fpdの映画スクラップ貼

「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「愛情物語」(原題:Eddy Duchin  Story、1955)を見る(Netflix)。

f:id:fpd:20210608085539j:plain

愛情物語」(原題:Eddy Duchin Story、1955)を見る(Netflix)。

ビッグバンドオーケストラのバンドマスターでピアニストのエディ・デューチンの伝記物語。エディ・デューチン役にはタイロン・パワー。主題曲の「 To Love  Again」(ショパン夜想曲のアレンジ)」が有名。ピアノ演奏を担当したカーメン・キャバレロの来日公演を見に行ったことがあり、映画も見ている気もするが、たぶん初見。有名映画だが、名作かといわれると「佳作」か(笑)。

・・・

ピアニストとして身をたてるべく、エディ・デューチン(タイロン・パワー)は有名なセントラル・パーク・カジノのオーケストラの指揮者ライスマンを訪れた。

かつてデューチンがパークシャの避暑地で演奏している時、ライスマンから賞賛されたからだ。しかしいくらライスマンでもすぐ就職させるわけにはいかなかった。

当てがはずれて意気消沈していたデューチンは、グランド・ピアノが目にとまり、淋しい気持ちでピアノを弾き出す。ところがその調べを聞き入る1人の令嬢、大資産家の姪マージョリイ・オルリックス(キム・ノヴァク)が、事情を聞いて同情し、ライスマンに、オーケストラ演奏の合間にデューチンのピアノ演奏を入れてくれるように頼んだ。

f:id:fpd:20210608085707j:plain

ライスマンは大切な客であるマージョリイの申し入れを2つ返事で承諾する。このようなことからデューチンは楽壇に出ることができるようになり、2人の間も発展する。

2人はやがて叔父夫婦の祝福を受けてめでたく結婚。デューチンの楽壇での地位は益々重くなり、やがて愛児ピーターが生まれた。

デューチンの喜びは大きかった。クリスマスの夜、演奏が終えてマージョリイが入院している病院にかけつけたデューチンはマージョリイが重態であることを知る。デューチンが来て間もなく、マージョリイは息をひきとった。

マージョリー亡き後、デューチンの落胆はひどかった。彼は叔父夫婦にピーターをあずけ、バンドを率いて演奏旅行に出かける。

その間に第二次大戦が勃発し、デューチンは海軍に入り、亡妻マージョリイを一時でも忘れようと軍の演奏関係の仕事を一切断って、軍務に精励する。

やがて終戦となり、ニューヨークに帰り、叔父夫婦の家を訪ねる。ピーターは既に10歳になっていた。

ところが長い間、面倒を見なかっただけにピーターは彼になついてこない。その反対に英国の戦災孤児の美しい娘チキータ(ヴィクトリア・ショウ)に非常になついていた。

f:id:fpd:20210608085743j:plain

しかし間もなく、父子の愛情は音楽を通じて温かいものが流れるようになる。デューチンは昔日の人気をとり戻したが、それと同時にチキータに対して愛情を抱きはじめる。

ところがある日、デューチンはピアノの演奏中に左手のしびれを感じる。医者の診断を受けたところ白血病で余命いくばくもないと宣告をうける。

デューチンはチキータとの結婚に悩んだが、しかし、チキータは結婚を承諾する。デューチンとピーターに対する深いチキータの愛情がそうさせたのだった。チキータとの結婚生活によってデューチンは幸福をとり戻したが、死期は刻々と迫って来ていた。

・・・

1950年代には、音楽家の生涯を描いた映画が数多く制作された。「グレンミラー物語」(1953)「ベ二ー・グッドマン物語」(1956)などがあったが「グレンミラー物語」がもっとも印象が強い。

「愛情物語」は、主人公のエディ・デューチンは、ピアノの実力は優れているが、共感はできない。親としてはむしろ失格だからだ。

生まれたばかりの息子を10年間も放っておき、一度も会わずに親戚に預けるというのは、いくらなんでもひどい(笑)。妻が子供を生み、死んだからといって、赤ん坊を置き去りにして、演奏の旅に出たり出兵するというのは…。

10年後に「ほらお父さんだよ」といわれても子供がなつくわけがない。10歳の子供からは「○○さん」といわれ、遠ざけられるのも無理はない。ただ、息子も母親譲りで「風の音」に恐怖を覚え、強風の夜、父親のベッドに飛び込んできたり、ピアノがうまく、ラストで一緒にピアノを弾き、親子の絆が生まれるというのはややご都合主義。

親戚に預けられ、家政婦としての女性チキ―タが息子ピーターの面倒を見ていたが、デューチンが白血病で先が短いと悟り「自殺する」と飛びだすと、チキ―タが追いかけてきて、デューチンはチキ―タに結婚を申し込む、という展開。

息子にしてみれば、生まれた時に母を失い、10歳になって、今度は父を失うという二度の不幸に襲われることになる。唯一の救いが母親代わりだったチキ―タが、そばにいることになったことだ。

主演のタイロン・パワーがピアノ鍵盤上で華麗に指を走らせているが、これは実在のエディー・デューチンの演奏に近いサウンドトラック演奏をしているカーメン・キャバレロの演奏に沿って、タイロン・パワーが演じているという。

1950年代のハリウッドのお涙頂戴の映画かもしれない。

タイロン・パワーは、この映画のあと「陽はまた昇る」(1957)「情婦」(1957)などに出演し、1958年に44歳の若さで亡くなった。「情婦」が遺作となってしまった。 

監督:ジョージ・シドニー
脚本:サミュエル・テイラー
製作:ジェリー・ウォルド、ジョニー・タップス

音楽:ジョージ・ダニング

撮影:ハリー・ストラドリング
出演:
エディ・デューチン:タイロン・パワー
マージョリーキム・ノヴァク
チキータ:ビクトリア・ショウ
ルー:ジェームズ・ホイットモア
ピーター:レックス・トンプスン
配給:コロンビア映画
上映時間:123分