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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「さようなら、コダクローム」(原題:Kodachrome、2017、劇場未公開)を見る。

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さようなら、コダクローム」(原題:Kodachrome、2017、劇場未公開、Netflix)を見る。マーク・ラソ監督によるロードムービー。確執があった父と息子の和解がテーマ。いかにもありそうな映画なので、単調と思う人もいるかもしれないが、面白かった。エド・ハリスのとんでもないクズぶりが見どころ(笑)。

出演は、オスカーに4度ノミネートされたエド・ハリスのほか、ジェイソン・サダイキスエリザベス・オルセンなど。タイトル(原題)は「コダック」社の写真フイルムのブランドの一つ。

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クビになりかけている中年音楽プロデューサーのマット(ジェイソン・サダイキス)のもとに、ある日、見知らぬ女性が訪れる。彼女ゾーイ(エリザベス・オルセン)が言うにはマットの父であるベン(エド・ハリスは余命わずかで、自身の持っている古い写真フィルムを現像できる唯一の場所まで一緒に行ってほしいというのが最後の願いだという。

しかし、マットは悲しむどころか「奴(父親)とは10年も話をしていない」「あいつは母を残して消えた」と怒りの声をあげるのだった。 レコード会社に勤める音楽プロデューサーのマットは、自分が支えてきたミュージシャンに「あんたはトロい」と厳しい言葉を吐き捨てられ、上司からは「音楽はもはや売り物じゃない」と時代遅れの考え方を指摘され、仕事は窮地に陥る。

結婚もしておらず、仕事一筋のマットにとって、「仕事が認められない=人生が認められない」も同じ。クビにするまでの猶予として2週間やるから成果を出せと言われ、岐路に立たされる。

自分のクビをつなげる可能性のある才能ある「バンド」というグループに道中で出会えると聞いたことで、完全に仕事のためにその父親の願いを嫌々ながら聞き入れることにした。 こうしてマットとベンという険悪な親子、そして看護師のゾーイとともに旅が始まるのだった。

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目的地はカンザスシティパーソンズというところにある「ドゥウィンズ・フォト(Dwayne's Photo)」。「ドゥウィンズ・フォト」はコダクロームのフィルムを唯一現像できる現像所だった。

ベンが店に到着し、受付の女性に「ドゥウィンズさんに、フイルムの現像をお願いしたい」というと、「現像は昨日で終了した」という。「現像のために3,000キロの距離を車で移動してきた」と話してるとドゥウィンズが現われる。

ベンとは旧知の中で、受付女性に「お前はクビだ」といい渡すが「私の娘だがね」と冗談ぽく笑う。

コダクローム・フィルムの現像が終了するということで全国から写真家が多数集まっていた。ベンを見つけると何人もの写真家が、声をかけてくるほど、ベンは過去に置いて有名な写真家だったことがわかる。マットは改めて、ベンの隠れた一面を知ることになり誇らしくさえ思うのだ。

ベンは、病院でマットに、父親としては失格だったが、マットのことは常に考えていたといい、父と息子は和解する。そして、父親は、まもなく息を引き取る。

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ニューヨークに戻ったベンが撮りだめして来たフイルム数本がラストでスライド方式でスクリーンに映し出されるシーンは、”ニューシネマ・パラダイス”的な感動がある。映像を見ているところに、ゾーイが現われ「一緒に見てもいいか」というので「もちろんだ」と肩を寄せ合って、ベンが遺した写真を見るのだった。マットはゾーイに好意を寄せていたので、ハッピーエンドを予感させた。

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映画は35ミリ・コダックフイルムで撮影されたという文字が最後に現われる。

映画の中で「最近はデジタルで多くの写真を撮るが現像はしない。データは電子のチリだ。後世の人が探しても写真は出てこない」「写真は時間を止めて、永遠を生む」などというセリフがある。ベンの写真のおかげ(写真誌「ナショナル・ジオグラフィー」などを見て)で写真家になったという人物も登場していたが、ラストでは、ベンが写真展覧会をするところで終わる。

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たかがフイルムの現像のためといってしまえばそれまでだが、ベンが3,000キロの遠距離であっても、どうしても現像して、それを息子に見せたかったというのががよくわかる。

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蛇足だが、1970年代後半、出張先(ドイツ)で、日本から持っていったフイルムを使い果たし、現地でフイルムを購入。写真を撮って、日本で現像しようとしたら、日本には現像するところがないことがわかった。有名なフイルムメーカーだった「アグファ」(アグファ・ゲバルト社)フィルムだった。ドイツまでフイルムを送って現像したか、次の出張者に託して現像したか、よく覚えていない。富士フィルムにしておけばよかった(笑)。

 「さようなら、コダクローム」は2017年のトロント国際映画祭で初披露され、その後Netflixが推定400万ドルで獲得したという報道がある。 ・・・

■「コダック」社:1881年創業の老舗。世界最大の写真関連製品のコダックイーストマン・コダック社)は、2012年に倒産(連邦倒産法第11章=通称”チャプター・イレブン”)。その後小規模で上場、再生スタート。アカデミー賞受賞式の会場は「コダック・シアター」の名前だったが、命名権の継続を中止し名前は外されて、現在は「ドルビー・シアター」。