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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「西部戦線異状なし」(2022、Netflix、劇場未公開)を見る。

西部戦線異状なし」(原題:Im Westen nichts Neues(英)All Quiet on the Western Front)2022、Netflix)を見る。原作は1928年に発表されたエリッヒ・マリア・レマルク反戦小説。劇場上映なら大迫力間違いなしの作品になったであろうことを考えると動画配信のみは残念。

塹壕(ざんごう)と呼ばれる敵の銃砲撃から身を守るために掘られた木製・鉄製の溝での攻防は「塹壕戦」と言われ圧迫感があり、緊迫感を与えている。戦車が塹壕にのしかかってくる。

今回の作品は、第3回アカデミー賞で作品賞と監督賞を受賞した「西部戦線異状なし」(1930)、1979年のテレビ映画に続き三度目の映像化。今回の作品も第95回アカデミー賞に多数の部門でノミネートされている。初めてドイツの作品であることも注目。

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舞台は第一次世界大戦勃発から3年後の1917年。ドイツのとある町。
「弱い心は不要。躊躇いは祖国への裏切りだ。軍服に恥じない戦いをしろ。我がドイツの未来は偉大な世代に委ねられる。君たちだ」

愛国心溢れるスピーチに盛り上がって気勢をあげる若い男たち。17歳の青年パウル・ボイメル(フェリックス・カマラー)は、英雄になることを夢見てカット(アルブレヒト・シュッフ)、チャーデン(エディン・ハサノヴィッチ)など3人の友人らと共にドイツ帝国陸軍へと入隊。群衆の歓声に送られて、戦場へ向かう大部隊が進軍してゆく。

しかし北フランスの戦地に送られるやいなや敵軍からの砲撃に見舞われ、仲間が次々と死んでいく様を目の当たりにすることになる。

やがてパウルは、戦地に出向くまで抱いていた高揚感を失い、戦争がもたらす痛みや飢え、絶望、死の恐怖に追い詰められていく…。


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メガホンをとったのは、ベネディクト・カンバーバッチ主演のドラマシリーズ「パトリック・メルローズ」などを手掛けたエドワード・ベルガー監督。ドイツ人としての視点を取り入れることを重視しながら、原作小説や過去の映像化作品への敬意を払い、原作にはない新たな描写も取り入れている。

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戦地での生々しい描写の数々がすさまじいほどに描かれる。戦場の光景はリアルすぎて、実際の戦場に放り込まれたような錯覚を覚える(没入感はすごい)ほど。

パウルが、敵の一人をナイフで何度も刺した後、相手は息を引き取るが、そのポケットにあった家族の写真を見て、みな自分たちと同じ人間であることに思いをはせ、後悔するシーンが印象的。

農家からガチョウ1羽を命がけで奪ってきて、仲間たちと料理して食べるときだけは、唯一最高の喜びで歌も飛び出すが、それ以外は、痛みと苦しみの連続で、次々に仲間たちが亡くなっていく。

休戦協定が締結された後に、その執行の直前に無事に故郷に帰れると思っていた兵士たちを、再び戦場に送り込むという脚本に変えられていて、賛否を呼ぶところ。

同じく第一次世界大戦の兵士(イギリス兵)を描いた「1917 命をかけた伝令」と重なる点が多い。どちらも徹底的に没入感だけに特化した映画と言える。


【主な登場人物】

パウル・ボイマー(フェリックス・カマラー):

17歳の少年。親に内緒で友達たちと兵士に志願する。
■スタニスラウス・カチンスキー(カット) (アルブレヒト・シュッフ):歩兵中隊の古参兵。本業は靴職人。パウルと絆を築いていく。故郷に妻がいるが息子を亡くしている。
■アルベルト・クロップ(アーロン・ヒルマー):パウルの友人。明るいムードメーカー。女性のポスターの切り抜きを持ち歩いている。
■フランツ・ミュラー(モリッツ・クラウス):パウルの友人。女性のグループにナンパしに行き、そのまま帰るフリをする。
■ルードヴィヒ(アドリアングリューネヴァルト):パウルの友人。メガネくん。一番勉強が得意。
■チャーデン(エディン・ハサノヴィッチ):パウルの所属する歩兵中隊の兵士。足に重症を負ってしまい衝撃的な決断を下す。
■エルツベルガー(ダニエル・ブリュール):ドイツ代表の交渉人。休戦するためフランス軍と交渉する。

 

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