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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「マザー!」(原題:Mother!、2017、劇場未公開)を見る。ジェニファー・ローレンス主演。

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マザー!」(原題:Mother!、2017、劇場未公開)を見る。あまりにもおぞましく過激な内容であることから日本ではDVD販売のみ。主演は「アメリカン・ハッスル」のジェニファー・ローレンス、「ノーカントリー」のハビエル・バルデム。共演はエド・ハリスミシェル・ファイファーなど。これだけの超豪華俳優が出演していて劇場未公開。見れば納得。

最初から最後まで、イライラさせられどうしで、ストレスが溜まり、なんだかわけがわからないと思ったら、あとから聖書、キリスト教社会のメタファー(暗喩)であるという解説を読んで理解できた。

若妻を演じるジェニファー・ローレンスを見るだけでも価値はある。似たようなタイトルの映画が邦画にもあったが、ジェニファー・ローレンス版は、熱狂的教信者による暴動を描いたホラーに近い映画。

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こんなストーリー:

郊外の広い家に住む、詩人の夫(ハビエル・バルデム)とその若い妻(ジェニファー・ローレンス)。しかし平穏な日々は見知らぬ男(エド・ハリス)が訪問してきたことをきっかけに崩れることになる。

見知らぬ男の次に現れたのは、その男の妻(ミシェル・ファイファー)。この女は、他人の家にやってきて、若い妻に憎まれ口を叩いたり、性格も悪そうな女で、顔にも現れている。「このままでは何か良からぬことが起こる」という妻の訴えを真剣に取り上げようとしない夫だったが、彼女の不安はやがて現実のものとなる。

やがて、この見知らぬ訪問者の夫婦の次に長男・次男が飛び込んできて、大喧嘩になる。どうやら遺産の分配をめぐる争いのようだ。

詩人の新作がようやく完成すると、今度はその本に共鳴したという群衆が押し寄せてきて、詩人の周りに集まってくる。

詩人は、若妻が妊娠し、臨月を迎えて苦しんでいるというのに妻をほったらかしにして集まった群衆を相手にしている。若妻には、ちょっと辛抱してくれと気遣っている素振りだが、かまってもらえない妻のいらだちは爆発寸前に。

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家の中のものは群衆に盗まれ、破壊されるなど次々に巻き起こる不可解かつ不条理な出来事に翻弄され、憔悴していく妻。朦朧とする妻が、床板を見ると、隙間から「血」のようなものが溢れているのが見える。絨毯で覆い隠すが、そのシミは絨毯にまであふれる。

そんななか、若妻が出産。夫が赤ん坊に触らせてと妻に頼むが、妻は断固拒否。しかし、妻がちょっと居眠りをしたスキに赤ん坊は夫が抱き抱え、群衆の中に赤ん坊を連れて行く。

赤ん坊がいなくなったことに気づいた若妻は、発狂したように群衆の中に飛び込み赤ん坊を追うのだが…。ここから地獄絵図が始まる。

赤ん坊は手から手へ掘り投げられ、首を折り即死、更にそれを食べる群衆。

妻は激怒しガラスで反撃しはじめるが、群衆から目を疑う程の暴力を受ける。

最後はもう全てを自分で破壊する、と妻が火をつけ全焼。

奇跡的に生き残った夫、瀕死の妻。

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小説家の夫というのが博愛主義者なのか、八方美人なのか、人を疑うということをせず、訪問客を誰でも家に通してしまう。これに対して、妻は不安と恐怖を募らせていくが、夫は、大丈夫と意に介さない。ハビエル・バルデム演じる小説家のノー天気ぶりには、妻でなくても苛立つ。

訪問者の行動が次第にエスカレートしていき、常軌を逸した事件が相次ぎ、想像もつかない出来事が待ち受けていたというお話。ラストシーンで、映画のオープニングと同じシーン(よくみると異なる)に戻る。すべては現実におこったことなのか?それとも若妻の妄想だったのか?

(余談)監督のダーレン・アロノフスキーは「この映画は一般の観客に向けて作られたわけではなく、ある特定の人たちへ向けたものである」と語っているというが、映画は皆が楽しめるような映画を作って欲しい。批評家の間で賛否が激しく割れている一方、観客からは酷評されたといい、シネマスコアで最低値となるF評価を獲得。

あまりの過激な内容であり、北米公開初の週末で集計を取りその結果まれにみる「F」。これは過去にたった11作品しかなく、ただ最低だ!というよりは怒りを表していると言われている。なぜこんな作品を作ったのか。何を言わんとしているのかを知らなければ、確実にトラウマになるということなどから、製作会社は日本での公開を中止した。

これはキリストを侮辱しているとアメリカでは大きな批判を受けたという。

母親は地球であり大地、彼は創造主であるヤハウェ。赤ん坊はキリストであり、訪ねてきた男はアダム、妻がイヴ。息子たちは兄がカインで弟がアベル。群衆は神を信仰する人々。家は何故かポツンとあり、これがこの世の全て。これらは創世記で語られる人物。反キリストだと批判され、評価が著しく低かったがこれは「人類の愚かさ」を描いたものという。そういったことがわからないと、なんだ、この映画は、となる。

主なキャスト:
ジェニファー・ローレンス
ハビエル・バルデム
エド・ハリス
ミシェル・ファイファー
クリステン・ウィグ
ドーナル・グリーソン
スティーヴン・マクハティ

監督:ダーレン・アロノフスキー
脚本:ダーレン・アロノフスキー