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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「騙し絵の牙」(2021)を見る。苦境の出版業界は生き残れるか?

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騙し絵の牙」(2021)を見る。塩田武士原作。今年3月26日に劇場公開されたばかりの映画が、早くもNetflixで見られるのはうれしい。大泉洋を念頭に本が書かれたようで、主演の大泉洋の存在感が大きい。

老舗出版社内で、各雑誌の生き残りをかけて繰り広げられる仁義なき“騙し合い”エンターテインメントで逆転につぐ逆転の先の読めない展開が魅力。デジタル・ネット社会で紙中心の出版業界は生き残れるのか、スピーディな展開が面白い。

キャスト陣は佐藤浩市木村佳乃斎藤工リリー・フランキー、松岡茉優國村隼中村倫也小林聡美佐野史郎など演技派俳優が揃っている。

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ワインに目がない大御所作家の國村隼がなんとシャンソンを歌ったり、どこにでもいそうな普通の新人編集者役がハマる松岡茉優の自然体の表情がいい。 

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出版社や書店などの苦境が描かれるテーマも今日的。アマゾンでポチるだけで本が翌日届く便利なネット通販の便利なご時世。昔ながらの書店や、取次業者を通す書籍の流通システムにも一石を投じている。タイトルの「牙」の意味が最後にあっと言わせる。

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長い歴史をもつ出版社・薫風社の伊庭喜之助社長がある日突然急逝する。社内はその後継者争いに揺れ、次期社長と目されていた彼の息子・惟高(中村倫也)はアメリカに渡ることに。

彼が社長に就任するまでの中継ぎとして、営業畑出身の専務・東松(佐藤浩市)が社長に就任する。 強引に社内の改革を進める東松は、文芸誌「小説薫風」とカルチャー誌「トリニティ」の廃刊を画策していた。

「トリニティ」の編集長・速水(大泉洋)は雑誌を守るため、さまざまな奇策に撃って出るのだが・・・。

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大御所ミステリー作家の二階堂大作(國村隼)がふさふさ頭で登場したのは、従来のイメージとはやや異なるが、若手の編集者・高野(松岡茉優)と年代物のワインなどを飲むシーンがいい。大御所に、ズバズバと意見を言った事から、出版社の中で、左遷される高野だったが、逆に大作家に気に入られるのだ。

アマゾンなどの台頭で街の本屋は苦境に立たされ、高野の父の本屋も店じまいかと思われたが、高野が新しく出版した本の値段はなんと1冊あたり3万円以上。有名作家ブランドを生かした、新たな高級志向の商法は大盛況となるのだった。本屋の成城石井か?(笑)。

デジタル媒体のエンターテイメントの台頭で、現在出版業界は苦境に立たされているが「騙し絵の牙」は、そんな出版不況や紙の本と電子書籍のシェア争いがテーマとして語られている。 

映画「騙し絵の牙」はスピード感のある展開で、コンパクトにまとまったエンターテインメント作品となっている。

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原作者は「罪の声」の塩田武士で、元新聞記者の塩田は、グリコ・森永事件を題材にした「罪の声」で「このミステリーがすごい!」に選出された経歴を持つ。

「騙し絵の牙」の小説の製作は、大泉が雑誌「ダ・ヴィンチ」の表紙を飾る度に、おすすめの本を紹介する必要があったことが発端という。 大泉は何度も同誌の表紙を飾っていて、その撮影のたびに、おすすめの本を聞かれていた大泉洋は「映像化された際に自分が主演できるような小説はないか」と逆に編集者に質問していたというのだ。 

すると編集者が「大泉洋をイメージした小説を作ろう」と言い始め「騙し絵の牙」が書かれることになった。 そんな中、依頼されたのが塩田武士で、大泉を研究しあて書きしていて、人柄だけでなく語尾や話の間などもトレースされていて、映画にも反映されているという。