
映画「マルリナの明日」(原題:Marlina the Murderer in Four Acts、2017)は邦題は穏やかだが、2019年5月公開時には原題通りの「殺人者マルリナ」のタイトルだった。監督は本作が3作目となるインドネシアの若手女性監督モーリー・スリヤ。
4幕仕立てで語られる女性の抵抗を静かに描き出す、インドネシア版マカロニウエスタン風のロードムービー。
2017年開催の第18回東京フィルメックスのコンペティションで最優秀作品賞、2018年インドネシア映画祭で作品賞など国内外で数々の賞を受賞したインドネシア映画。
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映画は冒頭からマカロニウエスタンのような荒野を背景に音楽が流れるが、そこに登場したのは、ジャンゴや馬ではなくオートバイだった。ただ時間の経過とともに移動手段としての馬も登場する。
オリジナルのタイトルにあるように、物語は4幕の構成で進む。

【第1幕: 強盗団】
スンバ島の荒涼とした大地にたたずむマルリナの家に、強盗団のボス、マルクス が手下を引き連れて押し入る。
マルクスは牛の代金が未払いだと言いがかりをつけ「俺たちに飯を作れ」「この家は今日から俺たちのものだ」と支配を宣言。
マルリナは怯えるが、静かに状況を見定めている。さらにマルクスは、マルリナに性的暴行を強いる。
しかし、マルクスが風呂場に入った隙にマルリナは隠していた毒をスープに混ぜ、手下数名を殺害。
その後マルクスが油断しているところをマルリナはマチェーテ(山刀)で彼の首を斬り落とす。

【第2幕:旅】
マルリナは、マルクスの首を手に「正当防衛」を訴えるため警察署まで行こうと旅に出る。道中、妊娠中の友人ノヴィと再会する。
ノヴィは夫からの暴力に悩んでおり「夫が戻ってこない。出産が不安だ」とマルリナに弱音を吐く。

【第3幕:自首】
二人は一緒に警察へ向かうが、警察官たちは状況をまともに理解しようとせず、書類の形式ばかり気にしたり、半ば見下した態度を取る。
同じ頃、マルクスの手下たちはマルリナへの復讐を決意。
ノヴィの陣痛が始まり、二人はいったんノヴィの家へ戻る。その家には、暴力的なノヴィの夫が戻って来ており、空気は緊張に包まれる。
そこにマルクスの仲間の二人が現れ、ノヴィの夫を制圧して、マルリナの居場所を聞き出す。
強盗団はノヴィを人質にとり、マルリナに「マルクスの首を返せ」と要求。
マルリナは首を奪われ、事態は強盗団の側に再び傾いたように見える。癇癪を起こすノヴィの夫、出産が近づくノヴィ、攻撃的な強盗団。静かに機をうかがうマルリナ。緊張が極限に達する。
【第4幕:出産】
ノヴィは絶叫しながら出産を迎える。夫は役に立たず、混乱の極み。その中で、ノヴィは自身を縛る様々な暴力から精神的に解放されていく。
一方、強盗団はノヴィを人質にしつつ、マルクスの首を奪還したが、その油断を突いてマルリナが反撃。奴らを一人ひとり倒し、ノヴィと赤ん坊の身を守り、ついに復讐劇は終わりを迎える。
物語は、出産したノヴィと赤ん坊を、マルリナが静かに見守るという穏やかな光景で幕を閉じる。
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冒頭、小さな墓石に「トパン」という名があったが、トパンは何らかの事情で亡くなっていたマルリナの息子だった。マルリナの住んでいたバラックのような家には、亡くなったミイラとなった夫が壁に寄りかかって座っていた。
マルリナが歩くと、あとから首のないマルクスの亡霊が歩いていたりと、不気味な描写もある。
監督の力量不足かスッキリしない映画だが、インドネシア版の復讐劇としてはみどころはある。
<主な登場人物>
■マルリナ…未亡人。孤立した家で静かに暮らしていたが、強盗団の襲撃を機に人生が一変。冷静で寡黙だが、危機の中で強い意志と行動力を見せる。
■ノヴィ…マルリナの友人。妊娠中で気が強く、心優しい。マルリナを守ろうとしつつも自分自身の家庭問題(暴力的な夫)にも苦しんでいる。
■マルクス…強盗団のリーダー。威圧的で残忍だが、マルリナの反撃によって命を落とし、彼の“仲間の復讐”が物語に火をつける。
■強盗団の仲間たち…マルクスの手下。マルリナに対し復讐しようと追い回し、物語の緊張を高める。
■村の警官・役所の男たち…形式的で頼りにならず、女性が直面する“制度の壁”を見せつける態度。


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