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映画「さがす」(2022)を見る。犯罪ドラマ。

さがす」(2022)を見る。監督は片山慎三、主演は佐藤二朗伊東蒼(あおい)で、父娘役で共演。安楽死やネットを通じての自殺ほう助といった犯罪を取り上げ、かなり重苦しい内容となっている。

伊東蒼は先日開かれた「第32回日本映画批評家大賞授賞式」で「さがす」により新人女優賞(小森和子賞を受賞した。

しっかりものの中学生「楓」役の好演が評価された。新人賞と言っても芸歴は10年以上あり、6歳の時にドラマ「アントキノイノチ〜プロローグ〜 天国への引越し屋」でデビュー。

2016年、その年の多くの映画賞を受賞した映画「湯を沸かすほどの熱い愛」で子役ながら重要な役どころを演じ「第31回高崎映画祭 最優秀新人女優賞」を受賞。

300万円の懸賞金欲しさに指名手配犯を捕まえようとして姿を消した父親と、不安を抱えながらも父の行方を追う娘の姿を描く。

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スーパーで「所持金に20円足りないから」という理由で万引きをして捕まった原田智(佐藤二朗)のところへ、娘の楓(伊東蒼)が駆けつけ、不足分の20円を店員に差し出して許しを乞う。

智はその帰り道、楓に「電車で300万の懸賞金の掛かった、山内照巳という連続殺人犯を見かけた」とつぶやく。

「あいつを捕まえれば三百万も貰えるんやで。そんな金があったらなあ」と夢のようなことをいう智に、楓は「そんなの当てにしないで働き」と相手にしない。

その翌日、楓が目を覚ますと、智が失踪していた。調べ回っていると、その日、智が日雇い労働の現場に出勤していることが判明し現場に向かう。

「お父ちゃん」と楓が呼び掛けたその人物は、智ではなかった。背が高く痩せていて、黒い眼鏡を掛けた若い男だった。「原田智さんですよね?…すみません。人違いでした」 楓は、そう呟いてその場を後にする。

楓は、町に貼り出された指名手配犯のポスターを見てあることに気づく。連続殺人犯の山内照巳(清水尋也)という男と、父と同じ名前で工事現場で働いていた男の顔が酷似しているのだ。

そして、山内がこれまでに犯した犯行と、父との関係について探り始める。
父が経営していたが家賃を払えず手放すことになった卓球教室を訪れた楓は、物入れで寝ていた山内と鉢合わせし、逃亡する山内を追いかける。

塀をよじ登って逃げようとする山内のズボンを楓はつかんで離さなかった。山内はズボンを脱いで逃げたが、楓はズボンのポケットに、智のスマホと、神戸港・果林島の往復乗船券が入っているのを発見し、果林島に行くことを決める。

果林島に着くと、島のある一軒家で警察沙汰の事件が起きていた。楓は、家の中に横たわる人物を見て取り乱す。「その人、私のお父ちゃん。お父ちゃん!」と叫んで駆け寄ろうとする楓を警官が制止するのだが…。
・・・
ネット社会時代の裏の闇の世界での自殺願望をほのめかすような書き込みをこまめにチェックしてターゲットを絞り、自殺願望の人と会い、金銭を得て自殺ほう助を行う犯罪を描いている。

犯罪に手を染めている山内という人物は、原田智から依頼を受けて、原田の妻を殺めた事実がある。「ただではないですよ。”有料コンテンツ”で20万円です」という。

さらに、お金に困っている原田を相棒にしようと「世の中には死にたがっている人がたくさんいる。これは救済です」と言ってのける。原田が「人を殺せっていうのか」と反発すると「救うんです」と共犯に巻き込むのだ。

内容がかなりシリアスで、安楽死や自殺ほう助で金銭を受け取る犯罪を描いていて恐ろしい。PG-12指定。

佐藤二朗というと、コメディタッチの映画が多いが、一切笑いを封印して、複雑な心理をリアルに演じている。卓球教室を経営していたというだけあって、娘とのラリーが10分ほど途切れなく続いているシーンは驚き。

伊東蒼は現在17歳だが、大いに期待される女優と言えそうだ。

【主な登場人物】
■原田智:佐藤二朗
1年ほど前に妻の公子と死別した後は、娘の楓と2人で暮らす。以前は卓球教室を経営していたが現在は定職を持たず日雇労働の身。指名手配中の連続殺人犯を目撃したと娘に告げたまま、翌朝姿を消してしまう。
■原田楓:伊東蒼
原田の娘。情けない姿をさらす父に呆れたそぶりを見せつつも性根では慕っており、父から教えられた卓球の腕もそれなりに上手い。他人からかけられる厚意を素直に受け取れず、偽善として理解してしまう潔癖さがある。行動力に溢れており、行方不明になった父を捜索し始める。
■山内照巳:清水尋也
指名手配中の連続殺人犯で、通称「名無し」。SNSを通じて自殺希望者とコンタクトし「その希望をかなえる」と称して連続殺人を行い、死体を損壊してクーラーボックスに保存している。
ムクドリ森田望智
山内に自殺幇助を依頼した女性。ムクドリSNS上のハンドルネームで本名不明。山内に殺されようとするその間際に警官が現場に立ち寄ったことで生還するが、その際に山内が警官を襲って逃亡したことで連続殺人事件が明るみに出る。
■花山豊:石井正太朗
楓のクラスメート。楓に恋の告白をするが相手にしてもらえない。その後も智の捜索や山内の調査に協力し続けるが、楓が「山内を追いかけて果凛島へ行くのに付き合え」と言ったときには連続殺人鬼を相手にすることに怯え「カノジョになるならついていってもいい」と要求する。
■蔵島みどり:松岡依都美
楓の担任。智の失踪について楓から相談を受けたときには親身に応じて、警察に付き添ったり自費で尋ね人のビラを作るが、失踪が明確になって自暴自棄になった楓から偽善的だと痛罵されてしまう。
■原田公子:成嶋瞳子
智の妻で楓の母。筋萎縮性側索硬化症を発症して歩行することができなくなり、智の前で希死念慮(きしねんりょ:精神障害の症状のひとつ)を隠さなくなる。そこからほどなく卓球教室で縊死(いし:首つり死)しているところが発見された。
■馬渕:品川徹
果凛島に住むみかん農家。逃亡中で飲み水にも困っていた山内にみかんを与え、さらに自宅に迎え入れて保護する。

 

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