「ボクらを作った映画たち」(原題:The Movies That Made Us, 2019)を見る(Netflixオリジナル)。広く好まれているあの映画、この映画の舞台裏に秘められた様々なエピソードを軽快なテンポで紹介するドキュメンタリー。
登場するのは「ゴーストバスターズ」の脚本を書いた俳優ダン・エイクロイドなどの俳優のほか、脚本家、制作者など。1話1作品で「ダーティ・ダンシング」「ゴーストバスターズ」「ダイ・ハード」「ホーム・アローン」の舞台裏が見られる。
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「ゴーストバスターズ」のタイトルで映画化を進めていたら、そのタイトルはすでに商標登録されていて、権利取得を進める一方で、映画は「ゴーストバスターズ」と「ゴーストブレイカーズ」の二つを差し替えて撮影するなど二段構えで進められたという(最終的に権利を得た)。
脈絡のない奇妙なシーンも多かったが、上映期限の厳守が絶対だったので、撮り直しもせず勧めたとか、図書館の図書カードが引きだしから吹き飛ぶシーンなどでは、引きだしの後ろから人がストローで空気を送っていたという昔からのアナログ志向も見られた。
撮影所初日の前日になっても行方がわからなかったというビル・マーレイだが当日には顔を見せるというハラハラもあった。巨大人形のマシュマロマンは、試行錯誤でできたキャラだったが観客にバカ受けだったようだ。
アメリカで映画が封切られると、13週連続1位という超特大ヒットとなった。
「ダイ・ハード」は、主人公が劇中、裸足で泣くシーンがあり、ブルース・ウィリス以外は嫌がって役を断ったという。大爆発や銃撃戦の迫力で究極のアクション映画として、ブルース・ウィリスは一躍有名になった。個人的には1980年代で最高のアクション映画ではないかと思っている。
世界一ツイてない男
ブルース・ウィリスの登場シーンでは、観客からは爆笑が起こった。これまでのヒーロー像と違って、いかにも弱弱しそうな人物だったからだ。
「ダーティ・ダンシング」は、エレノア・バーグスタインの脚本が出来上がっていたたが、1986年当時は「トップガン」「クロコダイル・ダンディー」などの賛成映画が主流。
脚本をハリウッドのスタジオ(映画会社)に持ち込んでも「No thank you(いらない)」と断られた。断った会社はパラマウント、20世紀フォックス、ユニバーサル、ワーナー・ブラザースといった大手で「女々しい」「中絶が絡むダンス映画」として見向きもされなかった。
マイナー(当時)な映画会社も、ニュー・ライン・シネマ、オリオンといった会社も「乙女の映画」として恐れられ断られたり、独立系のMIRAMAXなどにもすべて断られ、すべてを回ったが、実に42回も断られたという(OMG!)。
そんな中、大手映画会社に断られた脚本がゴミの山のように持ち込まれていた会社があった。ビデオ配給会社の「ベストロンビデオ」だ。
怪奇映画などB級作品を作っていたが、ベストロンの幹部の一人の目に留まったのが「ダーティ・ダンシング」だった。その人物が注目したのは舞台となっているのが、ニューヨークの北部のキャッツキルだということだった。若き日の思い出の地だったらしい。
経験の浅い人間ばかりが集まりリスクはあったし、主役に白羽の矢が立ったパトリック・スウェイジも「ストリッパ―映画」に思えて当初は乗り気ではなかったという。
しかも、相手役の清楚なジェニファー・グレイは、過去にスウェイジと共演歴があり、関係は最悪で犬猿の仲だったというのだ。「スウェイジ意外にしてほしい」というジェニファーの希望はかなえられなかったが、関係者の一押しがあり実現、スウェイジがダンス経験があり、未経験のジェニファーに教えるなどして、乗り切ったのだった。
映画としては450万ドルという超低予算だったが、映画は大ヒットした。
映画の制作秘話などに関心のあるすべての映画ファンにとっては、結構面白い作品だ。