「ゼロヴィル」(原題:Zeroville, 2019)を見る。ジェームズ・フランコが監督・主演の異色ドラマ。“映画自閉症”の青年の恋と人生を、様々な映画と現実を交錯させながら描く。映画の小ネタがこれでもかと出てくるのはいいとしても、焦点がボケてしまってわかりにくい。共演は「トランスフォーマー」シリーズのミーガン・フォックスとセス・ローゲン。
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1969年のロサンゼルス。ハリウッドにやって来たバイカー(ジェームズ・ブランコ)はスキンヘッドで、後頭部に「陽のあたる場所」のモンゴメリー・クリフトとエリザベス・テイラーの顔のタトゥーを彫った、強烈なビジュアル。
なんとか映画スタジオのセット係の仕事を得るが、映画への偏愛ゆえに厄介ばかりを起こしていた。
歴史的な有名監督とも仕事をしてきたベテラン編集者ドティから編集の才能を見出され、様々な映画の編集を任されるようになる。フイルムの編集、カットに没頭していくバイカー。妖艶な女優ソルダード(ミーガン・フォックス)の出演作を編集したことをきっかけに、2人は親しくなるが・・・。
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映画好きのジェームズ・フランコが映画の編集に取り憑かれていく話。映画のシーンの中に、全く別のワンカットが隠されて挿入されている場合もあるという。フイルムの編集・カットのシーンは見ごたえがある。
「陽のあたる場所」
過去の名作についても多く語られる。なかでも「陽のあたる場所」に強く影響を受けている。やがて現実世界にエリザベス・テイラーを思わせるファムファタール的なソルダードが登場したり、モンゴメリー・クリフトまで現れて、会話をする。
ソルダートの出演作の編集を進めるうちに「陽の当たる場所」や「裁かるるジャンヌ」の幻影が重なってくるドラッグ的な作品となっていく。
冒頭では「ある愛の詩」の撮影が行われていた。アリー・マッグローがいう有名なセリフのシーンだが「愛とは決して・・・」というと監督が「決して、でなく絶対に、だ」と何度も取り直すが、マッグローは「決して…」と繰り返す(ちなみに映画では「決して(後悔しないこと)」だった。
そのほか「サンセット大通り」「第三の男」や「荒野の決闘」「裁かるるジャンヌ」「捜索者」に始まって「ジョーズ」の構想を語るスピルバーグやアルトマンの「ロング・グッドバイ」などの話題が続く。
「荒野の決闘」
「サンセット大通り」
スコセッシ監督で観るべきは「タクシー・ドライバー」よりも「レイジング・ブル」だといった会話も。「地獄の黙示録」でマーロン・ブランドの後ろ姿で、少ない会話があったり、「イレイザーヘッド」のワンシーンが登場したりと賑やか。
女優ソルダードの10代の高校生くらいの娘が「カサブランカ」のラストについての感想が面白い。イングリッド・バーグマンは、最初からボガートとの別れはわかっていたので、ボガートがあえて夫のもとにとどまるべきだとは言わなくてもいいと・・・。
フランコが、家で強盗にはいられるが、その強盗が映画ファンで、映画の話題で盛り上がって、逃がしてやったり、その男が10年後、街中でまた覆面の強盗でフランコの前に現れるが、またまた映画の話になり、130ドルの手持ちしかないというと、30ドルだけもらうというと100ドル渡すといったユーモアもあるにはあるが…。
ジェームズ・フランコが「映画オタク」をあまりにも前面に出しているが、映画としては消化不良と言えるかもしれない。
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