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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「アイム・ソー・エキサイテッド」(2013、スペイン)

 
ペドロ・アルモドバル監督の「アイム・ソー・エキサイテッド!」(2013) を見た。
おバカ・コメディ映画の形をとりながら、巨匠アルモドバル監督が、痛烈に祖国スペインの現状を憂いて風刺した映画のようだ。
 
アルモドバル監督作品では、ペネロペ・クルスの歌唱と自信に満ちた表情がすばらしい「ボルベール<帰郷>」(原題:Volver 、2006)や、今年見た「私が、生きる肌」 原題:La piel que habito 、2011)が印象に残る。「アイム・ソー・エキサイテッド」では、映画の最初の方で、ペネロペ・クルスアントニオ・バンデラスカメオ出演している。
 
・・・
映画の舞台は、飛行機の機内だけというワンシチュエーション・コメディ
着陸せずに上空を旋回し続ける飛行機に乗り合わせた一癖も二癖もある客室乗務員や乗客たちが巻き起こす騒動が描かれるドタバタのブラック・コメディ。
 
こんな話:
スペイン・マドリッドからメキシコへ向かう飛行機が着陸不能の状態に陥り、目的地へ向かわず旋回し続けていた。ビジネスクラスを担当するホセラ(ハビエル・カマラ)、ファハス(カルロス・アレセス)、ウジョアラウル・アレバロ)の女性的なところのある、平たく言えばオカマの客室乗務員3人組は、乗客を楽しませるために歌やダンスを披露、さらには怪しげなオリジナルカクテルを提供しはじめる。
 
            オカマの客室乗務員3人組
 
            操縦室に乗り込む乗客たち

 

ホセラと愛人関係にある機長のアレックス(アントニオ・デ・ラ・トーレ)は、緊迫した状況下にも関わらず三角関係をどうするのか迫られる。
 
ビジネスクラスに搭乗しているのは、不吉な予言をするブルーノ(ロラ・ドゥエニャス)、情緒不安定な愛人(パス・ベガ)にも元交際相手(ブランカスアレス)にも気遣いを見せる俳優リカルド(ギレルモ・トレド)、延々と苦情を言うSM女王ノルマ(セシリア・ロス)や後ろめたいことのある銀行頭取マス(ホゼ・ルイス・トリーホ)ら、一筋縄ではいかない乗客たちばかり。機内はとんでもない騒ぎとなるのだが・・・。
 
           ビジネスクラスの怪しい乗客たち
 
・・・
通り一遍のドタバタ・コメディかと思ったら、ペドロ・アルモドバル監督は、飛行機の中の乗務員、乗客を何事も楽天的なスペイン人の象徴として捉え、厳しい経済危機などの現実を直視せず、現実逃避を図っているということを描きたかったようだ。
 
離陸したものの飛行継続が難しくなり、帰投する空港を求めてあてもなく飛び続ける旅客機パイロットCAも腹をくくり、乗客たちもこの状況を脱しようとするよりは、むしろ絶体絶命のピンチを楽しんでいる
 
スペインでは、政治家役人の間では無責任不正が横行し、酒や同性愛で気を紛らわし、金持ち犯罪者海外に逃避しようとする。スペインは、果たして経済危機からソフトランディングは可能なのかと問いかけるのだ。

政府役人象徴としてのパイロットや男性CAゲイバイセクシュアルであり、複雑な人間関係を露呈してだれもリーダーシップを取れない。一方、金持ち階級を象徴するるビジネスクラスの乗客たちといえば、墜落を危惧しながらもドラッグの助けを借りて心情を吐露する始末。まさにこれこそ、ペドロ・アルモドバル祖国スペインへの危機感の表れだったようだ
 
映画の冒頭に「この物語はファンタジーであり、現実とは何の関係もありません」という文字が出るが、かえって、”大あり(大いに関係あり)”と宣言しているようにも捉えられる。
 
 
          スマートホンが小道具として使われていたが・・・。
 
90分足らずの映画だが、”抱腹絶倒”コメディとしては笑えないシリアスな問題が裏にある映画のようだ。
 
☆☆☆
 
※8月「100本目」の記事。

 

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