「松竹ヌーベルバーグ」の旗手として国内外で活躍した映画監督の吉田喜重（よしだ・よししげ）が8日午前8時33分、肺炎のため病院で死去。89歳。福井市出身。名前は「きじゅう」と読まれることが多い。
1955年、大学卒業とともに石堂淑朗と松竹大船撮影所に入社。木下惠介などの助監督を経て、1960年に「ろくでなし」で監督デビュー。
以後「秋津温泉」（1962）「嵐を呼ぶ十八人」（1963）などの作品を手がけ、大島渚や篠田正浩らとともに松竹ヌーヴェルヴァーグの旗手として活躍した。
1964年、俳優の岡田茉莉子と結婚。1966年に現代映画社を設立し「女のみづうみ」（1966）「情炎」（1967）「樹氷のよろめき」（1968）「エロス＋虐殺」「煉獄（れんごく）エロイカ」（1970）――など、意欲作を次々と発表。
絵画的な構図や観念的なせりふなどを用い、実験的手法を駆使して日本の近代史や人間の深層を描いた。
「戒厳令」（1973）以降映画製作から遠ざかり、テレビドキュメンタリーを手がけ、テレビ東京の美術番組「美の美」シリーズなどを制作した。
認知症老人の問題と家族を描いた「人間の約束」（1986）で映画に復帰。同作と1988年「嵐が丘」、2002年「鏡の女たち」と続けてカンヌ国際映画祭に出品された。
仏のオペラ・ド・リヨンの依頼で「蝶々夫人」を演出するなど、海外での活躍も目立った。
2020年には、ナチス・ドイツの副総統ルドルフ・ヘスの手記の形式の小説「贖罪（しょくざい）ナチス副総統ルドルフ・ヘスの戦争」を刊行。「映画に思い残すことはない」と語っていた。他の著書に「小津安二郎の反映画」など。
ご冥福をお祈りいたします。
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