「リップヴァンウィンクルの花嫁」(2016)をみた。ちょうど1年前の2016年3月26日公開。脚本・監督は岩井俊二。黒木華(はる)の単独初主演作品。日本アカデミー賞優秀主演女優賞(黒木華)受賞。黒木華とCoccoの演技のうまさ、綾野剛の口八丁の胡散臭さが妙に印象に残る。
同名の19世紀のアメリカの短編小説「リップ・ヴァン・ウィンクル」の内容(二つの世界を行き来するストーリー)にヒントを得て、価値観の世代間ギャップなどを描いているようだ。比喩のようなことが多く、なかなか理解しにくい展開だった。3時間という時間の長さも感じさせる。
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派遣教師の皆川七海は「教師」という仕事が好きではありながらも、情熱を持てずに働いていた。 ある日、彼女はSNSで出会った鶴岡鉄也(地曵豪:じびき・ごう)と付き合ってすぐに結婚することになる。それはインターネットでモノを買うようにあまりにもあっさりとしていた。
結婚式をすることになった七海と鉄也。
しかし友人が多い鉄也に比べ、七海には結婚式に出席してくれる親戚も友人も少なかった。 鉄也に“見栄えがしないからどうにかして欲しいと”頼まれた七海。 困った挙げ句「なんでも屋」の安室行舛(あむろ・いきます)(綾野剛)に代理出席を依頼した。そして無事に結婚式を終えたものの、すぐに鉄也の浮気が発覚。
そして次のバイトはオーナーが不在の間、住み込みで屋敷を管理する「メイド」だった。報酬が100万円という高額であることに困惑しながらも七海はこの仕事を受ける。屋敷にはすでに結婚式の代理出席バイトで知り合った真白が住み込んでいた。
胡散臭い何でも屋の安室(綾野剛、左)
要約すると、時間軸の違うふたつの世界が存在しているということのようだ。現実の世界ともう一つの別の価値観に支えられた世界(幻想:死後の世界)を行き来するというのがこの物語。
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結婚式や法事に、親族のふりをして出席するという身代わり出席を紹介する会社があるというのは驚きだ。しかも、結婚式などでは、名前と関係性など覚えるために ”親族”なりきりのリハーサルまで行う。
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登場人物は複数の名前を持つ。綾野剛演じる安室行舛には市川Raizoという俳優名もあり、使い分けている。七海もクラムボンというアカウント名があり、旦那にアカウント名がばれてからはカムパネルラという名前に変える。
真白(ましろ)という女性は、女優ということだが、現実の世界と自分の価値観の世界の境目がみえなくなってきて混乱している様子。現実の世界は、優しすぎるという。「コンビ二に行けば、店員は商品を、私のような人間にも、袋に入れてくれる。親切になれていないので、そうした優しさには限界を感じて、(自身が)壊れそうだ。そのため優しさなどをお金で買うようにしている」と考えているのだ。
真白は実は末期がんに侵されていた。死ぬことを考えていて、自分と一緒に死んでくれる人間を探していた。そこに、七海が現われ、七海との幻想的な生活が始まり、一緒に死のうとしたのだが・・・。
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映画を見た後、あれはどういう意味だろうなど様々考えさせられる映画だった。
この映画の公開の後亡くなったリリぃが存在感があった。 真白の母親役。10年前に真白を捨てた。それは、娘がポルノ女優になって恥ずかしさがあったからだった。
七海と安室が真白の遺骨を届けたが、いらないと突っぱねた。 この母親は、何年か前に真白を探し出し、顔を何度も殴りつけたという。そんな真白の残した財産(現金)を安室が渡した。七海と安室の前で突然衣類を脱ぎ始めた真白の母親。七海と安室は驚くが「人前で裸になるなんて恥ずかしいだけだ」と身をもって示したのだ。それには安室も号泣したが、母親と七海と共に浴びるほど酒を飲んですっきりするのだった。
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七海が、「自分が今どこに入りのかわからない。どこへ行けばいいのか、帰る場所がない」と携帯で安室に話すシーンが印象的だ。
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