日比谷の秋の風物詩ともなりつつある「東京国際映画祭」(10月30日~11月8日)。そのうち屋外上映会が、今年も東京ミッドタウン日比谷・日比谷ステップ広場で開催されていた(屋外上映会は無料)。
7日(日)は、昼12:30から「アラン・ドロン生誕86年記念記念祭」が開催されるので、午前中は時間があり、日比谷ステップ広場で10:00〜11:15までドキュメンタリー映画「 The Taste of Nature 世界で一番おいしいチョコレートの作り方」を見た。安達建之氏に密着した長谷川友美監督のドキュメンタリー。
【こんな話】いったい、世界で一番美味しいチョコレートは、どうやって作られているのか?友人から偶然もらった一枚の「ビーン・トゥ・バー・チョコレート」が、ひとりの日本人の運命と世界を大きく変えた。
最高のカカオを探しに世界中を回り、自身の店をオープン。その後、たった2年でパリの「サロンドゥショコラ」をはじめとする、世界有数のチョコレート・アワードを次々と手にしていった。
さらなる高みを目指す彼が追い求めるのは、まだ誰も見た事の無いチョコレート。
しかし、それを探す南米アマゾンのジャングルの旅路には、想像を絶する出来事が次々と待ち受けていたのだった・・・。
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全く予備知識がなく、ケーキ作りの手ほどきのような映画かと思ったら全く違っていた。中目黒で人気のケーキ店を経営するオーナーが、ボリビアなどでチョコレートに適した豆を現地でパートナーとともに探しだすドキュメンタリーだった。
密林の中を、バイクで現地の人たちと移動したり、道なき道や険しい山道を歩いたり、想像を超えた困難の中で、カカオ探しを行っていた。
しかも、現地の人たちは、ノウハウもなく、資金もないことから、炎天下にむしろの上に放置しているといった有様だった。
おいしいチョコレートの原料にするには、あまりにも劣悪な環境で、”不良品”の山だった。
そんな中、様々な知識を駆使すれば、経済的にも潤うことになると説得するのだが、とにかくお金がない、経済難が大きいと、なかなかプロジェクトを理解してもらえない状況。
プロジェクトは成功するのか・・・?
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中目黒に本店を構える「green bean to bar CHOCOLATE」の安達建之氏が世界各地のカカオ農園からダイレクトで品質の優れたカカオ豆だけを厳選して仕入れ、綿密な手作業で作り上げる日本発のビーントゥバー・チョコレートメーカー。
カカオ豆からチョコレートを作る工程はショップ内のファクトリーにて、カカオ豆の鑑定と選別から始まり、焙煎、粉砕、グラインディング、コンチング、熟成、テンパリング、成型、そして和紙を使ったラッピングに至るまで、すべて手作業で行っている。
安達建之氏が世界を飛び回り、現地のカカオ農家の人たちを説得していくストーリーで、その過酷さには驚いた。また、ボリビアなのではコカインが合法化されていて、農家の人たちが口の中にコカインをほおばっていた。
カカオ農家の人たちの最大の関心事は生活基盤の安定。かなり厳しい生活を強いられている。手作りの簡素な掘っ立て小屋の住まいに子供6人と両親が暮らしているという家もあった。
そんな人たちに、利益が上がるカカオの扱い方などのイロハから教えていくというのは至難の業に思われる。言葉の壁もあり、英語も通じにくい。通訳ができるパートナーと現地の人達と、壮大なカカオ・プロジェクトを普及させる労力は半端ない。
世界で様々なチョコレートの最高賞を獲得している安達氏だが、一言ポロリとこぼす。
「チョコレート作りは”そんなに甘いものではない”」