「男はつらいよ お帰り 寅さん」(2019年12月27日公開)は、シリーズ50周年記念にして通算第50作目となる。「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇」以来22年ぶりの新作。現在のくるまやとそれを囲む人々の人間模様が、過去のシリーズ映像を絡めて描かれる。
共演したマドンナたちが最低ワンカット登場し、当然だが皆若い。マドンナではリリー役・浅丘ルリ子が今作にも出演、過去の寅さんとのいきさつなどを語っている。
時が過ぎて、物語の中心は、寅さんの甥に当たる満男(吉岡秀隆)を中心に描かれる。満男の高校時代の初恋の女性・泉(後藤久美子、愛称ゴクミ)がこの映画で23年ぶり女優復帰し、再登場している。
ゴクミとしては「男はつらいよ」シリーズは1989-1995年に5本出演、今回6本目となる。現在はスイス・ジュネーブ在住のゴクミだが、ずっと欧州に在住で、今回の映画でも、ヨーロッパから一時帰国したという設定。この映画撮影時、45歳だが、最初に見た印象は、若いころのアウンサン・スーチーではないかと思ってしまった。時々、そっくりという表情があった。そう思うのはfpdだけか(笑)。
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物語は諏訪満男(吉岡秀隆)の妻の七回忌の法要から始まる。
柴又の帝釈天の参道に昔あった「くるまや」の店舗は新しくカフェに生まれ変わり、その裏手に昔のままの住居がある。
法事のあと、ひとしきり昔話に花が咲く。寅がマドンナを連れてくるたび、家中が大騒ぎだったことなど・・・あれからもう半世紀の歳月が流れたのだ。
満男は、長い間サラリーマンをしていたがその合間に書いた小説が認められ小説家になっていた。
そんなある日、満男の最新作の評判がよくサイン会をすることになる。ところがその列に並ぶ客の中に初恋の人、一度は結婚の約束までした女性、及川泉(後藤久美子)の姿を見て呆然となる。
ヨーロッパで生活しているイズミは仕事で来日し、偶然サイン会に参加したのだった。イズミに再会した満男はサイン会もそこそこに「君に会わせたい人がいる」と小さなJAZZ喫茶にイズミを連れて行く。
経営者の顔を見て驚くイズミ、それは20年以上前に奄美大島で会った寅の恋人のリリー(浅丘ルリ子)だった。懐かしい人たちとの再会、そして思い返す寅さんのこと。それは満男とイズミにあたたかい何かをもたらしていく。イズミはその夜「くるまや」を訪れることになるのだが・・・。
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主人公の寅さん(渥美清)が亡くなって四半世紀(1996年没)経つが、過去の映像をからめて、全編デジタルHD撮影で50作品目が完成。山田監督は、キリのいい50作は早い時期から考えていたという。
過去の作品のエピソードを、現在にうまくつなげている。さくら(倍賞千恵子)が、お供えにもらったメロンを手にして、「メロンを見ると、どうしても思いだすのよ」といって、過去の”メロン騒動”のシーンが登場する。
寅次郎がもらってきたメロンを、寅次郎の分を切り忘れて、おいちゃん夫婦などとさくら家族が食べているところに、寅次郎がふらりと戻ってくるのだ。
一斉に、皿を隠そうとするところも寅次郎に見られて、寅次郎が「どうせあいつなんかメロンの味なんかわかりゃあしないと思って、皿を隠したんだろう」と皮肉たっぷりに言う。おいちゃんも、これには腹を立て、そんなに食べたいなら買ってこいと、札束を投げつけて、”ちゃぶ台をひっくり返すような”険悪な状態になるのだ。
歴代マドンナが次々にフラッシュバックで登場するのが見どころだ。
日本のトップ女優総出演といった印象。”御前様”に笹野高史、泉の父親に橋爪功など山田組が出演。入院中の泉の父親が、泉を車で送り届けた満男に「香典の前渡しだと思って」とおカネをせびるみみっちさ(笑)。
立川志らくが、老人ホームで、年寄りを前に「志らくと申します。しらくといってもフランスの大統領ではないですよ」といっても反応なし。受けるわけねえだんべ(笑)。
出版社社員の池脇千鶴がなかなかいい。サイン会に並んでいた濱田マリは、いかにもな大阪のおばちゃん丸出し。吉岡秀隆の目をギョロッと引ん剝くような表情をするのは演技過剰の気がする(笑)。
人妻となっている泉が、空港から帰国するときに、見送りにきた満男が、実は「妻は6年前に亡くなっている」と告げると「なぜ隠していた」と走り寄ってきて、キスをするのは賛否が分かれるところ(フランスでは当たり前?)。初恋時代にそれらしきシーンの映像も流れるが。
満男の娘ユリから「お帰りなさい」といわれた満男はキョトンとするが「だってこのところ、どこか遠くに行っているようだったから」といわれて、我に返る満男。
「小説が書けそうだ」とパソコンに向かって原稿を書き始める満男・・・といったところでエンディング。
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主な出演:
車寅次郎:渥美清(過去映像とCG合成)
諏訪さくら:倍賞千恵子
諏訪満男:吉岡秀隆
諏訪博:前田吟
高野節子:池脇千鶴
原礼子:夏木マリ (泉の母)
リリー:浅丘ルリ子
朱美:美保純 (タコ社長の娘)
源公:佐藤蛾次郎
諏訪ユリ:桜田ひより
カフェくるまや店長・三平:北山雅康
編集長・飯田:カンニング竹山
書店の客:濱田マリ
出版社社員・山中:出川哲朗
ケアセンターの職員:林家たま平
窪田:小林稔侍
泉の父:橋爪功
最優秀編集賞(石井巌、石島一秀)
優秀作品賞
優秀主演女優賞(倍賞千恵子)
優秀撮影賞(近森眞史)
優秀照明賞(土山正人)
優秀音楽賞(山本純ノ介)
優秀美術賞(倉田智子、吉澤祥子)
優秀録音賞(岸田和美)