「新解釈・三國志」(2020)を見る。脚本と監督は「銀魂」シリーズなど数々のコメディ作品を手がける福田雄一。主演は大泉洋。
「三國志」を福田雄一自身による新たな解釈のもとで映画化。「水曜どうでしょう」のような将軍らしからぬ話し方のキャラクターを生かすため、あえて役作りをさせないようクランクイン直前まで福田は大泉に台本を渡さなかったという徹底ぶり。
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今から1800年前。中華統一を巡り三国【魏・蜀・呉】が群雄割拠していた時代。民の平穏を願い、のちに英雄と呼ばれる一人の男・劉備が立ち上がった。
激動の乱世を経て、物語はやがて[魏軍80万]vs[蜀・呉 連合軍3万]という、圧倒的兵力差が激突する「赤壁の戦い」に突入していく…という超有名な歴史エンターテイメント。
撮影は2019年の4月から5月頃に千葉県の君津市・鋸南町で行われた。最終的な興行収入は40.3億円となった。
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大学教授で歴史学者の蘇我宗光(西田敏行)の語りで物語が進む。ややくたびれたような雰囲気の蘇我が独自の歴史観で、三国志の時代について紹介していく。
劉備役の大泉洋は、飄々とした雰囲気。設定は「三国志」だが、全体の雰囲気は、時代劇コメディといったもので、おふざけが過ぎる印象も。
「絶世の美女」を敵側の董卓と呂布に献上することで相手を攻略するという戦法が傑作。登場したのが貂蝉(渡辺直美)だったからだ(笑)。劉備が「えっ、えっ…」とうろたえると、”時代考証的美女”だという通り、相手は、その美女ぶりに目がハートになってしまう。
実は、貂蝉(渡辺直美)が、トム・クルーズのように変装のマスクを取ると中から広瀬すずが出てくるのだ。広瀬すずの言葉。「私が美人と言われる時代は来ないのか」。
貂蝉(渡辺直美)の腰ふりダンスなどの踊りもあり、役柄にはマッチしていたが…。
ただ、出演者は豪華だが、赤壁の闘いというよりも睡魔との戦いだった。
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福田のラブコールを受けて出演した大泉洋は、完成報告会見で「本来なら大変良い役で喜ぶべきだが(本作の)劉備はカッコよくなく…」「できれば(古代中国戦国時代が舞台である)『キングダム』に出たかったけど役が無かった」とボヤキを交えながらも、作品への思いを述べている。
【キャスト】
■蜀・劉備:大泉洋…蜀の将軍。戦嫌いで小心者、さらにわがままで面倒臭がりという、武人らしからぬ人間性ではあるが、酒に酔うと勇猛果敢でカリスマ性溢れる立派な武人に豹変する。
■関羽:橋本さとし…劉備の義兄弟。劉備の武人らしからぬ頼りなさ、情けなさに悩みながらも、信頼し劉備を支え続ける。
■張飛:高橋努…劉備の義兄弟。関羽と同じく劉備のヘタレさに悩んでおり、酒に酔った劉備を「真の武人」と評価している。
■趙雲:岩田剛典…蜀の武人。常にモデルのようなポーズを取ったり話すときに独特の間を取ったり、終始背後を謎の光に照らされているなど「鼻に付く」ナルシストの美青年。しかし戦闘の実力は高い。
■孔明:ムロツヨシ…蜀の軍師。頭の切れる天才軍師と思われているが、実は妻の黄夫人に頼りっきりの凡才。劉備とは気が合う。
■糜(び)夫人:清水くるみ…劉備の正室。子供の阿斗を趙雲に預け、自らは井戸に身を投げた。
■黄夫人:橋本環奈…孔明の妻で、とても頭が切れる「影の名軍師」。気が荒く男勝りな性格。
■魏・曹操:小栗旬…魏の将軍。武人としての資質は高い。度を越した女好き。戦好きであることから劉備に平和な国を治めるに値しない人物と見られている。
■荀彧(じゅんいく):磯村勇斗…軍師。
■夏侯惇(かこう とん):阿部進之介…曹操の遠戚。
■許褚(きょちょ):一ノ瀬ワタル…魏の武人。劇中で腹踊りを行った。
■呉・孫権:岡田健史…前の君主・孫堅の末子で呉の君主。優柔不断かつ気の弱い人物。孔明に心酔しているが、側近の周瑜が孔明を目の敵にしていることはなぜか気にしていない。
■周瑜(しゅうゆ):賀来賢人…呉の最高司令官。声が大きく暑苦しく、単純な性格で騙されやすい。妻の小喬を溺愛。孔明に騙されたことを根に持ち、やたらと孔明を斬首したがる。
■小喬(しょうきょう):山本美月…周瑜の妻。周瑜に暑苦しいまでの寵愛を受ける。美形と名高い曹操のことも敵国の将軍ながら気になっている面食い。
■黄蓋(こうがい):矢本悠馬…呉の老将。
■魯粛(ろ しゅく):半海一晃…呉の軍師。
「その他の勢力と現代」
■董卓:佐藤二朗…後漢時代の暴君。軽く馴れ馴れしい口調で話し、ほとんど威厳がない。女好きで貂蝉に一目惚れし、同じく貂蝉に惚れた呂布と諍いを起こす。
■呂布:城田優…董卓の側近。後漢及び三国時代最強と名高い武人。とても馬鹿。貂蝉に一目惚れし、上司の董卓と恋敵となる。
■貂蝉(ちょうせん):渡辺直美・広瀬すず…趙雲が蜀中を探し見つけた、当時の感覚では「絶世の美女」(時代考証的美女)。劉備の命で董卓及び呂布を篭絡し、仲間割れを企てる。豊満(過ぎる)肢体を活かした独特の舞が得意。
■黄巾(こうきん):山田孝之…黄巾の砦を守っていた逆賊の長。やたらと顔の黄金比にこだわる。話し出すとやたら長く他人の話に耳を貸さない。
■蘇我宗光:西田敏行…歴史学者として登場し、史実と考察についての解説を行う。