)と妹だという智子が、浴室で戯れているところを目撃してしまうのだ(怖っ)。

前半が説明的すぎてだらだら感がある。終盤はサスペンスタッチで、火曜サスペンスの劇場版といった印象。人気女優・俳優の小川真由美渡瀬恒彦などがせっかく登場するのに印象が薄い。

 

監督:野村芳太郎

製作:野村芳太郎、織田明、田中康義

脚本:新藤兼人

原作:エラリー・クイーン(「災厄の町」より)

撮影:川又昂

音楽:芥川也寸志

 

主な出演者:

唐沢光政/佐分利信

唐沢すみ江(妻)/乙羽信子

唐沢麗子(長女)/小川真由美

唐沢紀子(次女)/栗原小巻

唐沢恵子(三女)/神崎愛

藤村敏行/片岡孝夫

藤村智子/松坂慶子

ロバート・フジクラ(ボブ)/蟇目

大川美穂子/竹下景子

峰岸検事/渡瀬恒彦

牛山博士/小沢栄太郎

柏原署長/滝田裕介

橋山判事/稲葉義男

橋山夫人/中村美代子

吉川警部/蟹江敬三

招待客/武内亨

漁港の女/久保まづるか

ビアガーデンの男/石山雄大

試験所の職員/舛田紀子

松竹配給・1979年・日本映画・131分