「日本誕生」(1959)を見る。東宝1,000本記念として製作。目標は壮大なスケールの「十戒」(1956)のような映画だったといわれる。
阿蘇山にて400名のスタッフでロケを敢行。東宝のオールスターキャストで描くスペクタクル。日本”沈没”映画は新旧含めて何度も見たが、日本”誕生”映画は初めてかもしれない。日本神話の一つ、国生み(くにうみ)神話を描いているようだ。
日本神話のイザナギ(伊雅那岐)、イザナミ(伊邪那美)と、アメテラスノオオミノカミ(天照大御神)、スサノウ(須佐之男、素戔男尊)、ヤマトタケルノミコト(日本武尊)などが登場し、物語は、小椎命(日本武尊)を主人公としつつ、合間に太古の神々の物語を挿入した二重構造として描いている。
登場人物のキャラクターの読み方が難しく聴きとれなかったり、人物の関係性を頭に入れるのが難しい(日本語字幕が必要。笑)。登場人物の一覧を手元に置いてみるのもいいかもしれない。日本神話の一端を知ることができる。
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(大まかなストーリー)語り部の媼(おうな=老女のこと)が話すイザナギ(伊雅那岐)、イザナミ(伊邪那美)の両神の国産みを中心に日本神話の幻想的な映像から始まり、主題である日本武尊の物語に入っていく。
小椎命(オウスノミコト、三船敏郎)は、兄を追放するという勇猛な性格を父である景行天皇(けいこうてんのう、二代目中村鴈治郎)に警戒され、九州の熊曽征伐を命じられる。
大伴建日連(オオトモノタケヒ、東野英治郎)が一族出身で天皇の後添いの子・若帯日子命(タラシナカツヒコノスメラミコト、宝田明、後の成務天皇)を皇位につけようと画策しているのである。
伊勢のおばの倭姫(ヤマトノヒメ、田中絹代)のところで巫女の弟橘姫(オトタチバナヒメ、司葉子)に出会う。
女装して近づくという巧みな計略で見事に熊曽建(志村喬)を討ち取った小椎は熊曽の弟タケルから兄の非道の報いだが、兄を討ってもいいと思っていたと告白される。
そして日本武尊(ヤマトタケル)を名乗ってくれと頼まれる。大手柄を立てて都に帰った日本武尊に、天皇は休む間もなく東国の征伐を命じる。父は自分を嫌っているのか、と沈痛な気分になる。
語り部の媼(オウナ)は天照大神(アメテラスノオオミノカミ、原節子)が高天原にいた時、弟の須佐之男(スサノオ、三船敏郎、2役)が悪戯を繰り返し、天岩戸(アマノイワト)に隠れてしまい、災いが起こった話をする。
倭姫は須佐之男が父の伊邪那岐から疎まれていた話をして、日本武尊は天皇からという一振りの剣(叢雲剣、別名・草薙の剣)と私からという万が一に開けるべき袋を与えられて力づけられる。
その剣の由来は神代の昔、須佐之男(スサノオ)が八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治して奇稲田姫(クシナダヒメ、上原美佐)を助けた際に手に入れたものであったが、天皇ではなく倭姫がくれたものであった。
尾張で美夜受姫(ミヤビヒメ、宮簀媛、香川京子)に招かれ、殺されそうになるが、心が通じる。相模国に入り、焼津でだまし討ちにあって猛火に囲まれた日本武尊の命を剣が救い「草薙(くさなぎ)の剣」と呼ばれるようになる。
天皇の悪意を確信し、征伐の無意味さを知り、大和に引き返すことにする。途上の船で、大嵐で遭難しそうになる。この時、弟橘姫が人身御供となって海の中に飛び込み、皆を助ける。
日本武尊は戦いは無益と倭姫と熊襲の弟(鶴田浩二)に教えられたからもはや大和には帰らぬという。
しかし、大伴一派に父が討伐を止める命令を出し、日本武尊を待っていると騙され、敵の総攻撃に遭い命を落とす。
魂が一羽の白鳥となって空に向かい、大伴の一味と手勢は神罰により洪水と溶岩流に飲まれて全滅。白鳥は倭姫の館を旋回した後、高天原に向かって飛んでいく。
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CGのない時代に八岐大蛇(やまたのおろち)などの特撮は見どころだった。八岐大蛇は初の操演(特殊撮影で、着ぐるみや模型などを、さまざまな手法を用いて動かすこと、また、その技術)による怪物として描写された。
湖から現われる八岐大蛇は、水底にレールを敷いて動かした。頭部は内蔵したゴムチューブに圧搾空気を送ることで操作するものと、スタッフが腕を入れて操るギニョールが併用された。オロチの操演者は4人がかりで、かなりの気苦労があったとのこと。
当初は陸上で使用する前提で前者が製作されたが、水中では使えないため、急遽後者が製作された。口はラジコンで可動する。
須佐之男と八岐大蛇との戦いは、ブルーバック合成で表現された。撮影では、スクリプターの秒読みにあわせて助監督が大蛇の首に振った番号を指示し、演じる三船敏郎がそれに従い動くという手順だったという。
ゴジラシリーズなどに登場するキングギドラは、本作品の八岐大蛇を参考にしたとされる。
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<主要人物>
■小椎命(オウスノミコト、日本武尊)・須佐之男命(スサノオのミコト、2役) - 三船敏郎
■弟橘姫(おとたちばなひめ)- 司葉子
■薊(あざみ)- 水野久美
■奇稲田姫(クシナダヒメ) - 上原美佐
■美夜受姫(ミヤビヒメ) - 香川京子
■倭姫(ヤマトノヒメ) - 田中絹代
■天宇受女命- 乙羽信子
■語り部の媼(オウナ) - 杉村春子
■若帯日子命- 宝田明
■五百木之入日子命 - 久保明
■景行天皇- 二代目中村鴈治郎(大映)
■大伴建日連 - 東野英治郎
■吉備武彦 - 平田昭彦
■八雲 - 三島耕
■大伴小建 - 伊藤久哉
■大伴久呂比古- 田崎潤
■熊曽建・兄- 志村喬
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