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<span itemprop="headline">映画「お墓がない!」(1999)岩下志麻主演のコメディ。</span>




岩下志麻が「極道の妻たち」の姉御肌の役から一転してコメディに挑戦した「お墓がない!」(1999)を見た。お墓、葬式費用、お寺の戒名の高額なことへの風刺もあってそこそこ面白かったが、公開当時の映画の評価はイマイチだったようだ。

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            映画の中で大女優を演じる岩下志麻の風格はさすが。

映画スターの桜咲節子(岩下志麻)はテレビで人気の子役女優・一風弓(安達祐実)と共演する映画「宣告」に主演することになった。ガン宣告を描く作品のため、勉強のために病院で検査を受けた節子は、なぜか自分がガンで余命が半年だと思い込んでしまう。

節子はとくに大騒ぎはしなかったが、撮影スタッフが「墓が無いのは惨めだ」と話すのを聞いて動揺する。もうすぐ死ぬというのに、自分が入る墓が無い。あせった節子は撮影をすっぽかしてまで、大女優にふさわしい墓を探そうとする。

だが、人一倍プライドの高い節子は自分が墓を探していることを知られたくない。
そこで春日アキという老婆に変装し、霊園会社「聖香メモリアル」の墓を見学するツアーに参加した。しかし節子は歯に衣着せぬ発言で担当者を怒らせてしまう。

だが、若手社員の川嶋一平(袴田吉彦)は節子に墓を売ろうと奮闘。節子に付き合い、マンツーマンで様々な墓を紹介して回る。節子からガンで時間が無いことを知らされ、親身になって彼女に接する川嶋。自分の家に招待して夕食をご馳走したりもする。

一方、映画の撮影も進んで行く。最初は生意気だった一風弓だが、節子の真剣な態度に感化され、映画に対する取り組み方が変わっていく。順調に撮影が進み、節子と弓の間にも親愛の情が生まれ始める。いよいよクランクアップが近付く中、節子は突然倒れ、病院に運ばれる・・・。

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監督は原隆仁、脚本は大森寿美男、音楽は大島ミチル

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葬式、お墓のことを全く知らなかった大女優・桜咲節子のお寺の住職との言い争いなどが面白い。お寺では、住職が「戒名をつけないと、祟(たた)りが起こる。金額はその人の生きた証・価値を示すものだから高いほうがいい」というので、「そうやって戒名を売りつけようというのは恐喝だ」と言い返す節子。


         住職の金儲け主義の見える”脅し”に一歩も引き下がらない節子。

墓地の販売担当の「骨壷や、お墓は結構狭いですよ」と脅すような事を言うので、「私はお墓はいりません」ときっぱり言い切る節子。「形ばかりのお墓よりも、送る人と送られる人の心が通い合うことが大事です」だった。

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      大女優の素顔を隠しておばあちゃんに変装しても、上品さが出てしまう節子。

女優であることを隠して、年配者用メガネで、白髪のかつらをつけて腰の曲がったおばあさんに変身しても、その品格と、物怖じしない物言いは、岩下志麻の持つ貫禄を感じさせる。途中で、正体がバレてしまうが、ドタバタコメディながら、全体的に起伏もなく物語も単調に終わってしまったのが残念。

コメディエンヌとしての岩下志麻の全開のパフォーマンスを見たかった気がするが、上品に収まってしまった印象。

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岩下志麻のデビューは、NHKドラマ「バス通り裏」(1958)で、映画は2年後の1960(昭和35年)の「笛吹川」。松竹には1960年から1976年(昭和51年)まで16年に渡って在籍し、その屋台骨を支えた。

1960年の映画「秋日和」の数シーンで岩下を起用した監督の小津安二郎は岩下の女優としての素質を見抜き、「10年に1人の逸材だから大切に育てるように」と松竹の幹部達に語ったという。


1962年(昭和37年)には小津にとって映画「秋日和」以来の松竹作品であり、遺作となった映画「秋刀魚の味」のヒロインに抜擢され、小津のラストを締めくくった。今でも海外に行った時には、小津について質問を受けることが大変多いと岩下は語っている。

映画「極道の妻たちシリーズへの出演が有名だが、日本メナード化粧品のCMに長く出演していることも広く知られており、2000年(平成12年)に28年という、専属タレント契約としては世界最長の記録が「ギネス・ワールド・レコーズ」に認定された。

映画ではこのほかATG製作の「心中天網島(しんじゅうてんのあみじま)」(1969)、「内海の輪」(1971)や「鬼畜」(1978)などが印象に残る。



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