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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「めし」(1951)を見る。”成瀬監督に進路を取れ!”③ 原節子、上原謙主演。

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めし」(1951)を見る。成瀬己喜男監督、原節子上原謙主演

林芙美子の急死により絶筆となった原作が、成瀬巳喜男監督の元で書き上げられ、映画化。飯をよそうだけの当時の女性のあり方を批判しながらも、家庭やそこに生きる人間のぬくもりを優しく炙り出している。

平凡な毎日の連続に、結婚当初の希望や輝きを失いつつあると感じている専業主婦の元へ、夫の姪が転がり込んでくる事で、除々に主婦の中に何かが蓄積され自分の幸福とは、女の幸福とは何かをもう一度考え直すといったストーリー。

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大恋愛の末に結ばれた岡本初之輔(上原)、三千代(原節子)の大阪在住の夫婦は結婚から5年。世間からは美男美女の幸福な家庭と見られているが、些細なことで衝突が続くようになっている。台所と茶の間を行き来し、夫の飯を装うだけの毎日。三千代は、見え透いたくだらない人生に絶望していた。

夫・初之輔は、妻の顔を見たかと思えば飯を催促する。ユリと名付けた白猫を可愛がることだけが、三千代の気休めだ。

そんな中、初之輔の姪である20歳の里子(島崎雪子)が東京から大阪へやってきた。縁談が気に入らず、家を出てきたのだと言う。三千代は親切に迎えるものの、食費がかさむのが気がかりでならない。

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里子の来訪を受け、大阪観光を提案する初之輔。だが乗り気ではない三千代は、当日になって家に残ると言い出す。初之輔と里子は、二人でバスツアーに参加することになった。年頃の里子の押しの強さに、初之輔はずっとたじたじだ。食事時、里子は結婚の必要性について質問するが、初之輔は曖昧な返事ばかりし、時に愚痴をこぼす。

家計をやりくりし家事に追われるだけの日々に疑問を持ち、不満をつのらせていた三千代は楽しそうな初之輔と里子の姿にも苛立ちを覚える。

三千代は里子に帰京を促し、里子を送る名目で東京の実家に里帰りし、久々にのんびりとした時間を過ごす。数日の間、三千代は手紙も出さずにいたが、あるとき、思っていることを手紙にしたがポストには投函しなかった。

そんな中、東京での職探しをいとこに頼み自立を考えるが、そんな時に初之輔が東京に出張する用事があるとかで、三千代のもとに夫が訪ねてきた。

明日で出張先の仕事が終わるため、一緒に大阪へ帰ろうと投げかける初之輔。さらに、今より高い給与のところへ転職することも、三千代に相談する。会話をしているうちに、思わず「腹へったな」と呟き、初之輔が慌てて謝ると、ふたりは笑い合う。

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夫の初之輔が一緒に大阪に帰ろうというので、電車で帰ることにした。電車のとなりの座席では、疲れて寝ている夫に、「手紙を書いたけど出さなかった。いま、窓から手紙を捨てた。なんて書いたと思う」と三千代がいうが、初之輔は寝ていて聞いていない様子。

手紙の文面が、ナレーションで語られる。三千代は、幸福について思いを巡らせながら、再び日常へと戻ってゆく。

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三千代は結婚してちょうど五年。毎日、掃除、洗濯、食事の用意をするという日常で、夫はといえば、新聞を読み、当たり前のように食事を待つだけ。これではまるで自分は、女中と同じと悶々とした日々を送る。

数日の間、実家に帰って留守にした原因が、夫に対する不満の蓄積であることを少しは夫が理解したのか、これまでのように「腹が減った。飯は?」と言いかけたところで、「あ、しまった。これからは言わないことにする」と反省していたようだ。

三千代は、そんな夫だが、自分が夫のそばにいることが自分に取ってささやかな幸せなのかもしれないと思い、家に帰ることにしたのだった。

まあ、妻の立場からしたら「自分は家政婦(のミタ)か?」というのは、理解できる。

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三千代は、夫への不満を紛らわすためか、ユリという白猫を飼っているが、夫が酔っぱらって帰ってきて、倒れて寝ていると、ユリが近づいてきて、「だらしのない奴だな」といって眺めているようだった(笑)。

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主な出演者:

■岡本三千代(原節子

東京から大阪へ夫婦で移り住み三年目、結婚生活は五年目を迎え、退屈な日常に嫌気が差している。夫の姪を居候として抱えることで、日頃の不満が表面化してゆく。夫を置いて東京の実家に戻り、気ままな生活に浸る。

■岡本初之輔(上原謙

三千代の夫。優しいゆえ頼りがいがなく、だらしない一面も見られる。姪の里子に限って甘やかすばかりに、妻は飯を作る女中の気分だと怒り、実家に逃げてしまう。彼女を追って、つかの間の一人暮らしののちに上京する。

■岡本里子(島崎雪子

縁談に反抗するために家出し、東京から岡本家に避難してくる。当世風で何かと軽やかな性格から、所帯染みた三千代と対立し始める。初之輔に姪として以上の好意を抱く。

■竹中一夫(二本柳寛)

三千代のいとこ。東京の銀行に勤める。三千代に淡い恋心を向けるが、その態度は紳士らしいものだ。

■村田信三(小林桂樹

三千代の妹の夫。はっきりとした性格で、里子のわがままな態度にも物申す。

■谷口芳太郎(大泉滉

岡本家の近隣に住む。里子に一目惚れし、彼女が大阪にいる間、何かと親切に世話を焼くが、相手にされない。