映画「64~ロクヨン~」(2016)2部作の前編を見た。MOVIXさいたまにて。
見応えがあった。「後編」への”序章”、嵐の前の静けさといった前編だった。
「ロクヨン」とは、わずか7日間でその幕を閉じた昭和64年、その間に起きた少女誘拐殺人事件の通称。
この何年か映画を「前編」「後編」に分けて上映するスタイルが多くなっている。
昨年は「ソロモンの偽証」などがあった。上映時間が4時間になってしまうなどの長時間化を抑えたり、一番は製作コストの削減、俳優スタッフの確保(再結集はスケジュール調整上などでむずかしい面がある)などがあり、一度に2本分撮影してしまおうということだろう。ただ、前編がコケると、後編も見ないというリスクはある。
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昭和64年(1989年)、1月5日。関東近県で漬物工場を営む雨宮芳男の娘が誘拐される。少女は遺体で発見。昭和天皇の崩御により7日間で幕を閉じた昭和64年に起こったこの事件は、県警内部で“ロクヨン”と呼ばれ、未解決のまま時が過ぎていく。そして平成14年。刑事として捜査に加わっていた三上は、ふたたびこの事件に向き合うことになる──。
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ロクヨンのモデルは実話であるという可能性が高い。
昭和62年に誘拐事件が群馬県で発生し、いなもなお戦後唯一の誘拐未解決事件とされている。原作者の横山秀夫は、1979年(昭和54年)から12年間、群馬県の「上毛新聞」の記者を経験。その間に取材した事件の一つとみられる。
この映画の前編は、時効まで1年と迫ったある日、「ロクヨン」を模した誘拐事件が発生するところで終わっており、この模倣誘拐事件が、ロクヨンとどのような繋がりをみせるのか興味津々というところで終わっている。いやが上にも「後編」(6月11日公開)への期待が高まる。
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この二つの部署には、日頃から確執があるという姿が映画では描かれている。
三上自身の判断で記者たちに加害者(妊婦)の名前公表に踏み切る決断を下すのだが・・・。
娘を誘拐されて殺された父親・雨宮(永瀬正敏)は、2年前に妻をも失くし心を閉ざしていたが、その雨宮の元を何度も訪ねるのだった。また、三上自身も自分の娘が家出をして失踪しているという問題も抱えていた。
無言電話は家出した娘からと信じて話しかける両親。
果たして、三上は「ロクヨン」問題を解決できるのか・・・。
警察の上層部の隠蔽問題、内部の対立、マスコミと警察の関係、報道における匿名の是非、県警と本庁のキャリア組との対立、極端には県警つぶし、人事など警察内部におけるさまざまな問題もあぶり出されて興味深い。
例えば人事に関しては、キャリア組といわれる、いわゆるエリート官僚が部署のトップに配置されるが、刑事部長のポストだけは、県警プロパーのポストで譲れない、などの権力闘争も描かれる。県警の一般職員などは、上司の人事にはことのほか関心があるが、「(上司ポストの人事異動は)1ヶ月で慣れる。2ヶ月で染まる。人事とはそういうものだ」という発言もあった。
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オールスター・キャストと言われる俳優陣が見所でもある。
県警担当の記者クラブは、県警の広報室の近くの部屋に専門の部屋が設けられているが、警務部長(滝藤賢一)などは、広報官が記者から詰め寄られると、無能呼ばわりする始末。滝藤賢一は、「半沢直樹」で注目されて以降、アクが強いキャラクターを演じて性格俳優の一人となっている。
キャリア組のトップを走るとみられる県警本部長を演じる椎名桔平は出番は少ないが、堂々としていた。本部長ともなると一般の警察職員から見れば雲の上の人といった存在だ。刑事部捜査一課次席役の小澤征悦(ゆきよし)も、一昨年のテレビドラマ「TEAM -警視庁特別犯罪捜査本部-」の管理官を彷彿とさせた。
氏名を公表しないなら本部長に直訴すると息巻く記者たち。
東洋新聞のキャップを演じる瑛太は、記者クラブを代弁する役で、警察広報官に激しく詰め寄るが、広報官の熱い心情に触れ態度を軟化したかに見えるが・・・。瑛太は現在公開中の「殿、利息でござる!」にも出演し、売れっ子ぶりを見せている。
主な登場人物:
・佐藤浩市:三上義信 (警務部秘書課広報室広報官)
・綾野剛:諏訪 (警務部秘書課広報室係長)
・榮倉奈々:美雲 (警務部秘書課広報室婦警)
・夏川結衣:三上 美那子 (元婦警。三上の妻)
・窪田正隆:日吉浩一郎 (元ロクヨン自宅班:科捜研)
・坂口健太郎:手嶋 (東洋新聞サブキャップ)
・金井勇太:蔵前
・菅原大吉:石井
・芳根京子:三上 あゆみ (三上義信の娘)
・烏丸せつこ:日吉雅恵 (日吉浩一郎の母)
■監督 - 瀬々敬久
■脚本協力 - 井土紀州
■音楽 - 村松崇継
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