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映画「金子差入店」(古川豪、2025)を見る。受刑者面会代行業を描くヒューマンサスペンス。

映画「金子差入店」(2025)を見る。風変わりなタイトルだ。内容はかなり重く、登場人物の言動に苛立ちさえ覚える。差し入れと言っても、残業で遅くなる人にパンと牛乳を差し入れるといったものではない。
刑務所の受刑者に面会してモノを差し入れしたり依頼者からの手紙を代読したりする「差入店(さしいれてん)」というのが存在し、店を営む家族と、彼らが巻き込まれる不可解な事件を描いたヒューマンドラマだ。

そもそも刑務所などへの差し入れを代行するという「差入屋」という仕事があることを初めて知った。きわめて特殊な仕事。

しかも関わっている人物が元犯罪者と分かると、世間の風当たりも強い。子どもに対する学校でのいじめにも発展するという重苦しい連鎖が続くので見ていてもキツイ。職業に対する偏見や反感もある。

無差別殺人の受刑者の独善的でゆがんだ性格には腹が立つ。男は全く罪のない女の子供を殺めたが、反省のかけらもない。そんな男に対して、差入屋を営む金子が「仕事に関わっていなかったら殺してやりたい」と放つ声は誰も否定できない。

金子が、息子の同級生殺害事件と、母親を殺した男との面会を求める女子高生との出会いをきっかけに、自身の過去と向き合い、家族の絆が揺らぎながらも希望を見出すところがこの映画のポイント。

異常性格の殺人犯を演じる北村匠海は最初は誰かわからないほどだった。ふてくされたような挙動不審の動きをみせ、独特の目つきが不気味。目に関しては過去の原因も語られていた。

母親が、殺人犯の息子が子供のころ好んでいた刺しゅう入りのブランケットと、手紙の代読を差入屋に託すが、息子は拒否(拒否されたことは依頼者に伝えない)。次の面会はいつだと迫られる金子。

金子は、預かった品を母親につき返す。母親は「二十歳までは一生けん命に育てた。その後までも親の責任というのか」と居直りにもとれる絶叫。

女子高生・二ノ宮佐知と殺人犯・横川との関係などネタバレになるので言えないが見どころ。

金子自身が母親から虐待・搾取され、愛に飢えていた過去を持ち、女子高生と母親を殺した犯人(横川)の母親も、娘に売春を強要し搾取していたなど、女子高生と金子には、歪んだ母親像・愛情に苦しむ共通点があった。

単なるサスペンスではなく家族や愛情や「差入」という行為を通じて、登場人物たちが自身の過去やトラウマと向き合い再生していく人間ドラマとなっている。

金子が、自身の仕事に関わることで様々な問題が起きていることから仕事に疑問を持つと、妻・美和子が「あなたの仕事は立派な誇りある仕事だ」叱咤するのだが…。

滅入るような内容の映画だったが、 厳しい制約やルールに精通し、刑務所、拘置所などへの差し入れを代行する“差入代行業”があるなど「知られざる世界が見られてよかった」(笑)。名取裕子真木よう子北村匠海丸山隆平岸谷五朗など俳優の鬼気迫る演技、狂気に満ちた演技が大いに見どころだった。

<主な登場人物>
■金子真司:丸山隆平…かつてすぐに怒ってしまう激しい気性から傷害事件を起こし、服役していた。出所後は、息子の和真のために激しい気性を改め、伯父の星田が営んでいた差入屋を引き継ぎ「金子差入店」を営む。
■金子美和子:真木よう子…真司の妻。金子家の母として一家を支える。家族思いだが、夫や息子の危機に対して揺れる感情も見せる。
■金子和真:三浦綺羅…真司と美和子の10歳の息子。真司が服役中に生まれた。幼馴染の女の子の死に直面。
■星田:寺尾聰…真司の伯父。真司に家業を引き継ぎ引退。
■徳山詩織:村川絵梨…和真の幼馴染・花梨の母親。
■徳山花梨(かりん):金子莉彩…詩織の娘で和真の幼馴染。小島高史に殺害された。
■小島高史:北村匠海…無差別殺人犯。花梨を殺害した容疑で拘置所に収容された。母のこず江と二人で暮らしていた。常軌を逸した言動を見せ、差入を拒否したり、真司との対面に応じたり感情の起伏が激しい。
■二ノ宮佐知:川口真奈…毎日のように拘置所を訪れる女子高生。横川への面会を何度も要求するが被害者家族のため面会が叶わない。

■横川 哲:岸谷五朗…出所してまもなく、二ノ宮家に強盗に入り、佐知の母・芳恵の殺害した容疑で拘置所に再び収容された。
■小島こず江:根岸季衣…花梨を殺害した小島高史の母。真司に高史への差入の代行と手紙の代読を依頼する。
■金子容子:名取裕子…真司の母。星田の妹。真司の留守を狙い美和子に金をせびりに来るなど母親失格の自堕落女。

■久保木:甲本雅裕…金子家と関係性の深い弁護士。横川の弁護も担当している。
■刑務官:モロ師岡…受刑者との面会の受付を担当している。差し入れ品などを厳しくチェックする。

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監督・脚本: 古川豪(長編初監督作)
主題歌: SUPER BEAVER「まなざし」 

 

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