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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「ブリキの太鼓」(原題:Die Blecht- rommel、1979)を再見(ディレクターズカット版、2010)。

映画「ブリキの太鼓」(原題:Die Blechtrommel、1979)を40数年ぶりに再見した。今回見たのは、幻の未収録シーンを20分以上追加したディレクターズカット版(163分バージョン、2010)。第一次大戦と二次大戦の間のポーランドダンツィヒの町を舞台に3歳で大人になることを拒否し自らの成長をとめた少年オスカルと彼の目を通して見た大人の世界を描くドラマ。

ノーベル文学賞作家ギュンター・グラスの代表作を「テルレスの青春」「パリよ、永遠に」の鬼才監督フォルカー・シュレンドルフが監督・共同脚本を務めて映画化した社会派ドラマ。

醜い大人の世界に入ることを拒み、自ら成長を止めたオスカルは、ブリキの太鼓を叩き、奇声を発するとガラスを破壊するという超能力に目覚める…。

臆病者の父や、従兄との不倫を続ける母など、戦争が生み出す不条理に翻弄される人々を、グロテスクな描写と人間の愚かさをブラック・ユーモアたっぷりに描き出すセンセーショナルな作品。アカデミー賞外国語映画賞カンヌ映画祭パルム・ドール受賞。

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1899年、ポーランド自由都市ダンチッヒ(現在のグダニスク)。少数民族であるカシューブ人が多く暮らしていた。オスカルの祖母もカシューブ人で、憲兵に追われる男が祖母の前に逃げてきて「お願いだ」と助けを乞うので、祖母は4枚のスカートの中に男を隠す。

二人の男たちに男が来たか聞かれ、逃げた方向を示す。このジャガイモ畑であった男と結ばれ、オスカルの母アグネスを生む。

オスカルは出生の瞬間、両親が「この子が3歳になったらブリキの太鼓を買う」という言葉を赤ん坊ながら忘れなかった。

3歳になったオスカルは「きょう一日、大人たちを観察して成長することを止める」と決めた。3歳になって父にブリキの太鼓を買い与えられたオスカル。

ある日、オスカルが階段から落ちた。1センチも成長しないことが分かった。事故が原因で成長が止まってしまったと大人たちに思い込ませることになった。「僕の作戦は成功した」とオスカルのナレーションが続く。

オスカルは奇声を発することでガラスを破壊する能力を身につけ周囲を驚かせる。見世物の一団からその能力に目が付けられスカウトされる。

日和見的で愛情に欠ける父と、夫婦仲が冷え不倫に走る母。ナチスドイツの支配と戦後の社会の中でオスカルは…。

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初見では、成長の止まった子どもが太鼓をたたいて叫んでいたなという印象くらいしか覚えていなかったが、再見してやはり強烈なインパクトを残したのはオスカルの存在。

11歳でオスカルを演じたダーフィト・ベンネントは、狂気の演技を見せるが、子どもが演じるには不適切過ぎるシーン(確かにアレは)があり当時かなりの物議を巻き起こしたという。

成長をやめてしまうオスカルに投影されるのは、ドイツやソ連という大国の干渉やドイツ国内での民族問題において危うい立場にあり続ける人々の自虐的でシニカルな視点といえる。

映画は20歳を過ぎて母を亡くしたオスカルが、再び成長を始めるところで終わる。

見世物で登場する小人症(低成長症)の人物や成長を止めた少年といった特異なキャラクターを通して、20世紀のドイツの歴史、マイノリティの個々人の自由と抑圧、社会の偽善と残酷さなどを象徴的に描いている。

主人公の「成長しない」という選択は「社会に染まらない存在」としてのアイロニーが強調されているといわれる。

また、ナチス台頭時代に、オスカルの父も含めて大人たちがナチズムに無自覚に巻き込まれていく姿に対して、オスカルはそれを冷静かつ皮肉な視点で見つめているのだ。

母親が夫に不満があるとはいえ、愛人の男と3人で暮らすという性に対する奔放さも、正常と言われたナチズムに対して抑圧された異質なものとして描かれている。

<主な登場人物>
■ダーフィト・ベンネント:オスカル・マツェラート…3歳で成長を止めた少年。太鼓をたたき、気勢を上げるとガラスが割れる能力を持つ。
■マリオ・アドルフ:アルフレート・マツェラート…オスカルの父親。日和見主義で頼りない。ドイツ人でナチス党員。
■アンゲラ・ヴィンクラー:アグネス・マツェラート…オスカルの母親。夫と愛人(いとこ)と一つ屋根の下で暮らすといういびつな関係。 
■ダニエル・オルブリフスキー:ヤン・ブロンスキ…母アグネスのいとこ。アグネスと長く恋人関係にある。オスカルの実父?
■カタリーナ・タールバッハ:マリア・マツェラート…オスカルの初恋相手。オスカルの子を身ごもるがアルフレートの後妻となる。
シャルル・アズナブールマルクス…太鼓などの雑貨屋の店主。
■フリッツ・ハックル:べブラ…バルタザール(聖書の賢者の象徴)として登場する小人症の見世物の男。

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