fpdの映画スクラップ貼

「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「大統領の執事の涙」(2014)

 
大統領の執事の涙」(原題: The Butler, 2014)を見た。
 
映画は、「闇は闇を追い払えない。闇を払うのは光だけ。キング牧師」というナレーションで始まり、「アメリカの精神を象徴する不屈の心情に応えよう。Yes We Can」というバラク・オバマ大統領の言葉で終わり「公民権運動を闘った勇気ある人々に捧ぐ」というテロップで終わる。
 
オバマ大統領もこの映画を見て「目に涙あふれた」とラジオで語り、現在勤務しているホワイトハウス関係者もこぞって絶賛。全米中で話題沸騰の1本となったといわれる。
 
・・・
ホワイトハウスで歴代大統領7人に仕えた黒人執事セシル・ゲインズ(フォレスト・ウィテカー)を主人公に、公民権運動やベトナム戦争など激動するアメリカの歴史を、図らずも政治の中枢から目撃することになったセシルとその家族の知られざる波瀾万丈の人生を綴っている。
 
共演はアメリカを代表する人気司会者で久々の映画出演となるオプラ・ウィンフリー。また、ジョン・キューザックロビン・ウィリアムズアラン・リックマンらが歴代大統領役で出演。

 

・・・
黒人差別が日常で行われていた時代のアメリカ南部。
幼いセシル・ゲインズは、両親と共に綿花畑で奴隷として働いていたが、ある事件で親を失いハウス・ニガー(家働きの奴隷)として雇われる事になる。
 
その後、セシルは一人で生きていくために見習いからホテルのボーイとなり、真摯な態度を見た議員からスカウトされて、大統領の執事になった。
 
 
そんな時代の中でも、彼は黒人として、そして執事としての誇りを持ちながら忠実に働き続けるのだった。だが執事であると同時に、夫であり父であったセシルは、家族と共にその歴史に翻弄されていく。
 
「世の中をよくするため、白人に仕えている」と語るセシルに妻グロリア(オプラ・ウィンフリー)は理解を示すが、長男のルイス(デヴィッド・オイェロウォ)は父の仕事を恥じ、国と戦うために反政府運動に身を投じる。一方、そんな兄とは逆に、国のために戦うことを選んだ次男のチャーリー(イライジャ・ケリー)は、ベトナムへと志願し、戦死してしまう・・・。
 
・・・
主人公セシルを演じるフォレスト・ウィティカーと、その妻グロリアのオプラウィンフリーが素晴らしい。ウィンフリーのオプラ・ウィンフリー・ショー」はアメリカのトーク番組史上最高の番組であると評価され、多数の賞を受賞。オプラは20世紀以降のアメリカで最も裕福なアフリカ系アメリカ人と言われ、かつては世界唯一の黒人の億万長者であり、アメリカの歴史で最も偉大な黒人の慈善家、影響力のある女性の一人としても知られる。
 
・・・
過酷な農園出身のセシルが、外の世界は農園よりもひどかったと最初に語るように、食べ物もなく、いつも空腹状態が続いた。アメリカ南部では、白人が黒人を殺しても罰せられなかった時代だった。そんな中、「政治に無関心」という条件で、政治の本丸・大統領府の執事になる。会談の話は聞いてはダメ、空気のように思え、見ざる言わざるで、奉仕しろと、先輩執事に言われるままに黙々と仕事をする。
 
「相手の心を読め。察するんだ。お前のボスが思わず微笑むように」というアドバイスを守り抜いた。
 
様々な歴史的な事件に直面する執事・セシル。
1961年、アイゼンハワー大統領の後に就任したのは、仲間内からは「今度の大統領はお坊ちゃんだとさ」といわれたケネディ大統領。
 
          執事一人ひとりに挨拶するケネディ大統領と娘のキャロライン。
 
ケネディ大統領が執事ひとりひとりに挨拶していく。大統領の後に小さな女の子が、人形を落としたので、「ミス・キャロライン」といって人形を手渡すセシル。
 
その後、ケネディ大統領が撃たれて死んだ、というニュースにショックを受けるセシル。そして、フリーダム・バスに乗っていた黒人たちが、KKK(クー・クラックス・クラン:白人至上主義の秘密団体)の襲撃を受けたり、キング牧師公民権運動などが起こっていく。
 
セシルは、妻グロリアと、映画「夜の大捜査線」(原題:In the heat of the night)のシドニー・ポワチエはかっこいいと話すと、息子のルイスは、「ポワチエは、白人が描いた理想の黒人のモデルだ」と噛み合わない。セシルは、黒人でありながら、白人の世界で生き抜いてきたが、ルイスは公民権運動のデモなどの中で闘っていた。
 
親子の確執はあったが、セシルも、ついにデモに参加する決意をする。
ルイスからは「(デモに参加すれば)仕事を失うよ」といわれるが「(仕事よりも)お前を失った。申し訳なかった」とセシル。親子は和解した。
 
セシルは、2008年、「黒人が大統領候補になるなんて」と思いを馳せる。
 
映画は最初は、やや単調に感じたが、人権問題など時代のうねりをコンパクトにみせて、見応えがあった。
 
アメリカは、海外のことはあれこれ口出しするが、自分たちでは、200年も人種隔離政策があった、というメッセージも込められていた。アフリカ系アメリカ人などのマイノリティの人種差別問題は、根が深く、完全には解決されていない。セシルが、白人と同じ仕事をしているのに、黒人の待遇は低く、昇給もないということを歴代大統領に何度も訴えていたのが印象深い。
 
☆☆☆☆
 
 
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
「にほん映画村」に参加しています:ついでにクリック・ポン♪。