アマゾンで、未来予測の様なやや硬い本をポチッたが、その時に、こんな本もどうかとタイトルが上がっていた中に「老いの品格 品よく、賢く、おもしろく」(和田秀樹、PHP新書)というのがあり購入した。
かつて「ハケンの品格」といったドラマがあったり”品格”というのが一時はやったが、高齢者専門の精神科医が書いた本というので興味があった。
著者の経歴を見たら、著書をたくさん出しているが、映画の監督もしていることに驚いた。
初監督の長編映画「受験のシンデレラ」(2007)は、第5回「モナコ国際映画祭で最優秀作品賞、最優秀男優賞、最優秀女優賞、最優秀脚本賞の4部門を受賞している。
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著者がこの本で言う品格とは、上品な老人とか道徳的な老人ということではなく「めざしたいのは洒脱な老人、おもしろい老人、生き方がうらやましいと思われる老人」という。
具体的には”不良老人の元祖”とも呼ばれた文豪・永井荷風や、歌舞伎俳優の坂田藤十郎などで、現在のタレントの中で洒脱な老人と思えるのは、世俗の価値観に縛られることなくひょうひょうとしているというイメージの高田純次(75歳)の生き方だという。「適当」「いい加減」の代名詞的存在だが、高田純次キャラを目指せとあちこちで言っているという。
本質としてこの本が言いたいのは、医療の現場で、解剖結果などを長年見てきた結論は「85歳を過ぎると、脳にアルツハイマー型の神経の変性がない人、体内にがんがない人、動脈硬化が生じていない人は一人もいない」ということ。
老いに対するスタンスが2極化しているとも。「アンチエイジング」などで、いつまでも若々しくありたい、老け込みたくないと考える人たち。健康食品などで「90歳でもこんなに元気」を見てそう思う人も多い。
一方で、その対極が「反アンチエイジング、自然に老いる派」。
ここで著者が強調しているのは、老いと闘うか、受け入れるか。著者自身は、残念ながら、人間は最終的に老いを受け入れざるを得ないと考えている。
闘える間は闘いぬくが、人間はいつかはボケるということを覚悟したほうがいいという。老いを受け入れることは「移行」だともいう。老いと闘うフェーズの後は、老いを受け入れるフェーズで、できないことはあきらめて、できることを活かしていくという考え方だ。
自立した生活が送れる期間である「健康寿命」は、いまは男性がおよそ72歳、女性がおよそ75歳という。歯を食いしばってまで老いと闘うのは、このあたりまでのようだ。
医師の腕は天性…という考えは捨てたほうがいいとも。テレビドラマの天才医師のような「私、失敗しないので」ではなく、失敗しながら反省をして腕を上げていくのが医師だという。
高齢者には、無駄に歳をとっている人と、だてに年を取っていない人がいて、品格のある高齢者になるとは「だてに歳をとっていない人」になることというのが結論のようだ。
好かれる高齢者は、どこかかわいげがあるもの。「あの人は憎めない」といわれるのがいいという。
うーん、だてに歳をとってきたので反省(笑)。