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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「赤い殺意」(1964)を見る。今村昌平監督の傑作。

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赤い殺意」(1964)を見る。今村昌平監督が自身の最高傑作と生前語っていた作品。この映画の成功の後、今村プロダクションを設立。知られざる名作といわれ、これまでに4回、ドラマ化されている。

主演の春川ますみといえば「赤い殺意」での独特の存在感が有名。ふっくらした体形で、スタイルがいいわけではないが、イタリア映画のシルバーナ・マンガーノ(「にがい米」)のような、太ももをあらわにするシーンもあり、ドキリとさせる。

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雪の東北(宮城県仙台市界隈)が舞台で、方言が聞きとりにくく字幕が必要なほど。路面電車蒸気機関車、裸電球、画面が楕円形のテレビなど当時の時代風景を映し出している。

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夫・高橋吏一(西村晃)も息子・勝(まさる)も不在の夜、押し入った強盗に暴行された貞子(春川ますみ)。汽車に飛び込んで死のうと思うも死にきれず。数日後、再びやってきた強盗の平岡(露口茂)から、自分はもうすぐ死ぬが好きだと告白され、再びなし崩し的に関係を持ってしまう。

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再度、自殺を試みるがやはり未遂に終わり、デパートで平岡につきまとわれているところを、吏一の浮気相手・増田義子(楠侑子)に目撃されてしまう。

3か月後、妊娠が発覚した貞子に、平岡は自分の子ではないかと迫り、一緒に東京に逃げようと誘う。2人は汽車の中で激しくもみ合い、決着をつけるはずの旅館で結局体の関係を持ってしまう。

舅・清三(加藤嘉)が亡くなり、葬儀の場で妊娠が家族の知るところに。そして貞子は、自分が今も未入籍であること、勝だけが姑の息子として籍に入っていることを知ってしまう。

貞子は、へそくりを手切れ金として渡すことで、平岡と別れようとするが、後ろ髪を引かれるように再び舞い戻ってしまう。

平岡を殺すしかないと覚悟した貞子は、農薬入りの水筒を手に、一緒に上野行きの汽車に乗りこむ。ところが、大雪で汽車が不通になり、仕方なく雪山を2人で歩くことになる。

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貞子は、自分の手で平岡を殺すことができず、平岡自身が心臓発作を起こして息絶える。

一人仙台駅に戻った貞子が、腹痛を起こし病院に運ばれる一方、二人を終始尾行していた義子が、撮影に夢中になり交通事故死してしまう。

義子が遺した写真から、吏一は貞子を問い詰めるが、自分ではないと言い張り、勝を連れて家を出るという。そればかりか、勝の戸籍問題で姑・忠江(赤木蘭子)を訴え、裁判に出ることも厭わない女になっていた。

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主人公の貞子は、不運な女で、レイプされた強盗の男に付きまとわれ、夫や姑からはお手伝いさん扱いされる始末。いわれるままにハイハイと従ってきた貞子だが「もしよろめいたるどうする」とそれとなく口走ったことで、夫は後日それを思いだして問い質すが、貞子はしらをきるほどにたくましくなっていた。

貞子のいらいらした様子をカメラが真上の天井からぐるぐる回るように映し出したり、アイロンの底に鏡のように貞子が映るシーンなど、工夫があって面白い。

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裸電球ソケットについているコンセントに掃除機のコードをつないだり、”昭和”のにおいがぷんぷん。吏一(西村晃)が使っていた小物製品で、ミストが噴射する電気式の口臭スプレイのようなものも登場していた。

電車の最後部での、貞子と平岡との格闘シーンは、緊迫したシーンだった。ぽっちゃり体形の貞子は、劇中、「こんなグラマーないい女になるんだったら、(若い時に)声をかけておけばよかった」といった中年オヤジもいた。

図書館の司書で吏一の愛人・義子(楠侑子)は、ド近眼メガネをしているが、粘着タイプで、気弱な吏一に迫って、自宅まで押しかけるところが凄い(=怖い)。

貞子に冷たく当たる姑は、自身の苦労を重ねてか貞子に「女なんて、割に合わないもんよ。子供を生んで育てても、大人になれば、好き勝手なことをするんだから」とイヤミめいたことを言っている。

この作品は、あまり見られる機会がなかったようで、ネットフリックスの配信で見ることができた。