
映画「ローマ法王の休日」(原題:Habemus Papam、2011)は、監督のナンニ・モレッティは、精神科医を演じているほか、脚本・原案・製作も兼ねている。出演はミシェル・ピコリ、ナンニ・モレッティ、イェジー・シュトゥル、レナート・スカルパなど。
近年の「2人のローマ教皇」「教皇選挙」などを見ていたので、お堅いイメージの教皇選挙(コンクラーヴェ)に関連する映画でも、わかりやすい。
原題の「Habemus Papam」はラテン語で新しいローマ法王が決まったことを意味する(英題「We Have a Pope」)。
邦題の「法王」を取り除けば「ローマの休日」。世間知らずのアン王女が一般市民にふれるところと、法王がバチカンを抜け出して、一般市民の生活に飛び込むというのが似ており、その意味では、奇をてらったものでもない。
フランスの名優ミシェル・ピコリ(撮影時85歳)が恰幅がいいので、最初はピコリと分からなかったが、味わい深い演技を見せている。法王の行動に翻弄される報道官を演じるイェジー・シュトゥルも、法王を見失って自責の念に駆られる姿が滑稽にも映る。
<ストーリー>
ローマ法王の逝去に伴い、次期法王を決める法王選挙(コンクラーヴェ)が行なわれる。世界中のカトリック教徒が固唾を飲んで見守る中、誰も予想していなかった無名の枢機卿メルヴィル(ミシェル・ピコリ)が新法王に選ばれる。
しかし、ベランダでの就任の演説を前にして、メルヴィルは重圧に耐え切れずに突然叫び声をあげて部屋に戻ってしまう。
「法王などとてもつとまらない」と叫ぶ。
カウンセリングでは一流と言われる精神科医にも診せるが、なかなかうまく行かない。
ヴァチカン事務局は、秘密裏に精神科医と離婚した元妻の精神科医と会わせたが、その後、スキを見てローマの街に逃げ出してしまう。

離婚した精神科医の女性は、子供たちから「このひと(老人=法王)は新しい彼氏?」と聞かれ、まさかという表情だが、人柄には惹かれるものがあり、複雑な苦笑いを浮かべる。
この事態にヴァチカン事務局は、法王が行方不明になった事実を隠し、部屋に籠っているように衛兵を使って見せかけ、その間にその行方を追うのだった。


・・・
新法王メルヴィルは市井の人々と接する中で信仰心や法王という存在について見つめ直すこととなるが、その間、ニュースではさまざまな噂が飛び交っている。
実はメルヴィルには役者志望だったが才能がなく演劇学校への入学を果たせなかった過去があった。妹は役者になったのだともいう。
そんなメルヴィルが知り合った役者たちの芝居「かもめ」を観劇をしていると、そこにヴァチカン報道官の計画に賛同した枢機卿らが大挙して現れ、メルヴィルは見つかり、ヴァチカンに戻らざるを得なくなる。

新法王として初めて信者たちの前に姿を現したメルヴィル。
固唾をのんで見守る市民たちに向かって「自分は導く者ではなく、導かれる者である」との言葉と謝罪の言葉を残し、信者らの前から姿を消してしまう。後には落胆する信者たちと枢機卿らの姿が残された。
・・・
ラストは「えぇ~?」というものだった。また改めて教皇選挙が行われたのか、予想を裏切る結末だった。バチカンの教会内では、枢機卿たちがバレーボールやポーカー、カードゲームなどに興じてにぎやかに過ごし、聖職者も同じ人間であることが描かれている。

<主な登場人物>
■ローマ法王(メルヴィル): ミシェル・ピコリ…コンクラーヴェで新法王に選ばれるが、プレッシャーから街に逃げ出してしまう。
■ヴァチカン報道官: イェジー・シュトゥル…国民に向けた法王の窓口の報道官。法王メルヴィルをなだめすかすが、ことごとく失敗し、落ち込む。
■グレゴリー枢機卿: レナート・スカルパ
■精神科医の男: ナンニ・モレッティ (兼監督・脚本・製作)…精神科医では世界一を自負。2番目は元妻とぽろっと漏らす。そのことから事務局が非公式に、元妻のカウンセルングうぃうけに行く。
■精神科医の女: マルゲリータ・ブイ…法王と知らずにカウンセリングを行う。
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