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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「ティングラー/背すじに潜む恐怖」(原題:The Tingler、1959)を見る。

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ティングラー/背すじに潜む恐怖」(原題:The Tingler、1959)を見る(Netflix)。1950年代のモノクロ映画は見ごたえがある(一部カラー=パートカラー)。恐怖映画として、よくできていている。元祖絶叫映画といわれているらしい。

耳慣れない言葉「ティングラー」は、恐怖や寒気で背筋がゾクゾクする(英語でティングル)から来ている言葉。主人公の医者の仮説によると、人間の脊椎には生まれつき小さな微生物が寄生していて、それをティングラーと呼んでいる。サソリのような虫・ティングラーは宿主の恐怖心が強くなればなるほど肥大化し、最悪脊椎を破壊して死に至らしめるという。

ティングラーの弱点は人間の悲鳴。大声で叫べば小さくなって元のサイズに戻るという。最悪の事態を避けるには、周りの目を気にせず思い切り叫んで恐怖心を解放すること。劇場だったら「みんなで叫べば怖くない」かも知れない。

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ある日、電気椅子で処刑された連続殺人犯の遺体を検視したウォーレン・チャベル博士(ヴィンセント・プライス)は、死刑囚の義理の兄で無声映画を上映する映画館主オリィ・ヒギンズ(フィリップ・クーリッジ)と親しくなり、彼の妻である聾唖者女性マーサ(ジュディス・イヴリン)と知り合う。

彼女は情緒不安定なうえに極度の潔癖症で、なおかつ切り傷から流れる血を見ただけで気を失うほど怖がりだった。

そんなマーサがある晩、夢とも現実ともつかぬ怪奇現象(実は夫が仕組んでいた!)に襲われ、恐怖のあまり死んでしまう。もちろん、聾唖者なので悲鳴をあげることなど出来ない。肥大化したティングラーが彼女の脊椎を粉々にしたのだ。

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ヒギンズに頼まれて遺体を解剖したチャベル博士は、ついに本物のティングラーを採取することに成功する。

ところが、このまるで大型サイズのロブスターのような生物は人間を襲う習性があり、博士がふと目を離したすきに映画館の暗闇へ紛れ込んでパニックを巻き起こすのだった。

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映画の冒頭で、監督であるウィリアム・キャッスルが登場し、観客に向かって話しかける。まるで昔のヒッチコック劇場で、ヒッチが解説するスタイルに似ている。

「皆さんはこの作品で、映画史上初の体験をします。皆さんのなかには特別敏感な人がいて、もずもずを感じるかもしれません。もずもずしたら、叫びましょう。声のかぎりに叫びましょう。隣の人も叫びますから」というのだ。

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「ティングラー」は、架空の虫が登場するSF恐怖映画ともいえるが、バスタブから手が出てきたリするのはアンリ=ジョルジュ・クルゾー監督の「悪魔のような女」のようでもあり、女性が恐怖におののくシーンは、この映画のあとに製作されたヒッチコックの「」や「サイコ」に通じるものがある。

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Tシャツのデザインイメージもヒッチに似ている。

モノクロ映画ながら、一部で「」色が使われて、インパクトがある。薬物を飲んで、悪夢を見るマーサの演技が圧巻。劇場内に「アレ」が逃げ込んでからのサスペンス。そして、ついには映写技師に近づいていくシーンなども見どころ。結局、世紀の発見につながる生物の存在は、世間に知れると大混乱を巻き起こすことから、闇の中へ…。

タイトルも知らなかった映画だが、埋もれた絶叫映画として面白かった。