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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「国宝」(李相日監督、2025)を見る(原作・吉田修一)。今年度邦画ベストワンか。

映画「国宝」(2025)を見た(松竹系シネコンMOVIXさいたま)。李相日監督は「悪人」「怒り」に続いて吉田修一の小説を映画化。上映時間は3時間近い175分と長尺だが、歌舞伎世界の舞台と裏側が見られまったく飽きさせない。

今年の上半期では邦画のベストワン個人の感想ですで、年間でもベストワン作品になるかもしれない。2025年第78回カンヌ国際映画祭の監督週間部門出品。

任侠の家に生まれながら、歌舞伎の女形役者として芸の道に人生を捧げた男が「人間国宝」になるまでの激動の50年間に及ぶ人生を描いた人間ドラマ。

歌舞伎はテレビでの襲名披露の口上くらいしか見たことがなかったが、まるで歌舞伎座で「曽根崎心中」でも見ているような感覚になった。

この映画では、歌舞伎世界の世襲「血筋が芸を上回る」という決まり事に外の世界から飛び込んできた才能が血筋を凌駕する姿が描かれている。

主役の吉沢亮横浜流星の2枚看板俳優の鬼気迫る女形二人の舞台演技が本物感がすごい。このほか、重厚な渡辺謙田中泯寺島しのぶといったベテラン勢が作品のレベルを押し上げている。田中泯演じる国宝の歌舞伎役者の眼光鋭いまなざしや言葉には重みがある。

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任侠の一門に生まれた喜久雄(吉沢亮)は、15歳の時に抗争によって父を亡くし天涯孤独となったが、上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎(渡辺謙)が喜久雄の天性の才能を見抜き、引き取り、歌舞伎の世界へ飛び込むことになる。

そこで、半二郎の実の息子・俊介(横浜流星)と出会う。生まれながらに将来を約束された御曹司・俊介と喜久雄は、正反対の血筋を受け継ぎ、二人は兄弟のように育てられ、親友として、ライバルとして互いに高めあい、芸に青春を捧げていく。

そんなある日、事故で入院した半二郎が自身の代役に俊介ではなく喜久雄を指名したことから、2人の運命は大きく揺るがされる。

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喜久雄が演じていた主な歌舞伎の演目には「道成寺」(白拍子花子が鐘に飛び込む場面で知られる舞踊劇)「藤娘」(藤の花の精が恋の喜びと切なさを舞う人気の舞踊)「京鹿子娘道成寺」(女型の大役であり、喜久雄の芸の頂点を象徴する演目)などがあった。

これらの演目を通じて、喜久雄の芸への情熱や葛藤が描かれていて「京鹿子娘道成寺」は、女型としての彼の技量と精神性を示す重要な場面となっていた。

映画では、四代目中村鴈治郎が歌舞伎指導を担当し、俳優たちに本格的な所作を指導しているという。そのため、劇中の歌舞伎シーンは、リアルで迫力のあるものとなっている。

また喜久雄のライバル・大垣俊介との共演シーンでは、二人の演技が火花を散らし観客を魅了した。歌舞伎に対して目が肥えている客や通をもうならせる所作であるようだ。

また物語上、すべてを犠牲にしても歌舞伎役者として成功するという「悪魔との取引」も大きなテーマとなっていた。

一方で、歌舞伎の世界の厳しさがこれでもかと描かれる。稽古の芝居の訓練では容赦がなく、まさに死に物狂い(満身創痍)。

この映画は、年末から始まる賞レースでの作品賞はもとより、喜久雄を演じた吉沢亮など俳優・演技部門で大本命となりそうだ。

 

<主な登場人物>
■立花喜久雄/花井東一郎:吉沢亮…ヤクザの息子。15歳で抗争で父を亡くし天涯孤独となるが半次郎に拾われ歌舞伎の世界に。
■大垣俊介:横浜流星…喜久雄の生涯のライバル。半二郎、幸子の息子で将来を約束された御曹司。一時期歌舞伎から離れる。
■花井半二郎:渡辺謙上方歌舞伎の名門の当主。15歳の喜久雄の天性の才能を見抜いて引き取る。
■大垣幸子:寺島しのぶ…半二郎の妻。
■福田春江:高畑充希…喜久雄の恋人。
■立花権五郎:永瀬正敏…ヤクザの組長。喜久雄の父。
■小野川万菊:田中泯…歌舞伎界のレジェンド的な人間国宝
■梅木:嶋田久作…会社社長。歌舞伎のタニマチ(ひいき筋)。

 

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