アラン・レネ監督の「去年マリエンバートで」(1960)を見た。池袋・新文芸坐で。1961年ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞(最高賞)を受賞。劇中でもオリジナルデザインの衣装を提供した仏ファッションブランド「シャネル」のサポートにより完全修復版が2019年10月より全国公開され、このほど新文芸坐で公開されるというので見に行った。
全く予備知識なしで見たのだが、ストーリーの理解に面食らった。それもそのはずで、この映画は、映画史上もっとも難解な映画ということが後から分かった。”早く言ってよ!”(笑)。
簡単なあらすじ:
Xというイケメン男が「あなたと去年マリエンバートで出会い、1年後に駆け落ちの約束をしたので、迎えに来ました。」とAという女性に告げる。ところが、AにはMという夫がいて、そんな約束のことは知らないという。
そこでXは1年前の出来事を詳細にAに伝え、何とか駆け落ちしてもらえるように説得する。一見、単純そうに見えるが、あるシーンとシーンが脈絡なく現れる。Aが振り向くと衣装が違っていたり、わけがわからない。
時系列も今どのあたりかわからない。まさに混乱した状態で90分が過ぎていく。カメラの動きやアングルは同じで背景だけが違っていくという奇妙さがある。
Xの話を聞かされるうちにAの記憶は徐々に変容していく。その過程と平行し、もう一人の主要登場人物、常に冷静で表情を変えない寡黙な男Mは真相を知っているかのような振る舞いを見せる。そして物語が進行するにつれMの記憶こそが客観的事実に近いのではないかと鑑賞者は感じはじめる。
最後に女Aがすごい形相で、何度も何度もクローズアップされる怖さ。
ニセの言葉を何度も刷り込まれていくと、Aは、最後に「そうですね」という怖さ(笑)。
理解に苦しむ映画だが、モノクロ映画で、4Kデジタル修復版は見ごたえがある。ただ、繰り返しになるが途中で眠気を催さずに最後まで見続けた人は尊敬に値する(笑)。
途中で”必ず”睡魔に襲われるほどの内容で、疲れているときなどに見たら熟睡ものかも知れない。というわけで、2本立て併映の「勝手にしやがれ」(一度見ている)は見ずに劇場を後にした。