フランス映画「エール!」(2014)を見る。フランスで驚異的なヒットを記録。奇跡の歌声と称賛された歌手ルアンヌ・エメラのスクリーンデビュー作でセザール賞、ルミエール賞の新人賞をW受賞。その他の映画賞も多数受賞するなど、フランスを笑顔と涙で包んだ感動作。
耳が聴こえないというのはこういうことかという体験を味わう静かな数分間は、感動で震え号泣ものだった。久しぶりに胸が詰まるシーンだった。
2022年のアカデミー賞作品賞など3部門を受賞した「CODA あいのうた」(2021)は、「エール!」のリメイク。オリジナルを先に見ておくのが正解かもしれない。
オリジナル版「エール!」はフランスの田舎の酪農場が舞台で「コーダ あいのうた」は監督・脚本のシアン・ヘダーが幼少期に馴染みがあったアメリカの港町グロスターが舞台で家業が漁業に変更されている。
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耳の聞こえない両親、弟を持つポーラは、酪農農家で唯一耳が聞こえる娘として、家族を助けながら学校生活を送っていた。そのポーラが歌と出会い、自らの人生と向き合っていく物語。
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田舎村で酪農を営むベリエ家。長女ポーラが生まれた時に母親ジジは、ポーラが耳が聞こえることが不安だった。聴覚障がい者のことを理解できないだろうと思ったからだ。そのため、娘を聾唖者と思って娘を育てた。
何事もオープンで笑いの絶えない家族はとても仲がいい。高校生の長女ポーラ(ルアンヌ・エメラ)以外の家族パパ・ロドルフ(フランソワ・ダミアン)、ママ・ジジ(カリン・ヴィアール)、そして弟・カンタンも耳が聴こえず、ポーラは学業の傍ら家族や業者との手話通訳を担っていた。
家族に関わる手話は一手にポーラが引き受けているため、市場でのチーズ販売や両親の性病の治療の通訳も彼女の役目で、肝心の学校では疲れ果てて眠ってしまうこともあった。
親友・マチルドが男性経験豊富なのに対し、ポーラは恋人が出来た経験が無いうえに初潮もまだ迎えていなかった。
それでもポーラはパリ出身のガブリエルに密かに想いを寄せていて、彼が選択授業でコーラスを選んだのを知り、マチルドと共に同じ授業を希望した。
しかし授業を担当する教師・トマソンは若い頃にプロのアーティストと仕事をした経験があり非常に指導が厳しく、授業参加者を歌のテストで決めた。
学校へ行くと電話がかかってきて、牛の飼育代の交渉をする。学校が終わると、両親が車でポーラを迎えにきた。彼らは耳が聞こえないので、にぎやかに音を出す。陽気な家族なのだ。
ある日学校で、コーラスクラスの入部試験があった。先生のトマソンは、かつてその世界で有名だった人らしく、学校でコーラスを教えることに不満を感じていた。トマソン先生が生徒を名指しして歌わせ「合格・不合格」とする中、指名されたポーラは「くだらない」と言う。すると、トマソン先生は「合格」と答えたのだった。
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聴覚障碍者のコミュニケーションの世界にどっぷりとはまってしまうほど素晴らしい俳優たちの演技に目を見張らされる。母親の娘への想い、父親の社会に対する反発の想い、娘の両親など家族への想いなどを見事に凝縮した作品だった。
歌などとんでもないと思っていた母親が、娘の歌のコンテスト舞台での歌う姿を見ての感動ぶりに涙するのだ。
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