「聖(さとし)の青春」(2016)を見た。
1998年8月8日に29歳の若さで亡くなった棋士、村山聖の生涯・生き様を描いている。松山ケンイチ主演の人間ドラマで、病と戦いながら、将棋に全人生をかけ、全力で生きた村山の一生を、師弟愛、家族愛、ライバルとの友情とともに描く。
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1994年、七段になった聖は将棋界最高峰のタイトル「名人」を狙い、森師匠のもとを離れ上京しようとする。家族や仲間は反対する中、将棋にかける聖の情熱を見てきた森師匠は、彼の背中を押す。
東京で荒れた生活をする聖に皆あきれるものの、聖の思いを理解し陰ながら支えていく。前人未到の七冠を達成した同世代のライバル・羽生善治を猛烈に意識する一方で憧憬も抱く聖。名人位獲得のため一層将棋に没頭し、快進撃を続けていくが、彼の体をガンが蝕んでいた。それでも医者の制止を聞かず、聖は将棋を指し続ける(MovieWalker)。
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村山聖の人物像、生き様が見事に描かれたいた。病(膀胱炎からステージ3Bの腫瘍)があり、医者からの再検査の連絡も無視していたが、医者から、手術をしなければ、持って3ヶ月、手術をしても1年間は将棋を指せないと宣告される。
村山と羽生との交流、会話がこの映画のキモかもしれない。
七段となった村山は、羽生との将棋で勝つ。村山は羽生に聞く。「なぜ私たちは将棋を始めたんでしょうね」。「あなたに負けたことが一番悔しい」と羽生。「負けたくない?」(村山)。「それが全てだと思います」(羽生)。
村山は続ける。「羽生さんの見える海はみんなと違うでしょう。」羽生は「海の深海が怖い時がある。そこに行ったら、戻ってこれない気がする。ただ、村山さんとだったら大丈夫な気がする。いつか行ってみましょう」と。
村山聖は、とにかく1位にこだわる性格。まわりの棋士たちには「羽生さんを倒さないと意味がない。羽生さんに勝つのは20勝の価値があるんです。将棋は殺し合いなんじゃ」と。アルコール依存症のくらいに酒を飲み、不健康で不衛生な環境で生活している。家の中はぐしゃぐしゃ。
師匠の森信雄(リリー・フランキー)から飲み屋で奢られた時に、いくらだったかと払おうとするが、森が断ると紙幣を破って捨ててしまうという行為に及ぶ。まわりが、やめさせようとすると「死ぬ人間には金なんか意味がない。勝って名人になるんじゃ」だった。
村山聖の食に関するこだわりも強い。「牛丼は吉野家、シュークリームはミニヨン(広島ケーキ)、とんかつはみっちゃん、カツ丼は徳川、でなければ意味がない」と何度も言う。「東京のうどんはまずい」とも。おいおい、それは言い過ぎでは?(笑)。
吉野家・牛丼(左)と、とんかつ・みっちゃん。
シュークリーム・ミ二ヨン
とカツ丼徳川
将棋の駒の動かし方や、駒の特徴、持ち時間などある程度の知識がないと、理解しにくいところがあるかもしれない。持ち時間がなくなると、「1分以内」で指さなければならない。
残り1分になると、30秒・40秒・50秒、1・2・3・4~と声がかかる。追い込まれていく状況となりギリギリ残り数秒のところで、駒を動かす、というのが繰り返される。1手を打つのに2時間、3時間と掛かる一方、最終的には数秒で指していくという圧迫(緊迫)感。
現在の将棋界で”羽生世代”(年齢は40代後半)をリードしている羽生を演じている東出昌大が、時々テレビの対局で見る羽生の表情、癖などを見事に演じているのが印象に残る。村山聖の実物写真を見たが、ソックリで松山ケンイチにとっても代表作の1本になったようだ。
羽生名人本人(左)と東出昌大
聖の母・トミ子: 竹下景子
弟弟子・江川貢:染谷将太
井守鶏三 :遠藤たつお
聖の父・伸一 - 北見敏之
「東京の師匠」として村山を支える将棋連盟の職員・将棋雑誌編集長・橋口(モデルは原作者の大崎自身):筒井道隆
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