
映画「肉弾」(1968)を見る。岡本喜八監督の戦争という深刻なテーマを題材としつつも、あえて軽妙・滑稽にブラックユーモアと風刺で描いた反戦映画の傑作。
主演は「あいつ」を演じる寺田農(みのり)と大胆ヌードも見せる少女を演じた大谷直子が印象に残る。ATG配給の白黒・スタンダード作品。仲代達矢がナレーションを担当。116分。
理不尽な命令に従うしかない兵士の姿を通して戦争の不条理と個人の無力さや「肉弾」という言葉に象徴されるように国家による人間の消耗品化への批判を描いている。
「バカ野郎!」と叫び続けるド近眼のようなメガネをかけた21歳の幹部候補生の「あいつ」の青春と戦争を描くが、寺田農の圧倒する熱量の演技が見どころ。


<ストーリー>
オンボロ魚雷にドラム缶を縛り付けただけの、手漕ぎの特攻艇「どんがめ」のドラム缶の中で唐傘をさして雨風をしのぎ、漂流をつづける21歳の青年あいつ(寺田農)。
昭和20年の夏、魚雷を抱えたドラム缶が漂流し、乗っている「あいつ」はまだ終戦を知らない。
あいつは大学生で21歳の幹部候補生だが、広島に原爆が落とされ、戦局が危ぶまれる中、対戦車の特攻隊員にされ、一日だけの外出を許される。
活字が恋しくなって古本屋に行き、両腕をもがれた爺さん(笠智衆)とその妻で観音様のような婆さん(北林谷栄)に出会う。爺さんが小用の時は「あれ」といって婆さんが手伝う。
女郎屋に行くと、清らかなおさげ髪で兎年の少女(大谷直子)がいた。あいつは少女が女郎の1人かと思ったら、出てきたのは前掛けのおばさん(春川ますみ)だった。少女は両親を亡くして女郎屋を仕切る若い女将であることを知る。
雨の中に飛び出したあいつは、再び少女に出会い、やがて2人は防空壕の中で結ばれる。
翌日のあいつは対戦車地雷を抱えて砂浜にいる。
そこでは、小さな兄弟と米軍上陸の前に死のうとしていたモンペ姿のおばさん(三戸部スエ)と知り合う。
やがて、兄弟の弟からあいつは空襲で少女と少年の兄(頭師佳孝)が亡くなったことを知る。
それから作戦が変更され、あいつは魚雷と共に海に出て、敵をじっと待つ。

まもなく沖合で汚穢船(おわいぶね)の船長(伊藤雄之助)に助けられ、船長から敗戦を聞かされたあいつは、船に曳航(えいこう)されながら港に向かったが、ロープが切れて海に取り残されてしまう。
それから20年余の昭和43年、水上ボートなど海水浴客でにぎわう海に浮いているドラム缶の中で、白骨化したあいつは、未だに「バカ野郎」と怒鳴っている。

この映画で話題となった大谷直子。

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