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映画「モリコーネ 映画が恋した音楽家」(原題:Ennio、2022、イタリア)を見る。

モリコーネ 映画が恋した音楽家(原題:Ennio、2022、イタリア)を見る(TOHOシネマズ日比谷シャンテ)。10本の名作映画を同時に見たような満足感がある映画だった。映画音楽ファンは劇場に急げ!(笑)。

映画音楽はもうやめたいというモリコーネ映画が追いかける!

ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督が、師であり友でもある映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネに迫ったドキュメンタリー。


1961年のデビュー以来、500作品以上もの映画やテレビの音楽を手がけ、2020年7月に惜しまれながらこの世を去ったモリコーネモリコーネを知るための集大成ともいうべき映画が盟友トルナトーレ監督によって残されたことは本当によかった。


クエンティン・タランティーノクリント・イーストウッドウォン・カーウァイオリバー・ストーンハンス・ジマー、バリー・レヴィンソン、ジョン・ウィリアムズベルナルド・ベルトルッチクインシー・ジョーンズ錚々たる顔ぶれの監督・プロデューサー・音楽家へのインタビューを通して、モリコーネがいかにして偉業を成し遂げたのかを解き明かしていく。
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映画の冒頭、年配の男が床のうえに仰向けになって、両手を波打つように動かしたかと思うと、横に回転したりと奇妙な動きを見せている。この男こそ、当初変わり者ともいわれ、クラシック音楽家たちからは無視されていたが、のちに映画音楽というジャンルを確立したともいえる、大作曲家エンニオ・モリコーネだ。


前半は、モリコーネの生い立ちや、ゴッフレード・ペトラッシとの師弟関係、本人、関係者のインタビューなどや、青春映画(ほとんどが未公開)の音楽など軽いタッチの音楽が紹介される。


ところが黒澤明の「用心棒」の画面が突然現れる。この日本映画のイタリア版の音楽の依頼があり、これが転機となる。

         「荒野の用心棒」

後半からは、口笛を使った音楽で知られる「荒野の用心棒」が登場すると、音楽はクラシック中心といった流れから、一つのジャンルとして映画音楽という分野を確立していく様子が描かれていく。


モリコーネ自身は「荒野の用心棒」の音楽はあまり好きではないという。そして「夕陽のガンマン」「続・夕陽のガンマン」という傑作が誕生していく。


その後、マカロニウエスタンの集大成ともいえる「エスタン」の登場。「ウエスタン」のオープニング20分の音は、古い木のはしごをつぶすようにして作った音楽だという。

         「ウエスタン」の1シーン

モリコーネにとって妻マリアの存在が大きいという。モリコーネは、妻マリアに最初に音楽を聞かせて、マリアが気に入った曲だけを監督に聞かせるというくらいだ。


1970年、1980年、1990年と10年の節目ごとに、もう映画音楽はやめたいと思ったというが、いくらモリコーネが映画音楽から去ろうとしても、映画が追いかけてきたのだった。


マカロニウエスタンの作曲家で終わりたくないという意識が強かったモリコーネは、映画のタイトル導入部からゾクゾクさせる「アンタッチャブル」や「ニューシネマ・パラダイス」などが誕生していく。

アンタッチャブル」の階段シーンはゾクゾク

ニュー・シネマ・パラダイス」「荒野の用心棒」「アンタッチャブル」など45作品にも及ぶ傑作から選ばれた名場面や、最高の音響技術で再現されたワールドコンサートツアーの演奏が登場する。


モリコーネのコメントも興味深い。
「唯一の後悔は、キューブリックの「時計じかけのオレンジ」のオファーに対して、別の映画(「夕陽のギャングたち」)があって断ってしまったことだ。」
「音(楽譜)はレンガと同じ。同じものでも、建造物はみな異なる。」


関係者のコメントでは…。
モリコーネは映画音楽というフォーマットを生み出した。」
「アカデミックな音楽家たちはモリコーネを理解しようとしなかった。しかし、数々の映画音楽で変わった。無視したことに頭を垂れたのだ。」
「ペトリ監督は、1監督1作品だけというポリシーで映画を撮っていたが「殺人捜査」でモリコーネと組んでからは、何作品もモリコーネと仕事をしている。」


モリコーネは1969年だけで21本の映画音楽を手掛けた。モリコーネによると、1年に18本というのが多かったという。


シシリアン」の音楽を聴いたときは、またまた(「ドロン祭シネマライブ」と同様に)鳥肌級の感動を覚えた。「死刑台のメロディ」のジョーン・バエズの「勝利への賛歌」も懐かしかった。


アンタッチャブル」でアカデミー賞作曲賞の候補になるも「ラストエンペラー坂本龍一)が受賞するなど、何度も候補になりながら、悔しい思いをしている。2007年第79回アカデミー賞名誉賞を受賞。

    イーストウッドとの2ショットは感慨深い

2015年になってクエンティン・タランティーノの「ヘイトフル・エイト」でようやく作曲賞を受賞。まさにハリウッドが、エンニオ・モリコーネをマエストロとして理解しリスペクトした。


クエンティン・タランティーノは、アカデミー賞受賞スピーチで「エンニオは、現在のベートーベンだ」と語っていた。200年後に、20世紀の偉大な作曲家モリコーネと後世にも語り継がれることになるのか。

 

 

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